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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/07/10(木)   CATEGORY: 雨の日のうた
雨の日のうた(1)
 梅雨。じめじめ。ムシムシ。イコール最悪の季節。
 目が覚めると同時に襲ってくる蒸し暑さ。ベタベタとまとわりつく湿度。最悪。俺は目が覚めてさっそく学校へ行く気力がなくなった。それは俺のせいじゃない。すべては梅雨という季節のせいだ。
 俺のとなりで寝ている女が視界に入った。そして女の乳房も。別に大きくも小さくもない。真理子はそんな乳房の持ち主。俺は真理子を起こす。「おい、朝だぞ」。むにゃむにゃと返事する真理子。それを揺さぶる俺。やっと目を開ける真理子。
「おはよう」
 その朝の挨拶を返さずに俺はベッドを脱け出した。それから学校の制服を探して着た。昨日も着ていたワイシャツはくしゃくしゃ。しわだらけ。
「もう行くの?」
「高校生の朝は早いんだよ」
 俺は真理子の部屋を出た。そしてアパートの前に停めてあるCB400Fourにまたがった。これは去年の夏に哲郎さんがタダでくれた自慢のヨンフォア。俺は赤いバイクにエンジンをかけて、ふかした。今日もこいつは絶好調らしい。
 真理子のアパートからバイクで20分。俺の家よりはるかに近いから便利。俺は学校の駐輪場にヨンフォアを停めた。実をいうと俺はこの学校でバイク通学が許可されているのかどうか知らない。でもそれは大したことじゃないと思う。だから気にしないでおく。俺は学校の玄関を通り自分のクラスがある教室へと入った。ここもじめじめ。そしてベタベタ。

+++

 健吾が言った。
「お前だったら相当稼げるぞ」
 こいつは高校生でありながら年上の女と夜を過ごして金をもらうという秘密のアルバイトをしている。そして最近の俺は女の家を渡り歩いてる生活。きっと俺も健吾と同じ商売をしたら大した大金持ちになれるだろう。高校生のわりにはね。一応言っておくが、俺は女に溺れているわけじゃない。中学のときならともかく、今は女を抱くのに飽きているくらい。でも暇なんだよな。だから俺は女を抱く。単なる暇つぶし。
 なんで今俺はこんなにも暇なのか。答えは簡単。去年まで組んでいたバンドが解散したから。それが理由。なんで解散したかって? 人にはそれぞれの事情ってものがあるだろう。つまりそういうことだ。バンドっていうのはえらく面倒だ。バンドの目的は簡単に言ってしまえばライヴだ。ライヴこそがバンドの意義ってもんだ。そしてライヴをするには練習だ。練習練習練習。練習量は多ければ多いほどいい。まあ、それだけでもないんだけど。それでだな、メンバーが集まって練習するにも場所がいる。スタジオを借りてそこでメンバーが集まって練習するわけだ。でもスタジオ借りるのもタダじゃない。だからバンドマンはバイトをする。稼いで稼いで稼ぎまくる。つまりバイトと練習とライヴ。バンドを組むとそういうのに費やされる時間が出来る。しかしそれがなくなってしまったわけだよ。そういうわけで結果として生まれたのは、ありあまるほどの時間だってことだ。アーユーアンダスタン?

+++

 校内に響き渡るチャイムが放課後を告げる。俺は駐輪場に停めておいたヨンフォアに乗って駅前の楽器屋に寄った。昔からある小さな楽器屋。せまい店内に並ぶギターやベース。にこにことした店員がこちらを見た。
「何をお探しですか?」
 シンが近づいてきて言った。シンは去年まで俺が組んでたバンドのギタリストだった。俺の2コ上でバンド内のリーダーだった。いつも笑顔を絶やさないリーダー。でも今はいつも笑顔を絶やさないバイト先が楽器屋のフリーター。
「ギターの弦が切れちゃってさ」
「お客さん、ギターなんて弾くんですか?」
「馬鹿にするなよ」
 去年まで組んでたバンドで俺はベーシストだった。だからってベースしか弾けないわけじゃない。もちろんギターだって弾けるし、たまに弾いたりもする。でも技術的にはシンには劣るとも及ばない。
 俺はギターの弦を買って店を出た。シンは笑顔で俺を見送った。家に帰ってからギターの弦を張り替えようとしたが、面倒になってあとにすることにした。俺はベッドに横になって寝た。そして実は久しぶりに家のベッドで就寝したのだった。


<作者のことば>
「雨の日のうた」連載開始です。
色々手直しもしたいところだけど、面倒なのでそのまま載せることにします。

未熟なところも俺なんだから! という言い訳。

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