FC2ブログ
みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/01/25(月)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐3 (地震)
 ベッドの揺れを感じて、檜山 詩帆は目を覚ました。
「なっ なに?」
 地震だろうか? 眠っているときは確かに揺れを感じたのだが、目を覚ました今は何も感じない。それともあれは夢だったのか。詩帆は何とも言えぬもやもやとした感情に体を包まれ、どうにもすっきりしなかった。
 次の瞬間。
 ゴゴゴゴ…、と大きな音とともに激しい揺れが起こった。まるで大巨人に揺さぶられるように部屋が揺れ、次々と物が倒れた。あまりの恐怖に詩帆は布団に潜った。
 地震は長く続いた。しかしそのうち激しかったのは最初の1分足らずで、その後小さな揺れが十数分続いた。ニュース番組を観ようとTVを点けたのだが、そのには何も映し出されず、ただただ砂嵐は吹き荒れるばかりだった。ザザ、ザザ、ザザ――
 誰かに状況を聞こうと思い、携帯電話を開いたが、結局誰にかけても繋がらなかった。一体何がどうなっているというのか。
 不意に、外で物凄い音が聞こえたので窓を覗いた。すると詩帆の住んでいるアパートが浮いていた。――何が起きているのか!?
 巨人。詩帆のその瞳に映ったのは、巨人。巨人がアパートを持ち上げている。ふと、修学旅行で行った奈良の大仏を連想したが、別段似ているわけでもなかった。しかし、全く似ていないわけでもない。そして何となくアラスカの神のようなものも連想した。
 巨人がアパートの中を順序に覗いているのを見て、詩帆はカーテンを閉めて布団に包まった。もし見つかってしまったそのときは――どうなってしまうのだろう?
「ああ、どうしよう? どうしたらいいの?」
 今まで感じたことのないほど大きな恐怖。理解を超えた存在に、現状に、恐怖で泣き叫ぶなど少しもふさわしくなかった。あまりに常軌を逸していて、むしろ恐怖による混乱と現実味のない冷静さが同居していた。「死にたくない」。詩帆は そう呟いた。
「シニタクナイ――シニタクナイ?」
 言葉が反復した。しかし詩帆の声ではない。
「えっ?」
 身近で聞こえた声に、詩帆は布団から頭を出して部屋を見た。
 そこには、黒い羽をした、オウムのような鳥が佇んでいた。大きな嘴(くちばし)。生気のない眼。「シニタクナイ?」
 悲鳴を上げるところだった。しかしそれをあと一歩のところで呑み込んで、眼前のオウムをよく見た。――いつの間にここに?
「シニタクナイ――ッテナンダ?」
 首を傾げるオウムの姿は、本当に言葉の意味を考えているように見えた。実際はどうなのだろう? そう考えているうちに震動とともにドンという音が耳に響いた。
「もしかして!!」
 詩帆はカーテンの隙間から外の様子を窺った。地上だ。どうやら巨人から解放されたらしい。詩帆は急いで着替えて外に出た。
「モシカシテ!!――ッテナンダ?」
 黒いオウムがあとをついてきていた。特に害はないので追い払うような真似はしなかったが、一般的なそれより倍は大きいので目立つのが気になった。どこに行ってしまったのか、巨人の姿は見当たらない。
 街は荒れ果てていた。アスファルトが割れ、断層のようになっている箇所もあった。
 あの揺れは巨人のものかと思っていたが、実際に地震は起きていたようである。
「ああああああああああああ!!!!」
 男の叫び声が響いた。
 駅の構内からだった。悲鳴は反響して、詩帆の耳に否応なく忍び込む。
 ――怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
 一体、そこでは何が起きているのか。
 確かめたいが、それを上回る恐れ。恐怖心。
「す、少しだけ覗いて、無理なら逃げよう…」
 意を決して、詩帆は駅の構内へ静かに忍び入った。



<作者のことば>
次々と現れる魑魅魍魎怪異の類い。
この作品には、何かわけのわからないやつがいっぱい出てきます。

気付けば頭の中に変な生き物がいる今日この頃。


←応援してくれる人はclick!!
[ TB*0 | CO*4 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する

浅葱 | URL | 2010/01/26(火) 09:37 [EDIT]
いつも携帯から楽しく読ませてもらってます!
ただ感想を言葉にまとめるのが苦手で(笑

地獄篇、面白いです!異変の表現がそれぞれで
その中でも浮遊魚がすきだなぁ
まぁ実際にこんな場面に遭遇したらどの異変もかなり恐いですがww


匡介 | URL | 2010/01/26(火) 11:02 [EDIT]
>浅葱さん
おお、コメントを頂けるとは! 今日は槍が降るな!(笑)
携帯から見て頂けていたとは知らなかったです。嬉しや嬉しや~!

浮遊魚が好みでしたか!
どうも浮遊魚は反響が大きいなぁ。これは参考になります!

○○が好き!ってだけでもいいのでコメント頂けると参考になります(そして嬉しい♪)。
今後も一言でいいからコメントもらえたらな~、すごく嬉しいんだけどな~。←あ、独り言ですので(笑)

活字が苦手な浅葱さんにも楽しんで頂けるように頑張りたいと思います!
なので今後もよろしくお願いしますね♪

ライム | URL | 2010/01/26(火) 15:44 [EDIT]
ゴヤの巨人(本当はゴヤじゃないらしい)みたいな奴で、眼がひたいに一つ目なビジュアルが思い浮かびました。
巨人がアパートを持ち上げてたから地震の被害がなかったのか、いやむしろ巨人が歩いたから地震が起きたのか、とか、つい論理的に(そうか?)考えてしまいました。

匡介 | URL | 2010/01/26(火) 16:32 [EDIT]
>ライムさん
自分の中では一つ目ではないんですが、あえてヴィジュアルについて細かく書かなかったので、そこは自由にイメージしちゃってください!(笑)
ただガリバー的なのではないです! そんなリアル巨人(つまり人をただ巨大にしただけ)ではないつもりです!…ってそれは何となくわかるか(笑)

巨人が歩いても周囲は揺れたでしょうが(笑)、実際に地震は起きている設定です。
あー、でも持ち上げている間のことまでは考えてなかった! そういう見方も出来るんですね、なるほど。もしかしたらあるいは巨人のおかげで、アパートの被害は最小だったのかもしれません! さすがライムさん!

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © みやび萬紅堂。. all rights reserved. ページの先頭へ