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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
~クリスマスプレゼント~
 ちらほらと雪が降り注ぐ。冷たい風を避けるように店内に入った。
 空いている席に腰を掛けて、絵美はメニューに目を通した。向かえに座る佳恵はすでに頼むものは決まっているらしい。慣れているせいかメニューを手に取ることもしなかった。
「ここの彼、ほんっとカッコイイんだから!」
 この店には佳恵のイチオシだという男の子がいるらしい。本当に熱を上げているようで、ここ最近は通い詰めていると絵美は聞いていた。おかげで今日はいつも行く馴染みの店ではなく、佳恵たっての要望で、今日はこの「F’sカフェ」でのカフェタイムになった。
「お決まりでしょうか?」
 スッと現れたのは、端正な顔立ちの男だった。その艶やかな黒髪が、何とも言えない色気を醸し出している。胸元には「黒戸」とあった。絵美は何も言われずとも、彼が佳恵の意中の人だと理解出来た。
「わたしはオリジナルブレンドを」
まだ決めていなかったので、絵美は佳恵と同じものにした。「じゃあ、同じものを」
「かしこまりました」モノクロームの制服がシャープな印象で、とても似合っていた。でもきっとこの子は何を着ても似合うだろうと絵美は思った。「いつもありがとうございます」
「聞いた? いつもありがとうだって~!」黒戸が下がると佳恵があからさまに喜んだ口調で言った。「わたしのこと覚えてくれてたのよ!」
 そりゃ連日通い詰めていたら誰だって覚えるだろう。そう思うと絵美は笑ってしまった。
「あー、わたしにとっては最高のクリスマスプレゼントだわー」
「あら、じゃあわたしからは何もいらないかしら?」
「貰える物があるなら是非とも頂くわよ?」
 しばらくして、絵美たちのもとにコーヒーが運ばれてきた。
 それと一緒に、ショートケーキが2つテーブルに置かれる。「え?」
「ケーキは頼んでませんよ?」
「いえ、これはサービスです。いつもお越し頂いているので、当店からのクリスマスプレゼントですよ」
 黒戸が微笑んだ。それを見て、これはモテるな、と絵美は確信した。佳恵の気持ちがわからないでもない。
「他のお客様には内緒ですよ」
 ああ、佳恵のハートが射抜かれたな。絵美は小さく笑った。


 ***


 時計に目をやると時刻は23時を回っていた。絵美は小さくあくびをする。
 せっかくのクリスマスなので、気合いを入れてちょっと豪華な料理を準備して旦那の帰りを待っていた絵美だったのだが、少し遅くなるとのメールを最後に連絡はない。「あー、もうクリスマスなっちゃうよ」
 仕事熱心なのもいいが、たまには早く帰ってきて欲しいと思う。そのおかげで、今の暮らしが成り立っていることはわかっているけど、今日くらい早く切り上げても何も問題はないのではないだろうか。
「せっかく頑張って作ったのに…」
 少しだけウトウトしてきた。絵美はもう一度時計を見て、小さく溜め息を吐いた。


 コーヒーの香りが漂ってきて目が覚めた。いつの間にかに寝てしまっていたらしい。瞼をこすって目を開けると目の前には包装されたプレゼントが置いてあった。
「メリークリスマス」
 隣を見ると旦那がコーヒーを飲みながら微笑んでいた。「ただいま」
「遅くなってごめん。急な仕事が入っちゃってさ、なかなか上がれなかったんだ。クリスマスの日に部下を残して家でゆっくりってのも出来ないだろう?」
 絵美は目の前に置いてあったプレゼントを手に取った。「これ、開けてみていい?」
「もちろん」
 包装を外すとその下からは本のようなものが現れた。どうやら画集のようだ。
「これ…」思わぬプレゼントに絵美は驚きを隠せなかった。「わたしが欲しかったやつ。――知ってたの?」
「キミのことなら何でも知ってるよ」
 そんなにも自分はわかりやすいだろうか。自分でも憶えていない些細な一言をちゃんと憶えていてくれた? いつかも似たようなことがあった気がする。
「ありがとう」
 本当に敵わないな、と思う。佳恵には悪いけれど、自分にとってこの人以上に素敵な人はいない。
「じゃあ、食べようか」
 外では雪が降りしきる。絵美は何より幸せをプレゼントされたような気がしていた。そして自然と笑みがこぼれている自分に気が付いた。



<作者のことば>
来年はクリスマス企画はやりません!!

今のうちに宣言しておきます(笑)

今年のうちに全て出し尽くしてやるぜ!!
ちなみに昨日は「R&B Chiristmas」ってオムニバスアルバムを聴きまくってました。

クリスマスの音楽って結構好きです。良い曲多いよね。


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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2009/12/25(金) 16:16 [EDIT]
こないだコメントした、「クリスマスのない世界でいかにしてクリスマスをやるか」ということを懸命に考えてクリスマスストーリーをUPしました。お暇でしたら読みに来てください。

http://crfragment.blog81.fc2.com/blog-entry-326.html

しかし、現代の日常生活のひとコマを切り取ることについては、わたしは遠く匡介さんに及びませんです。だからアクセス数においても……うああああ。

匡介 | URL | 2009/12/25(金) 18:50 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
それはわざわざどうも。
しかしいつの間に「クリスマスのない世界でいかにしてクリスマスをやるか」というテーマになっていたのですか!? そういう話でしたっけ??(笑)

あとでじっくり読ませて頂こうと思います。

>現代のひとコマを切り取ることについては~

おお、ひそかにそういう評価を頂いていたとは!! ありがとうございます。
でも、自分もまだまだ未熟です。納得のいくものはなかなか書けないので。…というか、裏を返せばそれ以外はまだまだとの評価ですか?(叫)

、、精進します(笑)

アクセス数=作品の面白さではないので、気にする必要ないと思いますよ?
自分はほとんどチェックしてませんし、たまに見て、1人でもいてくれたら嬉しいなって思ってます。たとえば毎日5人いたら、5人は通ってくれているのかな、とか。
それくらいの目安がいいと思いますよ。

ライム | URL | 2009/12/25(金) 20:34 [EDIT]
何の宣言ですか(笑)

分かりました
では明日からは「お正月企画」を一週間
そのあとは「バレンタイン企画」を1ヵ月連続
続いて「春の別れと出会い」シリーズを2ヵ月半ですね!
とっても楽しみです

この物語は、また違う1面を見せていただいたようで、ほのぼのしました
……いや、だから
流血と腐乱と変態がメインじゃないってことは
よ~~く! 分かりました

蛇足ですが、この話の1人の名前が、私の本名と似ていて一瞬ギクッとしました(笑)

ポール・ブリッツ | URL | 2009/12/25(金) 22:35 [EDIT]
ほかのことについてはわたしだってけっこうやるものなんだぞ、って意味です。自分についてそのくらいの自負がないと小説なんて書いてられません(^^)

こないだのコメントでわたしのこだわりを見せたところですから、そこをどう処理するかについても作品のかたちで見せないといけないかな~って思ったんですが、うむむ(^^)

まあ毎年クリスマスストーリーは作っているので、今年もその延長ですけど。

匡介 | URL | 2009/12/25(金) 23:22 [EDIT]
>ライムさん
それだと季節モノしか書けなくなるじゃないですか(笑)
しかし流血と腐乱はともかく……変態!? 変態ですと!? そんな作品いつ書きましたか!?(笑)
流血や腐乱は今年から特にその色を濃くしてきたようなもので、こういう雰囲気のものも書けるんですからね! もう!←(笑)

え? 本名ってライムじゃないんですか? 僕はてっきりライムって名前の方かと(笑)
さて、誰が似ていたんでしょうねえ? 気になります!!

匡介 | URL | 2009/12/28(月) 11:15 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
いやいや、そもそも俺はポール・ブリッツさんのことを凄いと思っているので!
ちなみに作品にはもう目を通したんですけど、時間がなくてサッと見ただけでコメントも残していなく、もう少々お待ちください(汗)

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