~近付く聖夜~
青々とした晴天。暖かそうな風景とは裏腹に、空気は冷たく皮膚を刺す。
後方から響くエンジン音が鼓膜に届き、高谷京介はふと振り返った。彼の隣に白いバイクが停車した。
「おう」
フルフェイスのヘルメットを脱ぐと、そこには馴染みの顔が見えた。同じ高校の塚田智明だった。
京介は挨拶を返した。
「さみィな」
「そうですね」
「これからどっか行くのか?」
「帰るところですよ」
「じゃあ送って行こうか? ほら、乗れよ」
やや強引に、智明は京介をバイクに乗せた。智明の後ろで、京介は渡されたハーフヘルメットをかぶった。
凄まじい音で、エンジンが吼えた。2人を乗せたバイクが走り出す。加速とともに冷たい空気が当たってくる。2人は風を切りながら進んだ。
智明が濡れた部分をタオルで拭いた。
同様に京介もタオルで水滴を拭う。
「災難でしたね」
突然の雨で濡れてしまった2人を見ながら、マスターは言った。
「予報では、今日は降らないとのことでしたが、どうも今日の天気は気まぐれのようだ」
マスターが微笑む。
そこにオットリーノが、温かいコーヒーが注がれたカップ2つ運んできた。
「どうぞ」
渡されたコーヒーを京介が受け取った。「グラーツィエ」
智明もカップを手に取り、ゆっくりと口元に運んだ。
「熱ッ」
予想外の熱さに、思わず智明が叫んだ。
「そりゃ淹れたてですから」
マスターが笑った。
「そういえば、もうすぐクリスマスですね。マスターは、クリスマスはどうしているんですか?」
「わたしはいつもと同じですよ」
「オットーは?」
「ナターレは地元に帰ります」
「イタリアに?」
「ええ。ナターレは家族と過ごす日ですから」
智明はふぅふぅとコーヒーを冷ましながら、ゆっくりゆっくりと喉に通した。「へえ~、わざわざ家族と過ごすために帰るのか」
「そうですよ。向こうでは家族一緒でナターレを過ごすのは普通なんです」
「俺だったらそこまでして帰らないけどな」
「家族は大切にしなきゃダメですよ」
オットリーノがパンのようなものを2人に差し出した。
「パネットーネです」オットリーノ説明に、マスターが付け加えた。「クリスマスの時期に食べる、イタリアでは伝統的な菓子パンらしいですよ」
智明がパネットーネを頬張った。レーズン、プラム、オレンジピールなどが入っていて、独特の甘さがあった。「これ、うまいな!」
「grazie di cuore(どうもありがとう)」
オットリーノは満足そうに微笑んだ。
「おや」
京介が窓を通して外を見た。小さくて白いものがふわふわと舞い降りてきている。雨が、雪に変わったようだ。
京介に続いて、マスターも外の様子に気付いた。「雪ですか」
「もう冬なんですね」
「また一年が終わりますね」
カフェ・MATATABIの外を、雪がゆっくりと降り注いだ。
コーヒーの香りを愉しみながら、京介はゆっくりとカップに口をつけた。
後方から響くエンジン音が鼓膜に届き、高谷京介はふと振り返った。彼の隣に白いバイクが停車した。
「おう」
フルフェイスのヘルメットを脱ぐと、そこには馴染みの顔が見えた。同じ高校の塚田智明だった。
京介は挨拶を返した。
「さみィな」
「そうですね」
「これからどっか行くのか?」
「帰るところですよ」
「じゃあ送って行こうか? ほら、乗れよ」
やや強引に、智明は京介をバイクに乗せた。智明の後ろで、京介は渡されたハーフヘルメットをかぶった。
凄まじい音で、エンジンが吼えた。2人を乗せたバイクが走り出す。加速とともに冷たい空気が当たってくる。2人は風を切りながら進んだ。
智明が濡れた部分をタオルで拭いた。
同様に京介もタオルで水滴を拭う。
「災難でしたね」
突然の雨で濡れてしまった2人を見ながら、マスターは言った。
「予報では、今日は降らないとのことでしたが、どうも今日の天気は気まぐれのようだ」
マスターが微笑む。
そこにオットリーノが、温かいコーヒーが注がれたカップ2つ運んできた。
「どうぞ」
渡されたコーヒーを京介が受け取った。「グラーツィエ」
智明もカップを手に取り、ゆっくりと口元に運んだ。
「熱ッ」
予想外の熱さに、思わず智明が叫んだ。
「そりゃ淹れたてですから」
マスターが笑った。
「そういえば、もうすぐクリスマスですね。マスターは、クリスマスはどうしているんですか?」
「わたしはいつもと同じですよ」
「オットーは?」
「ナターレは地元に帰ります」
「イタリアに?」
「ええ。ナターレは家族と過ごす日ですから」
智明はふぅふぅとコーヒーを冷ましながら、ゆっくりゆっくりと喉に通した。「へえ~、わざわざ家族と過ごすために帰るのか」
「そうですよ。向こうでは家族一緒でナターレを過ごすのは普通なんです」
「俺だったらそこまでして帰らないけどな」
「家族は大切にしなきゃダメですよ」
オットリーノがパンのようなものを2人に差し出した。
「パネットーネです」オットリーノ説明に、マスターが付け加えた。「クリスマスの時期に食べる、イタリアでは伝統的な菓子パンらしいですよ」
智明がパネットーネを頬張った。レーズン、プラム、オレンジピールなどが入っていて、独特の甘さがあった。「これ、うまいな!」
「grazie di cuore(どうもありがとう)」
オットリーノは満足そうに微笑んだ。
「おや」
京介が窓を通して外を見た。小さくて白いものがふわふわと舞い降りてきている。雨が、雪に変わったようだ。
京介に続いて、マスターも外の様子に気付いた。「雪ですか」
「もう冬なんですね」
「また一年が終わりますね」
カフェ・MATATABIの外を、雪がゆっくりと降り注いだ。
コーヒーの香りを愉しみながら、京介はゆっくりとカップに口をつけた。
COMMENT
ん~
このハッピー&ファミリー感がクリスマスですね~~^^
どーも私の方はハッピー&ファミリーと真逆のものができてしまったので
いかんな~
とは思うばかり
どうぞ素敵なクリスマスをお過ごしください♪
このハッピー&ファミリー感がクリスマスですね~~^^
どーも私の方はハッピー&ファミリーと真逆のものができてしまったので
いかんな~
とは思うばかり
どうぞ素敵なクリスマスをお過ごしください♪
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