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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/12/06(日)   CATEGORY: 短篇小説
迷い娘と放蕩息子(その5/「さよなら」と「またね」)
 智樹は自分のことを話し始めた。
「実は俺、高校卒業してないんだ。3年の中頃に辞めた。さっきは友達が出来たっていったけど、周りと上手くやれなくて、それに何がしたいかわかんなくて、辞めた。周りは大学目指して勉強に励んでる中で、俺は卒業後何をしたいのかわかんなかった。とりあえず大学? それもいいかなって思ったけど、じゃあ大学で何を学びたいかって言ったらやっぱわかんねえし、そこまで大学行きたいわけじゃなかったから、勉強も力入らなくて、周りとの温度差が嫌になっちゃったんだよね。それは俺が自分の将来に対して何のヴィジョンも持ってなかったってことで、それに俺自身がすごく弱かったってことなんだけど」
「……それで?」
「んー、学校を辞めてからは好きに過ごしてた。特に何をするでもなく、好きなときに起きて、好きなことやって、好きなときに寝て。ほとんどニートかな。少しして小遣い稼ぎにバイト始めたら、そこで彼女が出来た。それからは彼女と遊ぶのがメインだったかな? だけど、そんな生活を続けてるうちに何をするにも飽きちゃって、何にもすることなくなったから旅に出た。気が向いたときに好きなとこに出掛けるようになって、日帰りのときもあったし、何日も帰らないときもあった。そうやっていろんなとこに行って、いろんなもの見てるうちに知らないことを知るって面白いなーって思うようになってさ、大学ってとこも楽しそうだなって思ったんだよね。高校辞めた次の年には彼女も大学に行ってさ、俺も大学行くために勉強し始めたんだよ。それで高認ってやつ受けて大学受験の資格取ってさ、大学受験もパスしてどうにか大学に入ることは出来たんだよね」
「彼女いたんだ」
「え? ああ、まあ」
「意外」
「俺はその意味がわからない」
「続きは?」
「マイペースなやつだな。――で、まぁ俺は大学に入ったんだけど、結局上手くはいかなかった。協調性がないから友達もそんな出来なかったし、イメージしてた感じと違っちゃってたんだよなぁ。テキトーに大学選んだのが悪かったんだろうけど。それでまたまた俺は大学に行かなくなり、特に何をするでもなく、好きなことして毎日過ごしてさ、その頃はひとり暮らしを始めてたから誰も何も言わなかったし。でも、そのうち俺は何してるんだろうって思うようになって、何がしたいのか問うようになってさ。大学も全然行ってなかったから留年確定って感じだったし、また1年からやり直すのも面倒だなって思って大学辞めることに――」
「また?」
「まあ」
「ダメ男」
「否定も反論も出来ない」
「それで?」
「………」
「続きないの?」
「さっきまで泣いてたお前はどこに行ったんだよ」
「知らない」
 智樹は思わず溜め息を吐いた。
「えっと、それで、今度は彼女も我慢出来なくなったみたいで、何がしたいのかわからない俺とはもう一緒にいれないって言われた。俺は何にも言えなくて、素直に別れた。もしかしたら別れたくないって言って欲しかったのかなって今は思うけど。別れたいからああ言ったんじゃなく、俺に頑張って欲しいからあんなこと言ったのかもって思うよ」
「未練あるんだ?」
「否定も反論もしない」
「マジでダメ男」
「好きに言ってくれ」
「それからどうしたの?」
「俺は家事が結構好きで、料理するのも好きだったから、いろいろ考えて、調理師専門学校に通うことにした。今は比較的真面目にやってるよ」
「楽しい?」
「んー、それなりに楽しいと思って通ってる。少なくともやりがいはあるかな? 将来どうなるかは未だにわかんないけど」
「そうなんだ」
「それでさ、俺が何を言いたいかっていうと、こんな俺でも、そりゃ途中いろいろあったけど、今はそれなりにやってるってこと。人生どうなるかなんてわかんないもんだよ。だからさ、とりあえず学校には行ってみたら? 高校で出来たって友達とは今でも仲良くやってるし、どこで一生の付き合いになる友達が出来るかなんてわかんないもんだぜ?」
「……まあ」
「頑張れ、なんて簡単には言えないけど、だけど頑張って欲しいとは思う。小夏は自分がしっかりしなきゃって自覚してるんだから、きっと頑張れると思うよ」
「うん」
「明日、俺と一緒に帰ろう。親にちゃんと話してみろよ。きっとわかってくれると思う。小夏はわかって欲しいんだろ? 自分のこと。だったら話さなきゃ。お前ひとりじゃ心細いなら俺も一緒に話してやるよ」
「……ありがと」
「とにかく、今日は疲れたろ? もう寝た方がいい」
 小夏は智樹に体を寄せて、小さく「おやすみ」と呟いた。
 それを聞いた智樹は小夏の言葉を繰り返すように「おやすみ」と返した。


 ***


 カーテンの隙間から朝日が忍び込み、小夏は目を覚ました。
 隣を見ると智樹の姿がない。そう思ったとき朝食を手に持った智樹が部屋に入ってきた。
「お、起きたか? おはよう。朝食うよな?」
「うん」
「じゃあ簡単なものだけど、これ」
 テーブルに並んだのはスクランブルエッグとソーセージ。それとパンだった。
「本当に簡単なんだね」
「悪かったな。朝は弱いんだよ」
「ん、でも美味しそう」
 小夏がパンを手に取り、それにかぶりついた。
 それを見て智樹は、何だか微笑ましい気持ちになる。――少しは楽になっただろうか。
「コーヒー飲む?」
「……カフェオレなら」
「オーケー」
 コーヒーの香りが部屋に拡がる。
 智樹は冷蔵庫のドアを開けて牛乳を取り出した。


 駅のホーム。まもなく新幹線が来る。
 智樹はふいに小夏の手を握った。それに驚いた小夏だが、手の中にある感触に気付いた。小さな紙――それはメモだった。
「好きなときにメールでも電話でもしていいからな」
 小夏は涙ぐみそうになって、しかしそれを堪えた。ここで泣いてなんかやらない――智樹に泣かされるなんて、なんとなく悔しかったからだ。
「……ありがと」
「これからも苦しいこと、つらいこと、たくさんあるかもしれないけど。お前はひとりじゃないんだからな」
「うん」
 ホームに新幹線が停まった。
 智樹たちはそれに乗り込む。隣り合った席に座った。
 すぐに新幹線は走り出す。加速度的に。何もかもを置いていくかのように潔い速さだな、と智樹は思った。どうせなら小夏の涙もここへ置いていけばいい。
「頑張れよ」
 ふと呟いた言葉は小夏には届いていない。
 もう数時間で小夏は家に帰れるだろう。長いようで、短い時間だったと智樹は思った。あと数時間。ここで小夏と何を話せるだろう? どのくらい話せるだろう?
「あのさ――」
 出来る限り、話そうと思った。内容は何でもいい。とにかく、何か話そうと思った。
 明日からはまた小夏は頑張らなきゃいけないけれど、今くらいは楽しい話をしよう。それがそのうち――いつもになればいい。
「なに?」
 小夏が智樹に問い返す。
 ふたりを乗せた新幹線は、速度を上げながら前へ前へと進んで行くのだった。



<作者のことば>
どうにか終えることが出来た。あー、しんどかった。
やはり、あまりに軽い気持ちで始めてしまうとあとがキツイ。正直かなり省いてしまった(早く終えたくて!)。

今週の仮面ライダーWが面白くなければ、今日終わることも出来なかったなぁ。
今朝は録画したWを何度か観て、あまりに面白かったので何故か気に入ったシーンの台詞の完コピを始めてしまった。

最初の歌のシーンが個人的にツボだったので、あそこだけ振り付け込みで練習。←観ていないと伝わらない。

そんなわけでちょっとテンションが上がったので、その勢いでこれを終わらせました。
あのテンションがなければ今日は書く気にもならなかったかもしれない!!

あー、Wが面白くて小説書きたいくらいだ!!
でも二次創作というやつは、まだ手をつけていない個人的タブーだ(別に禁じてはいないけど、気持ち的に)。

ちなみにサブタイトルは何となくイメージで。
もしかしたら小夏を送り届けたときにそんな会話が行われるかもしれないなぁ、とか思いつつ。


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| | 2009/12/06(日) 12:45 [EDIT]
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匡介 | URL | 2009/12/06(日) 17:35 [EDIT]
>シークレットさん
お付き合いどうもありがとうございました!!
「前へ」…そうですね、前進しようとする力っていうのが、今回には限らず自分の作品に多く出ていると思います。それが如実に出たパターンかもしれません。

智樹と小夏は自分の一部であって、分身です。
もちろんフィクションも多く存在しますが、実際の自分と重なる部分も多いです。
たとえば高校1年のときにずっと友達が出来なかったのは事実だし、後半になって友達が出来たのも事実です。その友達とは1年のときしかクラスは一緒じゃなかったけれど、今でも仲良くさせてもらってます。そして理由は違いますが、高校を辞めもしました。
小夏のように中学に入って周りに馴染めないということもありました(そして今はそれが悪化中(苦笑))。

そういう意味では、毎回自分を励ますために「前進」するような話を書いています。
だから俺も頑張ろう!!といつも思うんです。このタイミングで、この作品を思いついたのは、そういう理由もあってなのかな? 自分に気合を入れようと思って(笑)

そろそろ前へ進むときだろう?って。

それだけではディープな重い感じの話になってしまうので、今回はあえてライトテイストにしてみました(笑)
てか、本当はもう少し力を入れてもよかったのだけれど(笑)

ちなみに!!
夜の会話(カミングアウト?)シーンはガッツリ凝縮(短縮?)させてもらいました!!
そして翌日の、小夏が帰る日の新幹線に乗る前までのエピソードも省かせて頂きました!! 実は家を出て直で新幹線ってわけではなかったのです!!←え? 気になる? 存分に気になればいい!!(笑)


では、お言葉に甘えて……「変身」!!(笑)

ライム | URL | 2009/12/06(日) 17:40 [EDIT]
完成お疲れさまでございましたm(__)m
匡介さんの流血系じゃない小説は、(すみません)初めて拝読しました
最後の2話は「そうきたか!」と意外感がありました
何だかこう、しみじみした感じになると思わなかったので……
こういうのもいいですね^^
がんばれ小夏ちゃん

あ、そうそう
ジョーカーの件ですが
ジョニー・デップでしたら、ほとんど何の役柄でもオールマイティな感じがします
まさにハリウッドの松山ケンイチ

逆か

匡介 | URL | 2009/12/06(日) 18:10 [EDIT]
>ライムさん
ありがとうございます!!
おかげさまで完結することが出来ました。…長さの割に何度挫折しそうになったか(笑)

おお、初めてでしたか!
でも、……でしょうね!! だってライムさんの中では匡介=流血という図式が半ば出来ていましたもんね!!(笑)
しかし意外にもいくつかこのような作品はあるのですよ! 実は最初に書いたやつは青春系なので、ある種の原点でもあります。案外、引き出し多いんです(笑)

小夏も頑張らなきゃいけませんが、智樹はもっと頑張らなきゃいけません!!
だってこれからは小夏に頑張っている自分を見せて、引っ張っていかないと!!

これは二人の「再生」の物語なので、二人には頑張って欲しいものです。


…あ、ジョーカーですか?←最初、何のことかと思った(笑)
ジョニー・デップならハマり役になれると思うんです。ジョーカーみたいな変人奇人こそ、ジョニー・デップが活きると思うんです!(笑)
個人的にはパイレーツ・オブ・カリビアンの続編はいいから(これ以上は期待出来そうにないので)、次期バットマンでジョーカーやって欲しいですねぇ。

でも、あのあと軽く調べてみたら、候補に上がっているのは全然違う人みたいです(誰だったっけ?)。

ちなみに松ケンはダークなキャラが似合ってる気がしてなりません。
少~~しだけしか観ていないのですが、ドラマ「銭ゲバ」は結構ハマり役っぽく観えました。ドラマはそんな観ないんだけど、いずれ借りて観てみたいな~と思ってます。

『ハリウッドの松山ケンイチ』

『日本のジョニー・デップ』

どちらにせよ、松ケンが大層な役者だと思ってしまうのはなぜでしょう?(笑)

ポール・ブリッツ | URL | 2009/12/06(日) 20:45 [EDIT]
完結おめでとうございます。

なるほど、小夏ちゃん素直な娘でよかったですね。居直られたりしたらどうするのかと思いました(^^)

今後を思わせる終わり方もよかったです。


「W」だったらまだいいですが、二次創作を書くときは題材を選びましょう。超マイナージャンルでウケの悪いスタイルで小説を書くと、アクセス数の伸びの悪さが、えらいことに……(^^;)
サーチエンジンに登録していてもとほほほ、であります(^^;)

匡介 | URL | 2009/12/06(日) 21:13 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
ありがとうございます!
もし小夏が居直るような性格なら家出せずに済んだかもしれません(笑) そのくらいタフなら心配いらないんですけどね~。

アクセス数、そこまで気にしていないんですよ(笑)
始めた頃は気にもしていたかもしれませんが、今ではあくまで目安としてたまにチェックするくらいです。一応、誰か来てくれている人がいるってわかるだけで満足ですね。確かに、より多くの人に読んでもらえるならそれはもちろん嬉しいことですが♪

いくつか二次創作してみたいものがあるんですが、今のところその勇気がありません(笑)
やはり好きなものなだけに、抵抗がありますね~。
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| | 2009/12/07(月) 00:46 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

匡介 | URL | 2009/12/07(月) 03:50 [EDIT]
>シークレットさん
何の問題もないですよ。
お気遣いありがとうございます。

でも大丈夫なので!

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