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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/12/05(土)   CATEGORY: 短篇小説
迷い娘と放蕩息子(その4/泣き娘と抱き男)
 シャワーを浴びた智樹が湯気を従えてソファに腰を下ろした。
 ベッドで寝ている小夏の反応はない。本当に眠っているのか、それともわざと何の反応も示さないのか。
 智樹はクローゼットから毛布を引っ張り出した。それを持って、ソファに横になる。いつも寝ているベッドが小夏に占拠されているので、今夜はソファで眠るつもりだった。
「おやすみ」
 特に返事を期待したわけではない。ただ、何となく呟いただけだった。
「おやすみ」――その言葉を口にしたのはいつ振りだろうか。ひどく久し振りな気もするが、思い返してみるとそこまで昔のことではないと気付いた。
(自分は忘れたがっているのだろうか――)
 過ちというのは生きていれば誰にでもあるものだが、後悔はいつもあとにくる。だからこそ後悔なのだが、どうしていつもあとになってからそう思うのだろうか。
 智樹はふと今までの自分を思い返していた。走馬灯のように過ぎる、記憶。俺は何をやっているんだろうか。今の自分は何をしたいのだろうか。答えはわかっているようで、自信がない。いつだって自分がしていることが最善だとは思えなかった。何が正しいのか、そもそも答えなどあるのか。俺は―――
「ねえ」
 ふいに小夏が、智樹に声をかけた。
「寝てなかったのか」
「うん」
「どうかしたか?」
「そこで寝るの?」
「まあ。他に寝るとこないし」
「こっちにくれば?」
「……いや、遠慮しとく」
「どうして?」
「俺も一応男だし、ひとつのベッドを共有するのはどうかな、と」
「いかがわしいことをする気なの?」
「そうじゃないけど」
「じゃあ、いいじゃん」
 智樹は沈黙した。
「やっぱ自信がないんだ。あたしを襲わないっていう」
「……何なんだよ、一体」
「小心者」小夏は智樹に背を向けたまま言った。「……ひとりじゃ寒い」
 やれやれ――智樹は仕方なくソファから立ち上がった。
(別に、何かするわけじゃないしな――)
 そっとベッドに入り込む。何かをするつもりではないと思いつつも、つい意識してしまい、小夏とは微妙に距離を空けた。そして互いに背を向けた。
「どうして、家出なんかしたんだ?」
 今度は智樹が小夏に問いかけた。
 ずっと気になっていた疑問。そして、それを聞いてやることが自分の役目だと思っていた。何もせず、ただ家まで送り届けるだけでは、結局何も変わらない。もしかすると小夏の家出が繰り返されるだけかもしれない。
 何か力になれるとも思っていなかったが、それでも何もしないよりはいいだろうと智樹は小夏に問いかけた。
「……あそこにあたしの居場所はないから」
「なんだそれ」
「あたしのこと、わかってくれる人がいないような場所は、あたしの居場所じゃない」
「お前の母さん、お前のこと心配してたぞ」
「心配なんて、誰だって出来るよ。それに今さら心配なんて…」
「反抗期かよ」
「うるさい」
 数度目の沈黙。
「あたし、学校に友達いないんだ」
「ひとりも?」
「うん」
「でも中学だろ? 小学校のときの友達だっているだろ?」
「引っ越したの。小学校の卒業と同時に」
「そっか」
「あたし、小学校では結構友達多かったんだ。でも、改めて一から友達を作らなきゃいけないと思ったら、なんか友達の作り方わかんなくなっちゃった。それまであたしって友達ってどうやって作ってたんだろう?って」
「そうだなぁ。意外と、難しいよな。俺も友達はあんまいないし、気持ちはわかるよ」
「友達がいないって、結構つらいんだよね。そんなに勉強とか嫌いじゃないんだけど、なんにも面白くないの。だからって今さら友達作りにくいしさ。友達出来ないまま1年以上が経っちゃって、今さら何をすればいいかなんて全然わかんなくて、それで学校つまんなくなって、というか居づらくなって、そのうち行かなくなって、でも親はそんなこと理解してくれないし、ただ学校に行けって言うだけ。何もわかってない。別にあたしが悪いってことくらいわかってるけど、だからどうしてくれってわけでもないけど、なんとなくあたしのこと無関心な親との壁を感じた。結局、あたしがしっかりしなきゃダメなことはわかってるけど、どうすればいいんだろ? よくわかんないよ」
 小夏が泣いているのを、智樹は気付いていた。
 それまで背を向けていた智樹が振り返り、小夏のことを抱きしめた。それに小夏は驚いたが、すぐに涙がさらに溢れ、嗚咽がとまらない。
「苦しかったよな」智樹の腕に力が籠もる。「案外さ、そういう簡単なことが難しかったりするよな。やっぱ友達いないってつまんないし、それをわかって欲しいって気持ちもわかる。俺もさ、高校に入ったとき同じようなこと思ったことあるよ。それまで仲良かったやつがひとりもいない学校で、知らないやつばっかでさ、なんか急に人見知りになっちゃったんだよね。まあ、それまでもそうだったんだけど。でも、1年の終わりあたりになってやっと友達が出来た。もう諦めちゃってたんだけどさ、それでも俺に声かけてくれたやつがいたんだよね。友達なんて、いつ何をきっかけに出来るかわかんないもんだよな。ある意味、運? だから小夏も諦めるのはまだ早いんじゃないか? …なんて無責任か。んー、どうしたらいいんだろうなぁ」
 小夏の涙が、智樹の肌に触れた。
 それ自体は冷たかったが、そこに込められた思いはなんて熱いのだろう。似たような経験がある智樹だからこそ、それを窺い知ることが出来た。小夏のつらさを理解してやることが出来たのだった。




<作者のことば>
『ザ・ベストテン 山口百恵』というDVDのCMを観て、物ッッ凄く欲しくなってしまった。
あー、百恵ちゃん。やっぱいいよなー、と思いつつ、サンタさんがプレゼントしてくれることを待ちたい。

ちなみに先日のFNS歌謡祭。相変わらず豪華なコラボが凄かった。

けどヘキサゴンの方々は本当に必要だったのか疑問。
あのときだけ番組が変わったかのような違和を感じてしまった。周りが本格派なだけに浮いてたよね。


そんなわけでこの「迷い娘~」次回でラストになるか…?


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