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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/11/30(月)   CATEGORY: 短篇小説
迷い娘と放蕩息子(その2/思春期娘と料理好き男)
 違和感。本来はこの部屋に、いるはずのない、少女。
 それが今どうしたことか自分の目の前に存在しているという、違和。それを智樹は感じていた。
「名前は?」
 智樹は自分の部屋に連れ込んだ、もとい一時保護した少女に今さらながら名前を訊ねた。
「小夏。岩井 小夏」
「コナツ? それ、どういう字?」
「小さい夏って書いて小夏」
「ア・リトル・サマー?」
「ア・リトル・サマー」
 なぜかとても本格的な発音で、「ア・リトル・サマー」を言い合う2人。第三者から見れば、おかしなことこのうえない。
「んー、で、ア・リトル・サマーはどこに住んでんの?」
「あたしの名前はア・リトル・サマーじゃなく小夏です。ア・リトル・サマーと書いて小夏だけど、ア・リトル・サマーではないです」
「わかった次から気をつけよう。ところで住所は?」
「そんなことよりお腹が空きました」
「急に図々しくなったな」智樹の家に着くまでに2人の中はだいぶ縮まったようだ。「仕方ない。とりあえずメシだな」
 智樹は立ち上がり、キッチンへと向かった。
 それに小夏がぴょこりとついていく。
「作るの?」
「うん。作るの」
「作れるの?」
「まあ、作れるよ」
「本当に?」
「本当に」
「おいしい?」
「それなりに」智樹は買ってきた豚肉ともやしを取り出した。「…たぶん」
「なに作るの?」
「もやし炒め。正確にはもやしと豚肉炒め」
「ふーん」
「とりあえず邪魔だからあっち行け。テレビでも観てなさい」
 小夏がリビングへと向かっていくのを見届けると、智樹は料理を始めた。

「ジャジャーン」
 智樹自慢のもやし炒めが大きな皿に載って小夏の前に現れた。
「ジャジャーン、て…」
「なんだよ、最近の10代はドライだなぁ。つーか中学生で合ってる?」
「うん。中二」
「中二かー。つーことは、えっと、12歳?」
「全然違う。先週で14歳」
「そうか、14歳か」
「計算できないの?」
「いや、ケアレスミスってやつ?」
「ありえない…」
「そう言うなよ、少女」
「早く食べないと冷めちゃいますよ?」
「ああ、そうだな。うん、食べようか」
 もやし炒めと白いご飯を前に、2人は一緒に「いただきまーす」と手を合わせた。

 満腹になった2人は同時にごろんと寝転がった。
 まるで長年一緒に暮らしてきた兄と妹のような光景だ。
「どうだった?」
……おいしかったです
「なに? もっと大きな声で言えよ」
「おいしかったです」それを認めたくない様子の小夏。「意外にも」
「少しだけ余計だ」
「だって、まさかおいしいなんて誰が思うんですか?」
「段々と憎たらしいやつになってきたな」
「それこそ余計なお世話です」
「俺のお世話になっておいて何を言う」
「………」
「なあ、お前の家、どこなんだ?」
「秘密です」
「秘密ってなんだよ」
「レディーにはつきものなんです」
「レディーって歳かよ」
「それ失礼ですよ。乙女の心が傷付きました」
「乙女は許そう」
「それはどうもありがとうございます」
「では、あなたの住所はどこかな?」
「しつこいと女の子に嫌われますよ」
「でも家はあるみたいだな。『ない』から『秘密』になったんだから」
「これは尋問ですか?」
「答えないと拷問に変わるぞ?」
「……ヘンタイ」
「今変なことを想像したお前が変態だ」
「それがわかるのもヘンタイですね」
「そうかもな」
「ところで名前、なんていうんですか?」
「あれ? 教えてなかったか? 俺の名前は新藤 智明。新藤のシンは新しいで、ドウは工藤や伊藤と一緒。智明は『知る』に『日』って書いて智に明るいで明」
「ところで、智明さんは彼女いるんですか?」
「…唐突だな。どうして今日知り合った少女にそんなことを教えなきゃならないんだ」
「彼女がいるなら安心だけど、彼女いない歴イコール人生のような日々悶々ムラムラしている男だったらあたしの身が心配だから、です」
「思春期め。そうとう最初と印象が違うぞ」
「第一印象なんてほとんどの場合、役になんて立たないものですよ」
「13歳が言うねぇ」
「14歳です」
「そうだった」
「でも彼女いるかと思った」
「どうして?」
「キッチンにお酢があったから」
「それまた古風な理由だな」
「歳を召しているので、合わせてあげたんです」
「それは光栄ですな。俺は料理が趣味なんだよ」
「あら、女々しいんですね」
「それは褒め言葉じゃないぞ」
「あら、ごめんなさい」
「その言い方は勘にさわる。やめなさい」
「はーい。保護者ぶっちゃって
「おい、聞こえてるぞ。――今は臨時の保護者みたいなもんだ。お前が家の住所を教えてくれるなら別だが」
「お風呂入りたいです」
「……は?」
「お風呂に入りたいです」
「あー、帰って入ったら?」
「今からじゃ帰れません」
「家どこだよ」
「岩手」
「………は!?」
「これでお風呂入っていいですか?」
「つーか岩手? 岩手なの? 東北の? マジで言ってる?」
「マジです。大マジです」
「…マジかよ。あー、わかった。えっと、じゃあ、家の電話番号教え――」
「お風呂は?」
「OK。そんなに強情張るならとりあえず風呂場に行って来い。ただしシャワーだけでいいよな?」
「仕方ないですね」
「ご理解いただけてよかったです」智樹は起き上がった。「着替え、いるよな? 大きいと思うけど、俺のTシャツとジャージ貸してやるよ」
「うん」
「男物でいいならパンツもあるけどな」
「ヘンタイ」
「冗談だって」
「でも、それでいいです」
「――え?」
「パンツも貸してください」
「え、いや、俺は全然構わないんだけど、本当にそれでいいのか?」
「いいから貸してください」
「わかった。お前、変なやつだな」
「智樹さんには負けると思いますよ」
「はいはい」
 智樹はバスタオルと着替え一式を小夏に渡して、彼女を風呂場まで案内した。
 そしてリビングに戻り、ベッドに倒れ込んだ。「マジで疲れた…。これからどうしよう?」




<作者のことば>
何が書きたいのかわからなくなってきた…。
2人の掛け合いがメインになりつつある。ほとんど会話しかない。

そして2話目にして小夏のキャラが崩壊。

これだから思いつきで書いたやつは…。
どうにもキャラが固定しない。自分の中には小夏がいっぱい。

どの小夏を採用すればいいのやら。

久々に書いてから大幅に修正した。
あまりに小夏のキャラクターが変わり過ぎたので、言葉遣いを調整。

次回がどうなるのか、不安。。


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COMMENT

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ライム | URL | 2009/11/30(月) 13:26 [EDIT]
岩手というと
海岸は黒いゴツゴツした多孔質の火山岩でできた岩場で
陸にいくにしたがい荒野にその岩が乾燥のためしだいに白茶けてどこまでも続く
そういう語感があるのですが
1度行って(花巻)現認しているので、そんなことはないのは知っています
岩手からきたメガネっ娘の小夏ちゃん
ホウキで荒野を飛び越えてきたんでしょうか
いや、荒野ちゃうやろ\(^_^;

匡介 | URL | 2009/11/30(月) 15:11 [EDIT]
>ライムさん
岩手のイメージどんなんですか(笑)
実際、岩手の海は知らないので何とも言えませんが、それ人の住める場所じゃないみたいですよ(笑) 本当に現実の岩手を見てもらってよかった!

ホウキって、魔女だったのか。
そうか、小夏は魔女だったのか。

って勝手に設定増やさないでください(笑)

ポール・ブリッツ | URL | 2009/11/30(月) 17:36 [EDIT]
そうか「神田川」の世界は遠い昔なのか。デフレで貧乏とはいっていても、現代日本、富んでるじゃないか(^^;)


岩手といえば、角川映画の「野性の証明」で

「日本のチベット」

と断言されていたと、岩手出身の漫画家の後藤寿庵先生が書いておられました。
昔の映画はいいたいこというなあ(笑)。

小夏ちゃんも、東北楽天ゴールデンイーグルスの試合にでも連れて行けば、ホームシックを起こして帰りたくなるかもしれん(^^)

匡介 | URL | 2009/11/30(月) 17:55 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
世の中は相変わらずの不況ですが、生活水準自体は以前よりずっと上がっていると思います。
それにデフレの影響は大きいですが、個人レヴェルで考えると、その影響の程度はすっごく差があるんじゃないでしょうか?(格差社会ってやつですね)

「日本のチベット」!! ……チベット行ったことない!!(笑)
でも、そういうイメージあるんですね。まぁ、岩手も広いですから色々なところがあるんでしょうか。少なくとも盛岡は近代的ですよ(笑)

楽天イーグルスは宮城県を本拠地としているので、(東北とついているだけで)岩手の人がどう思っているのかわかりませんが、少なくとも小夏は野球を見てホームシックになる気がしません。興味なさそう(笑)
いや、俺が興味ないだけで、小夏は案外野球好きなのだろうか??

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