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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/27(金)   CATEGORY: 短篇小説
サムライ・ロック
 俺は走った。どこへ向かうワケでもなく。
 ただガムシャラに。突っ走った。どこへ向かうワケでもなく。

***

「俺らでバンド組もうぜ」
 とマサキは言った。
 マキオは「はあ」といった感じで、俺も「はあ」といった感じだった。
「俺は音楽で世界を変えれると本気で思ってんだ!」
 とマサキは言った。
 結局、俺らはバンドを組むこととなって、じゃあバンド名とかバンドの方向性とかを決めようって集まったファミレスでのことだ。
 やはりマキオは「はあ」だった。そして俺も「はあ」だった。

 ――じゃあ、俺はそう思わなかった?

 正直に言うと、俺も少しくらいは世界を変えてやれるんじゃないかって思っていた。それも自分の音楽で。

 SAMURAI3

 それが俺らのバンド名に決まった。
 現代を生きるサムライ3人組。なんて大それたことは思ってなかったが、こんな腐った世の中をぶった斬ってやる! みたいな気持ちもないわけじゃなかった。
 まあ、この世が本当に腐っているかは別として。その方がロックだし。

 志(こころざし)を高く。サムライのように。

 まあ、そんな意味。

 SAMURAI3の評判は意外と良かった。
 月に2回と精力的にライヴを行なった。客足も上々。そのたびに俺たちの可能性が頭をよぎる。俺ら何かデカイこともできるんじゃないかって。

「俺はさ、音楽で世界を変えられるって本気で思ってんだ」
 とマサキは言った。
「それ前に聞いた」
 とマキオは言った。
「そぉか~?」
 でかいライヴの打ち上げで集まった小さな居酒屋の片隅でマサキは酔っていた。
「じゃあ、お前はどう思ってんだよ?」
 そうマサキはマキオに問う。
「俺? 別に世界を変えられるなんて大それたこと思ってないよ」
「なにィ~?」
 それを聞いたマサキはマキオに飛びかかった。
 それを見た俺は急いでマサキを押さえにかかる。
「音楽の力を信じてねーヤツに音楽をやる資格はねェ~!!」
 マサキは叫んだ。
「バッカじゃねえの? お前、夢見すぎだよ!」
 マキオも叫ぶ。
「なあ? シュウもそう思うだろ?」
 ナゼそこで俺に振る?
「俺は…」

 俺は…

 俺は…――――

「俺は…世界を変えられるんじゃないかってひそかに信じてる」
 一瞬だけ時間が止まったような気がした。
「よぉく言った~!」
 マサキはもうワケがわかならくなってる。
「そうかよ。俺は悪者かよ。お前も俺には音楽をやる資格はないって思ってんだろ!」
「いや、そんなこと…」
 俺は全てを言い切る前に、マキオは席を立った。そして店を出た。
 残された俺もマサキを連れて店を出た。
「マサキ、このあとどうする?」
「俺はぁ、もう帰る」
「ひとりで大丈夫か?」
「あたぼーよ!」
 そう言ってマサキは俺とは逆方向に向かって歩きだした。
「音楽の力を忘れるんじゃねェ~ぞ!」
 それがマサキの最後の言葉だ。
「俺らは世界を変えられる!」
 その言葉は今でもこの耳に残ってる。

 次の日、俺はマサキが死んだことを知った。

***

 あのあと、マサキはスクーターに乗って帰ろうとしたらしい。俺はマサキがスクーターで来ていることも知らなかった。
 そしてあの泥酔状態のままスクーターにまたがり、エンジンをかけた。そうしてマサキとマサキのスクーターはゆらゆらと帰路を走った。
 そしてそのまま対向車線に入り、向かってくる車に突っ込んだ。

 そうしてマサキは死んだ。

 世界を変えられると豪語していた彼は意外にもあっさりと死んだ。
 彼は少しでも世界を変えられたのだろうか? 変えられなかったのだろうか?

 わからない。

 俺はこのあとどうするべきなんだろう。
 このまま音楽を続けるべきなのか、それとももう辞めるべきなのか。

 ――俺はさ、音楽の力で世界を変えられるって本気で思ってんだ。

 ――音楽の力を信じねーヤツに音楽をやる資格はねー!

 ――音楽の力を忘れるんじゃねェ~ぞ!

 ――俺らは世界を変えられる!

 俺は…音楽の力を信じてる?

 ――俺は世界を変えられるんじゃないかってひそかに信じてる。

 そっか。そうだよな。
 音楽を続けるか辞めるかじゃない。信じられるかどうかなんだ。
 俺は音楽の力を信じてる。どっかで何かスゲェことをやらかすんじゃないかって思ってる。それはこの世界も巻き込んで、大きな変化をもたらすんじゃないかって思ってる。
 もう音楽を信じて突っ走るかない。

 俺は走った。どこへ向かうワケでもなく。
 ただガムシャラに。突っ走った。どこへ向かうワケでもなく。

 音楽の可能性を信じて。
 自分自身の力を信じて。

 どこまでも走り続ける。

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COMMENT

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● はじめまして
ペリット | URL | 2008/07/18(金) 15:14 [EDIT]
音楽が世界を変えるんじゃなくて音楽をする人が世界を変えていく
前に進む主人公を見てそんな事を思いました。
これから他の小説を読んでみようと思います。匡介さんとしてはどれがお勧めですか?
これからも更新頑張って下さい、また来ます。

匡介 | URL | 2008/07/22(火) 21:53 [EDIT]
>ペリットさん
はじめまして。えー、お返事遅くなってしまって申し訳ありません(汗)
そのオススメはここにある中でってことでしょうか? うーん、、正直人に薦められるものって…(苦笑)
まぁ あえて薦めるならば「ボーイズ・ラン(前・後編)」でしょうか。

きっと音楽を作る人も演奏する人も聴く人もそれぞれに影響はあって、それぞれが新しい世界を生み出していくんだと思います。
…って、そこまで深い意味があるかは不明ですが。なにせ暇なときにテキトーに書き連ねたものでして(笑)
またお越しくださることを楽しみに待ってます。
● はじめまして
赤羽 悠 | URL | 2008/09/03(水) 01:30 [EDIT]
訪問ありがとうございました
音楽というものは大きいですね
ひとが生み出して人を変えていく力
他の小説も読ませていただきますね♪

匡介 | URL | 2008/09/03(水) 09:49 [EDIT]
>赤羽 悠さん
音楽にはとてもお世話になってるのでバンドモノを書きましたが、『前に進もうとする力』をテーマに書いていたような気がします。
…いや、これは後付けかな(笑)

でも音楽に限らず、人が人に与える影響っていうのは決して少ないものではないですよね。
友達が死んだりもして全体的に明るい雰囲気ではないんですが、希望に向かっている感じは出ていて、どんなときでも人が前に進むことが出来る。そう感じて頂けたら幸いです。

またのお越しをお待ちしていますね。
● サムライ・ロック読みました~
神瀬一晃 | URL | 2010/02/02(火) 20:06 [EDIT]
 こんばんは~。
 呼ばれてないけど、飛び出てじゃj(ry

 とか、古いネタを使いつつ。
 あっさり死にましたね、マサキ。友人にマサキって呼ばれているやつがいるので、ふと、心配になったりw
 まあ、あいつは基本家に篭ってネトゲやってるような奴なので、ある意味そういう心配はないか……。

 とか、そんな脱線をしつつ。
 主人公とマキオは最初バンドを組むのに対して精力的では無かったのに対して、後には活動へ積極的になった模様ですが、なぜそうなったのかの出来事や、理由の描写が欲しかったかな、と。

 偉そうなこと言ってすみません。
 とにもかくにも、全体的に描写は読みやすかったです。
 ただ、マサキとマキオ、頭文字が同じでカタカナ表記だったがために、多少読みづらいと感じたくらいですね。

 とまあ、そんな感想を残しつつ。
 ではでは、また~。

匡介 | URL | 2010/02/03(水) 09:23 [EDIT]
>神瀬一晃さん
こんにちは。
またまたお読み頂きましてありがとうございます。

どうやらご友人にマサキさんがいるようで、同名のキャラクターが死んでしまう設定で申し訳ないです。
しかし呼ばれてるということは、あだ名でしょうか? だとしたら珍しいですね~。

不本意ながら少し説明を加えると主人公もマキオも最初は積極的ではなかったわけではないんですよね。ただマサキが毎回唐突に何かを言うので(「バンド組もう!」「音楽で世界を変えられる!」等、何の前触れもなく)、急過ぎて2人はついていけていないだけなんです。
まあ、マキオは主人公とマサキに比べて、2人ほど積極的な感じではないですが。

…と、そういったイメージで書いたのですが上手く伝わらなかったようで、今後はそういう部分も気をつけて書きたいですね!
ご感想ありがとうございました。
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2010/02/03(水) 14:44 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

匡介 | URL | 2010/02/03(水) 15:15 [EDIT]
>シークレットさん
おお! これはわざわざありがとうございます♪
てか、謝らなくても!(汗) 好きなときにお読み頂いて結構ですよ! むしろ全部読んでいる人いるかなって思っているくらいなので無問題です!

そうなんですよね、物事何がきっかけになるかわかりません。
最後の一押しが、些細なことだったりもしますよね。

今回はその一押しをマサキがしてくれたんだと思います。

「前へ」
自分が青春(っぽいもの)を書くとどうしてもそういうものを書きたくなります。
自分自身がそうありたいからなのだと思いますが、躍進していく姿、あるいはそうしようとしている姿に焦点を当てたくなりますね。
今後も作品ともども前へ前へと突き進んでいこうと思うので応援よろしくお願いします!!

しかし文章力も大事だと思いますよ(笑)
毎度コメントありがとうございますe-420

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