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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/10/18(日)   CATEGORY: 短篇小説
鬼憑-復讐代行人-(6)
「逃・ガ・サ・ナ・イ!」
 男の口元は泡を吹いていた。尋常ではない。
「やめろ!!」勇也にとって、聞き覚えのある声だった。「止まるんだ!! おとなしくしろ!!」
 井上刑事だった。彼が走っている男に飛びかかる。しかし簡単に振り切られた。
 続いて何人かの警官が集まってきた。彼らは男の躰にしがみつき、押さえ込もうとした。しかし警官をひきずりながらも男は足を止めない。人間とは思えぬ力で、走る。警官たちの体重は決して軽くないはずだが、そんなものになど動じる様子はなかった。
 井上が再度飛びかかる。助けを求められた駅員も押さえつけに参加した。
 総勢6名の物理的制止に、さすがの男も若干ひるんだ――ように見えた。
「ぎゃああああああああ!!!!」
 警官のひとりが叫んだ。男に顔を噛みつかれたからである。
 男は警官の顔面の皮膚を、多少の肉ごと喰いちぎった。警官の顔からみるみる血が溢れ出し、涙、そして涎や洟などの体液と混ざった。
 もうひとりの警官は腕を掴まれた。その力は人間のそれではなく、大型の獣、いや建設用の大型機械―――クレーンやショベルカーのような――を想像させた。メキメキと肉と骨が潰れる音がして、グチャリという嫌な音が続き、最後にはブシューという血が噴水のように放出される音に変わった。警官の腕は潰れ、折れていた。何トンもの圧力で、エレベーターのドアに挟まれればあるいはこうなるかもしれなかった。
 3人目の警官は最初と同じように顔面に噛みつかれた。男の歯が、警官の鼻にズブズブとめり込む。彼にとっては悪夢だった。激しい痛みとともに、とっさに自分の運命を悲観した。
 彼の鼻は強烈な血飛沫とともにもがれ、男の口内でクチャクチャと噛まれていた。
 それを見た駅員のひとりが恐ろしさでその場を離れ、吐いた。
 他の駅員も離れ、ついには井上ひとりになった。
 男は井上の腕に噛みついた。
 服の上からでも充分に深く、男の歯が喰い込む。
 井上は絶叫しながらも男を放しはしなかった。刑事としての意地だ。
 今度は首に噛みつかれた。頸動脈が切断され、またもや血の噴水が上がる。こればかりは井上も堪(こた)えた。ぐおお…と呻き、それでも左手だけは放さなかった。今度は意地というよりか、痛みのあまり手に力が入ったというのが事実に近かった。
 男は真っ赤に染まりながら、井上の首から離れ、彼の左手首に噛みついた。おびただしい量の血液は悲鳴のように噴き上がる。
 それにはさすがの井上も、男を解放せざるを得なかった。
 勇也は恐怖に圧倒され失禁していた。尿をまき散らしながらも走った。後方を見ると、井上らを振り払った男が白目を剥いて疾走してきていた。一時は広がった距離も、着実に詰まってきている。迫りくる恐怖に、勇也は絶望した。――俺は、死ぬのか。
 ただただ走り続けた勇也は、もはや自分がどこにいるのかさえわからなかった。気付けば住宅街の中にいる。どこか、どこかの家に匿わせてもらえないだろうか――。
 後方を振り返ると、男の姿は見えなくなっていた。
 ――いつの間に。振り切ったのか俺は?
 バリーン、という破砕音とともにすぐ横にあった住宅の窓が割れ、そこからガラスにまみれ全身に傷を負った男が飛び出してきた。自分の血と他人の血を全身に浴び、涎まみれの口元は泡を噴き、血走った瞳のない眼はギョロリと――実際には白眼で見えるとは思えないが――勇也を見た。腕が変な方向に曲がっている。折れているようだ。
 そんな姿を見て、勇也は不可解な表情をした。どんな感情になればそうなるのかわからないような、恐怖で感情がショートしたに違いない壊れた表情。
「どうしてだよ……。どうして俺はこんなにまでなってお前に追われなきゃいけない!! 俺が一体何をした!? お前は誰なんだよ!! どうしてお前はそんな姿になっても俺を追う!!?」
 男はにへらと笑った。そんなように勇也には見えた。
 そして血で赤黒くなった口を開けて、言った――

「オ前ノセイダッッ!! オマエノッ!! ワタシハオマエ二イイヨウニ弄バレ、捨テラレタ!! 使イ捨テ二サレタンダッッ!! オマエガ憎イイイッ!! 二クイッ!! オマエナド生キテイル価値モナアアアアアアアアイイイイ!! 死ネ! 死ネ!死ネ死ネシネシネシネシネェェェエエ!!!!」

 気付けば、目の前にいるのは男などではなくなっていた。

 髪の長い、女だった。



<作者のことば>
ひぃー! グロテスク&ホラー!! と読み返していて自分で思ってしまいましたが、どうだったでしょうか?
読んでいて、文章的に成長したなぁ、とまたもや自分で思ってしまいましたが、驕りでしょうか?(笑)

昨日ドラッグストアに行ったら、レジで予想外にもお金が足りなかったという惨事に見舞われました。
まあ、予想内でも困るのだけれど、仕方ないから「これ外してもらえますか」とレジのお姉さんにお願いして、さあ改めて会計を……ってまた足りねえ!!

恥ずかしながらも、 「あの、すみませんコレも…」 と穴があったら入りたい気持ちでした。てへ♪

このときばかりは常に消費者の味方になるはずの安さがアダになった!!
まさか100円も変わらないとは……アレ!! ←どれ!!


話題転換。


またしても昨日のことですが、TVで「スパイダーマン」やってましたね。
すでに何度か観ていたのだけれど、サム・ライミ監督が好きなのでまた観ました。個人的には紙ヒコーキが飛んでるシーンのあの視覚効果が最高に好きなのだが、誰かわかる人いないかなぁ?
ちなみにサム・ライミ監督はホラー映画出身で、おそらくタイトルの知名度的には高いであろう「死霊のはらわた」もサムさんです。ライミさんです。古き良きB級ホラーなので、気になる人には是非観て欲しい!!
さらにこの人はゴースト・ハウスピクチャーズというホラー専門レーベルを立ち上げてしまうほどホラー好き!! このレーベルから発せられている「ブギーマン」(ハロウィンは関係ない)も視覚効果が素敵♪ カメラアングルやカットがすごく好みだっつー映画です。内容はジャパニーズホラー感を取り入れた洋ホラーになっていて、見えない怖さ的なものを意識してるんじゃないかな?
続編「ブギーマン2」「ブギーマン3」もあるからもしかして意外と有名なのだろうか?(ちなみにまだ観ていない。先日借りたけど)
続編は監督が違うみたいなのだけれど、1のような、あるいは1を超えた面白さがあるといいなぁ。

あ、話は戻りますが「スパイダーマン」で主人公がクモに咬まれるシーンのクモ、かなりリアルで怖気がするほどなのは俺だけでしょうか?(実は大のクモ嫌い)
なのに、怖いもの見たさでそのシーンで一時停止するっていう(笑)←録画していた。

あのグロテスクなヴィジュアルに相反して、あのつぶらな瞳はなんなのか!!
それがまた気持ち悪くて気持ち悪くて、なのにもっと気持ち悪くて仕方ないコマがないかスロー再生で探してしまうのは何なのだろうか。人のよくわからぬサガですな。


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COMMENT

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● だからぁ(泣)
鷹の爪痕 | URL | 2009/10/19(月) 12:00 [EDIT]
えぇ、もう口をポカンと開けながら読ませていただきました( ゚ρ゚ )
もう描写力がお見事で、妄想 想像力豊かな?私の頭の中は血だらけでグチャグチャな顔面の刑事さんたちと、くちゃくちゃとそれを口に含んだ男が駆け巡っております(ノω;`)

そうっ、そうなんですよ!
そうやって助けに行った人って無残な死に方しちゃうんですよ(泣)
いい人たちなのに…

>今度は意地というよりか、痛みのあまり手に力が入ったというのが事実に近かった。

この表現、なるほど納得!!と(。・`ω´・。)ゞ
「うんうん、確かに!」と思いながらよんでおりました。

>まさか100円も変わらないとは……アレ!! ←どれ!!

どれっ!?(笑)

匡介 | URL | 2009/10/19(月) 16:04 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
それはきっと描写力が凄いのではなく、ただ単に鷹の爪痕さんの 想像 妄想力が素晴らしいのかと(笑)
まぁ、確かに助けに入る人たちは何の関係もなく巻き込まれちゃいますよね(笑) でも、ご安心を! 死んだとは書いてませんから! 処置が早ければ助かります!! …たぶん。

そこの表現気に入られましたか~e-420
たぶん以前の自分では思いつかなかった表現のひとつかと思います。今回はほとんど立ち止まることなく書いているので、地力がアップしたのだと思いたい!!(笑)

ああ、アレが気になるのですか?
それは鷹の爪痕さんもおそらく頻繁に目にしていると思われるアレですよ。現在の社会には必須のアレなんですが、とっさに答えてしまったのでいくらとか考えてなかったんですよね、アレの値段。
また改めてアレを買いに行こうと思います。無きゃ困りますからね、アレ(笑)

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