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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/10/16(金)   CATEGORY: 短篇小説
鬼憑-復讐代行人-(5)
 曇天の下を吹く風が、季節外れに冷たい空気を運んできた。
 勇也はその寒さに軽く身震いをしながら、駅のホームに立たっていた。
 ――ここで怜奈は死んだのか。
 目の前には、線路が見えた。
 怜奈が死んだ場所。
 今はすでに綺麗になっていて、まさかここで人が死んだなんて思えなかった。それも大量の血と肉を降らせて。
「――怜奈。苦しかったか? 痛かったか?」
 そうではないような気がした。きっと電車とまともにぶつかったなら、それは即死だろう。きっと痛みを感じる暇もなかったに違いない。――そう、信じたい。
 何もなかったかのように佇むホームは、どこか空虚な世界に思えた。
 ここで怜奈は死んだのだ。バラバラに、グチャグチャになって。何となく、ここが死後の世界に――そんなものあればだが――繋がっている気がした。
 どうしてそんな死に方をしなければならなかったのだろう? きっと、したくない死に方トップテンに入るのではないだろうか。全身ミンチなんて。自殺であれば別かもしれないが。
「……ごめんな」
 ふと、口から零れ落ちた言葉だった。まさか自分が、こんなことを言うとは思いもしなかった。今まで多くの人間をゴミ屑のように扱った。冷徹非情な人間が自分だと勇也は思っていた。
「許さない」
 幻聴。そう言えなくもないほど、意識の隅でかろうじて捉えた言葉だった。
 そんなことありえないが怜奈が近くにいるような気がして、あたりを見回した。真昼の時間帯に、駅のホームにいる人間はそう多くはない。
 その中で、ひとり気になる人間がいた。周りとはまったく異質な空気を纏う男だった。思わずたじろいだ。生きてる人間にあるのが生気だとしたら、その人間が纏っているのは死気だった。まるで現実味のない、死人のような顔。それは笑っているようにも、憤っているようにも、さらには泣いているようにも見えた。
 男の眼光は鋭く、鈍く、相反する性質で勇也を貫いた。よく砥がれた真剣で貫かれ、錆ついた鉈が躰を擦れるような不快感。あるいは鋸(のこぎり)のように、動きながら傷口を抉(えぐ)るような恐ろしさ。
 あまりの恐怖に息がうまく出来なくなっていた。勇也からはヒューヒューと不思議な呼吸音が漏れている。

「許サナイ」

 今度は明瞭(はっきり)と聴こえた。
 目の前の異質な男の口が、間違いなくそう言った。

「許サナイ」

 勇也は悪意の塊のようだ、と思った。悪意が人のカタチを成している。そう思ってしまうほど、眼前の男は禍々(まがまが)しく、狂気に満ちていた。男を包む空気が、黒く変色し侵されているのではないかと疑うほど、不気味なオーラを放っていた。死を纏っていた。
「こっちに来るなよ!!」
 大声で叫んだ。思わず、声は震えていた。気付けば両足もガタついている。
「オマエハ逃ゲラレナイ…」
 男は恐ろしく低く、高い声で言った。
 現実的にはありえない声だった。
 確実に低い男の声なのに、勇也の耳には女のように高くも聴こえた。
 ふたつの声が重複しているようでもあったし、そうではなく完全にひとつであるようでもあった。
 それは、人知を超えた何かであると勇也は悟った。
「モウ逃ゲラレナイ!! 逃ガサナイ!!」
 男は例の低く、高い声でそう叫ぶと、勇也に向かって全速力で駆けてきた。
 その顔は鬼の形相。地獄から這い出てきた、悪鬼の面だった!!
 勇也は絶叫しつつ、男から逃げた。足がもつれるのも気にせず、何度も転びながら必死に走る。逃げた。
 男は狂人の眼つきで勇也を睨みつけ、発狂したジャンキーの如く雄叫びをあげて勇也を追った。
 はたから見れば、ふたりとも狂っていた。
 泣きながら必死に逃げる勇也。雄叫びをあげ、眼をひん剥きながら追う男。
 出来の悪いホラー映画か、コメディのような光景だった。



<作者のことば>
もはや完全にホラーです(笑)
アレ、おかしいな。そんなはずじゃなかったのだが(笑)

ホラーといえば先日「デッド・サイレンス」という映画を観た。
「SAW」シリーズの監督&脚本タッグの映画なのだけれど、面白かった。ザ・ホラーな感じ。
洋ホラーっていうとアクション性が高かったりするけれど、音などの効果を利用したり、ちょっとジャパニーズ・ホラーな感覚。後半になると洋ホラー感も強まるけれど、そのバランスが好きだ。
内容はベタなもので、ストーリー的な新鮮さは感じられなかったのは残念。つい「SAW」タッグだとそういう期待をしてしまう。ラストでどんでん返しがあるのでは? とか。一応あったけれど、「SAW」のインパクトあるラストに比べれば、その伏線は多くあったし予想出来ていた。もう一工夫二工夫あればもっともっと面白くなっていたと思うんだけどなぁ。それでもかなり良作だと思った。
もう一押し物足りなかったけれど、全体にある緊張感・緊迫感は良いし、故郷の村に伝わる詩のことなど日本人好みな雰囲気であるかも。個人的にはサイレントヒルっぽくて好き。


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COMMENT

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● ホ・ホラーですよ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
鷹の爪痕 | URL | 2009/10/17(土) 12:17 [EDIT]
だ、ダメだって、夜にそんな所に行っちゃあ!!…って、あ、真昼って書いてあった(汗)

しかし…怖い、怖いですよぅ(ノω≦`)
逃げ足の速さだけは自信があるのですがw こんな状況は耐えられませんッ~⊂´⌒∠;゚Д゚)ゝつ

また描写がお上手だから……
もう、続きが気になって仕方が無いじゃないですかッ!!
えぇ、怖いもの見たさもかなり入ってます(笑)

しかしこんなに惹き込む作品を書かれる匡介さま……さすがです(;・∀・)

匡介 | URL | 2009/10/18(日) 02:23 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
逃げ足の速さに自信がある鷹の爪痕さんでも、さすがに彼からは逃げられないかもしれませんよ?
彼の本領は次回で発揮されるので、それでも逃げられると思われるなら大したものです(笑)←誰目線?(笑)

描写力を褒めていただけて嬉しいです♪
が、まだまだこんなものでは満足できないですよー。もっともっとレヴェルを上げなくては書きたくても思うように書けないままです。。
でも今回少しだけ経験値積んだかな? 今後も精進します!

物語も中盤を超えたところだと思うので、どうか最後までお付き合いくださいね!

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