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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/25(水)   CATEGORY: 短篇小説
魔人狩り⑤
 部屋の明かりを点けたらそこには横たわるマユミがいた。
 マユミの服ははだけ、ところどころ破けたところがある。そして彼女の前には彼女の父親であるはずの人間が全裸で彼女に圧し掛かっているではないか。
 カナエは状況がわからず硬直した。無理もない、彼女の頭の中は真っ白になり思考が完全に停止していた。そして数秒して彼女は叫び声を上げた。声は家中に響き渡った。
 パニックの最中(さなか)にも彼女を握り締めていたケータイを開き、予(あらかじ)めに出しておいた霧島の番号を確認して通話ボタンを押した。それと同時にマユミの父親はカナエに飛びかかった。カナエは見事に押し倒され、マユミの父親にマウントポジションを取られた格好になった。何の衣服も纏(まと)ってはいない父親の男根は太く大きくそそり立っている。カナエは恐怖した。何の声さえも出すことができなくなっていた。
 父親は息遣いが荒く、そのままカナエの両手を押さえ込んできた。カナエの目には涙が滲む。ちらりと見えたマユミも同様に泣いていた。彼女は目を真っ赤にし、涙と洟(はな)を垂れ流していた。口には布のようなものが詰め込まれており、声を出すことは叶わなかった。父親の拘束が解かれた今でも恐怖に凍りついており、口内の異物を吐き出すことすら忘れている。ただ文字通りに凍りつき、固まっていた。その視線はどこを向いているのかわからないほどで、彼女にカナエの姿など入っていないのかもしれない。
 カナエは自分を押さえつける父親の両腕を払いのけようと必死だった。しかしやはり男の腕力には敵わない。彼女は身動きひとつできないようだった。何をされるかわからない恐怖から声も出せない。カナエの瞳からは次々と涙が零れ落ちる。父親の男はカナエの衣服を乱暴に剥ぎ取ろうとした。
(なんで…!? おじさん、どうしちゃった? やめてよ。もう‥やめて…)
 心の内の悲痛な叫びをマユミの父親には届かない。口元からは涎(よだれ)が垂れ落ち、血走ったような目のこの男は、まるで獣だった。野獣の如くカナエに襲いかかっていった。

 ガシャン。ガラスが割れる音がした。
 マユミの父親はそんなものに興味がないようにカナエに舌を這わせている。ほとんど全裸といっていいような格好にされたカナエは、父親のまるで人間とは思えない長い舌で身体をゆっくりと舐められていた。触手のような舌がカナエの性器まわりを這ったときには、嘔吐でもしそうな嫌悪感を彼女は覚えたほどだった。もう彼女は何かに助けを請う気力すら残っていなかった。
 そんなときである。リビングの方から男の姿が現れた。カナエも最初はそれが誰なのかがわからなかったが、それも束(つか)の間、その男の正体が霧島とわかると彼女にも希望の光が差し込んできた。何もかもに絶望し、希望など微塵も感じられなかったさっきまでとはまるで一転したのだ。
 霧島の手には相変わらず日本刀が携えられている。しかしすでに抜刀済みで、刃がきらめいていた。
 マユミの父親はそんな男の姿を見て立ち上がった。彼の男根は大きすぎるほどにいきり立っている。色も黒々としていて妙にグロテスクだ。
 霧島は刀を構え、切っ先を父親に向けた。
 父親は長すぎる舌をダランと垂れ流していた。
「カナエ、大丈夫か?」
 霧島がカナエに声をかける。彼女は頷くのも忘れていた。
 じりじりと間合いを詰め、霧島が父親に斬りかかった。父親も同時に跳びかかった。
 一瞬にして、父親の左肩から腹部にかけて真剣の刃が切り裂いた。しかしそれも全てを両断するには足らず、刀の刃は父親の肉体にめり込んだままだ。
 父親は右手で霧島の左腕を掴んだ。父親の長く発達した爪が霧島の左腕の傷口に喰い込む。血が滲み、暫くすると彼の腕からフローリングの床へと血が滴った。
 霧島は全力で蹴り飛ばし、父親を突き放した。父親は床へと倒れ込む。
 倒れた父親を見てつかさず霧島は父親の喉元に刀を突き立てた。そして思いっきり父親の喉に剣先をねじ込んだ。父親の口からは血が漏れた。

***

 泣きじゃくるカナエを霧島は見た目とは裏腹に厚いその胸で受け止めていた。
 どうしたらいいかわからない、といったふうに霧島は戸惑っている。
 そのとき、霧島の視界に床に横たわる女の子が入ってきた。彼はそっとカナエから離れてマユミに近づいた。彼女は放心しているのか何の反応もなかった。
 霧島は自らのケータイを取り出してどこかに連絡をする。電話を切ると、カナエが霧島に抱きついてきた。
「大丈夫か?」
「う、うん」
「彼女はお前の友達か?」
「うん」
「まず服を着よう。替えはあるのか? それから彼女の着替えも探してくれると有難いんだが」
「わかった。ちょっと待ってて」
 そう言ってカナエは階段を昇り、2階へと行こうとしたが、すぐに足を止め、霧島のところへ戻ってきた。
「どうかしたのか?」
「怖くて。…一緒に来て」
 そう言われて彼は床に横たわるマユミに目をやった。
「しかし彼女を置いていくのもな。少し待ってくれ」
 彼はマユミの身体を抱き寄せ、持ち上げた。

***

 それから2ヵ月――。
 あの惨劇がきっかけでカナエはPTSD(Post-Traumatic Stress Disorder/心的外傷後ストレス傷害)となり、定期的に病院へと通っている。マユミも同様に通院をしている。心的なショックでいうと彼女の方がはるかに大きいらしい。なにせ実の父親に犯されたのだ、仕方もないことだった。 
 カナエはあれから1度だけ霧島に会った。しかしそれからは会っていない。
 
 彼は今夜も夜の街を駆けるのだろう。魔人どもを狩りゆく為に。


<作者のことば>
ちなみに書いてて一番楽しかったのはカナエたちがマユミの父親に襲われてるシーンです♪
え? 鬼畜だって? ハッハッハ。なんとでも言いたまえ。

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