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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/07/17(金)   CATEGORY: 短篇小説
死刑執行人
 男は何かから逃げるように走っていた。ときたま後ろを振り返り、何かを気にしている。人通りの少ない路地裏を駆け抜けると、賑やかな大通りに出た。
 そして迷わず人混みの中に飛び込み、森の中の木となった。

 静寂が全てを包む夜の街。男は何かを求めるようにふらふらと彷徨っていた。
 やがてひとりの女を見つける。これ以上ない獲物を見つけた捕食者のように、舌舐めずりをし、そっと女に近付いた。あと数メートルまで迫ったとき、男の躰に変化が起きた。標準的だった体躯はみるみる変貌し筋骨隆々となり、貌(かお)つきも荒々しく野性味の帯びたふうになった。牙のようなものが見え隠れしていて、両腕の皮膚が盛り上がり、それを突き破って大きく鋭利な爪が生えた。
 まさしく変貌を遂げた男は俊敏な動物を思わせる速さの動きで女性に飛びかかり、その爪で女性の服を、肌を、切り裂く。血飛沫が舞い上がり、男は恍惚とした表情を浮かべた。その男根は脈打ちを繰り返して怒張した。
 肉を爪で裂く快感の余韻に浸っていると、背後から異様な気配がした。全身の毛が逆立ち、素早くその場から飛び退く。
 そこには黒いボーラーハットとコートを着た男が立っていた。短く刈られた、ほとんど白に近い金髪が闇夜に浮かぶ。その瞳は妖しく光っていた。
「グリエルモ・カザグランダだな?」
 落ち着いた声が、重く、静かに響いた。
「キサマ、誰だ?」
「本来、名乗る必要はないんだがな」つばの下では射るような眼光がグリエルモ・カザグランダを見つめている。「コンスタンツォ・アウテーリ=マンゾッキ。お前の死刑執行官だ」
 それを聞いたグリエルモの躰がさらに一回り大きく膨らんだ。口鼻が突出し、犬や狼に似た貌に変化した。目にはまがまがしい闇が渦巻いている。
「グリエルモ・カザグランダ。大人しくしていれば、楽に終わらせてやる」
「黙レ。オレハ投降ナドシナイ――グルルルルァ!!」
 風貌の変化によるものか、あるいは野生が勝り始めているのか言葉はカタコトになりつつあった。涎(よだれ)を垂らし、その様相はまさに怪物だ。
「仕方ないな」
 コンスタンツォはいつ取り出したのか、その片手に黒い銃を持っている。
 グリエルモは素早い動きで、地面を蹴り壁へ、壁を蹴りコンスタンツォに飛びかかる。爪を振りかざして、狙いを定め、勢いよく振り下ろした。
 とっさの反応で飛び退いたコンスタンツォはわずかに肩に傷を負っただけで助かった。もしまともにあの爪を受けたならば、ただでは済まないだろう。
 銃口が獣化したグリエルモを捉えた。コンスタンツォはその一瞬を逃さず、トリガーを数度引いた。放たれた銃弾がグリエルモ目がけて直進する。
「グルルルォォォオオ!!」
 変身とともに急激に発達した野生の動体視力でグリエルモは銃弾の流れを捉え、俊敏な動きでそれを避けた。弾は後方の壁に穴を穿っただけで、グリエルモは依然無傷だ。
 両者は対峙した。お互いに微妙な間隔――間合いを保っている。おそらく弾はまだ銃に込められたものが残っているだろう。しかしそれをぶち込むより早くグリエルモの爪が襲ってくることも可能な距離であった。空気が張り詰める。目を離せない。
「さよならだ」
 何の脈絡もなくコンスタンツォが呟くと、グリエルモは背後に妙な気配を感じた。驚いて振り返ると、そこには腕があった。壁から腕が生えている。
「――死刑執行」
 見るとコンスタンツォの腕がなくなっていた。まるでそこから先が異次元に消えてしまったかのように、断絶されている。
「ナンダソレハ――…」
 壁から生えた腕には、コンスタンツォの銃が握られていた。
 指がゆっくりとトリガーを引く。
 銃口から弾が飛び出す。
 さらに数度トリガーが引かれた。
 繰り返し銃弾が放出される。
 グリエルモは必死に避けようとしたが、至近距離からのその銃撃は、さすがの超身体能力をもってすらも回避するには至らなかった。
 数発の銃弾がグリエルモの躰を貫く。
「ガガガァアアア――!!」
 グリエルモは躰から煙を噴き出しながら地面に倒れた。

 ずれたボーラーハットを直して、コンスタンツォ・アウテーリ=マンゾッキはその場をあとにした。その両腕は元通りに戻っていた。
 彼が去ったその場には、もう先程までの躰を失ったグリエルモが血を流して倒れている。巨大な獣の体躯は、躰から噴き出した煙とともに消え去った。もはやその息はない。

 死刑執行官の姿はもうなかった。




<作者のことば>
とりあえずって感じで、適当に書いてみた。
若干イメージがあったもののストーリーにまで出来そうになくて、冷蔵庫にある残りもので作ってみましたレヴェル(笑)

微妙なこだわりは覚えにくい名前(笑)

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COMMENT

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● うひゃ~っ(。・`ω´・。)
鷹の爪痕 | URL | 2009/07/18(土) 15:24 [EDIT]
適当に書いてこの内容ですかッ!?
冷蔵庫の残り物で作ったら、無茶苦茶美味しかった!みたいな作品になってますけどっっ!!

匡介さまは、とてもリアル感を出すのがお上手ですよね。
書いてある内容のイメージが伝わりやすい、というか…。
臨場感が溢れていると思います。

私は……書きたいけど…難しいなぁ(´;ω;`)

匡介 | URL | 2009/07/18(土) 16:38 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
なんだか主婦みたじゃないですか(笑)
ラストの締めが微妙でしたね。書きたいとこ書いてしまって、あとどうでもいい感がありました(笑)
ちょっと眠かったので思考が働いてなかったんでしょうね~。反省します。。

でも書きたいところが書けたって満足感はあります。
ちょっと新しい表現法を感覚的に得た気がしますねー。それを今後に活かせるかどうか!
逆に書き忘れたシーンがあったことに書いてから気付いて(笑)、だけどそのシーンを挿入すると前後のバランスが崩れるし、だからといって最初から書き直すのも面倒で省いちゃいました。

気分的には冷蔵庫一掃したいので、次もまた即席モノになるかもしれません(笑)

玖月さくら | URL | 2009/07/21(火) 00:39 [EDIT]
こんばんわ玖堂さん、お久しぶり。^^
最近はあんまりブログを書く気がないのね。
先月は試験の月だよ、タイヘンです!夏休みの一月は全然勉強をしてないので、試験の結果も怖い。勉強って、面倒くさいなことだね。
最近は日本のテレビドラマを見てる、「正義の味方」と「メイちゃんの執事」とか、だから玖堂君のことを思い出した、ははっ。最近は本当に何もしてないね。日本語の勉強もだ。。。まだ一年前にと同じレベルもってのよ、だから分法が違ったら絶対教えてくださいね。w
じゃ、玖堂さんは?最近はどうですか?一杯小説書きましたみたいですね?

匡介 | URL | 2009/07/21(火) 06:04 [EDIT]
>玖月さくらさん
本当お久し振りですね!
試験お疲れさまです。夏休みの一月ってことは夏休みってもう終わったんですか? こちらはこれからって感じですよ。
そのドラマ、どちらも観ていませんが面白いですか? やっぱり外国語って難しいと思うので地道に頑張ってください(笑) ちなみに「文法」です(笑)
最近はどうでしょうね。とりあえずだらけてる気がします。小説は、そんな多くはないですけど、また少しずつ書いてますよ。相変わらず苦戦すること多いですが(笑)

玖月さくら | URL | 2009/07/22(水) 21:24 [EDIT]
ああ!「文法」ですね、きずいなっかたの、本当にごめん!!

ええ、こちらの夏休めは一月だけですけど、冬休みは二月くらいですよ。多分季節の原因やクリスマスの原因があるかしら。
そのドラマが女の子の方は好きですと思うよね、はは。「正義の味方」はとでも面白いがったよ、悪魔のお姉ちゃんとかわいそう妹の物語です。以前はこんなタイプのドラマは全然見てないから、面白い!
そして、今日朝の日食(日本もこう呼ぶですかな?)知ってるでしょ?友達に写真をもらいました、すっげな景色ですね!wもう地球の中の景色見たくない~
はっ、あたしの中国の友達はもっすぐ(九月は開学)大学生になります、でもあたしはもう二年あるよ。不公平でしょ。留学って、あんまり良くないですね。

小説は時間が十分あったらゆっくり読みます、あたしは日本語の読むことは緩慢ですのでw。

匡介 | URL | 2009/07/22(水) 22:44 [EDIT]
>玖月さくらさん
「気付く」は「きずく」ではなくて「きづく」ですね(笑)
きっと学期が始まる時期が違うからなんでしょうね~。

日本でも日食(あるいは日蝕)ですよ。
ちょっと天気悪かったみたいですが、地域によっては見れたようですね。自分はニュースで見ました。
凄かったですね。是非、実際に体験してみたいです。いつか見れるかな?

ああ、留学してた分、ズレてるんですね。でも良い経験だったんじゃないですか?
まあ、急ぐことでもないし、ゆっくりいきましょう(笑) 2年くらい大したことではないです!!

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