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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/24(火)   CATEGORY: 短篇小説
魔人狩り④
 カナエはマユミの部屋で彼女に渡されたカフェオレを片手に黙っていた。
 親とのケンカのこともそうだけれど、彼女はさっき起きたあの異常事態をマユミに告げるかどうかを悩んでいるのだ。どう考えても非現実すぎるあの空間。マユミは理解してくれるだろうか。それ以前に彼女にそれを話してしまっていいものだろうか? ねえ、話してしまってもいいの? カナエは心中で霧島に問うた。もちろん返事はない。
 ガタン。と大きな音が聞こえた。それはマユミの部屋がある2階ではなくて、リビングなどがある1階の方からのようだった。
「あれ? なんだろ?」
 1階で響いた音を聞いてマユミが立ち上がる。そのまま部屋のドアノブを掴み「ちょっと待ってって」とカナエに言い残して部屋を出た。

 マユミが部屋を出ていってからかれこれ10分ほどが経過しようとしていた。
(どうかしたのかな? さすがに遅すぎない?)
 カナエは自分のケータイを手に、ただ眺めるようにして待っていた。ディスプレイにはデジタル表示の時計が映し出されている。
(霧島‥暁…か)
 いつの間にか彼女のケータイのディスプレイには霧島のケータイ番号が映し出されていた。カナエはそれをじーっと見つめていた。
(また、会えるかな)
 よくよく考えるとカナエは霧島のことを何も知らなかった。霧島 暁という名前と魔人という化け物を殺すことを職業としていること。彼女が知っているのはそれだけだった。
 あの漆黒の髪と深い瞳。いつも無表情で、何を考えているかわからない。最初は冷たいと思っていたけれど、マユミの家まで送ってくれるとこを見てみるともしかして優しい人なのかな、とカナエは思う。
 ディスプレイに映る時刻からするとマユミが部屋を出て15分が経つところだった。
(下に降りてもいいかな?)
 カナエはドアを開けて、マユミの部屋を出た。そして階段のところにまで行くとなにやら物音が聞こえた。なんだろうか、何かが暴れているような音がする。ジタバタともがいているような。急に不安感が襲ってくる。彼女は恐る恐る階段を降りていく。
 声が聞こえた。それは呻き声のようだった。カナエの手にはケータイを握り締めていた。
(…マユミ? 何してるの? なんか心配だよ。わたし怖いよ)
 階段を降りきって、カナエはあたりを見回した。おかしなことに1階は真っ暗闇だった。どこにも灯りが点いていない。本当にマユミはいるのだろうか? 彼女の心臓は恐怖と不安感で高鳴っていた。ケータイを握り締める力が無意識に強まった。
「‥マユミ? いるの?」
 カナエはか細い声で闇の中に問いかけた。返事はない。
 キッチンの方から音がした。それに反応し、ビクッとカナエは一瞬心臓が止まる思いをした。ドクンドクンドクン。手に取るように鼓動が伝わってくる。
 カナエは壁に付いているスイッチに手をやった。それを押す。その瞬間、あたりが明るく鮮明になった。

***

 アスファルトの路上に血を流した頭のない死体が横たわっていた。
 その首無し死体のすぐ隣には刀に付着した血を拭き取る霧島の姿があった。
 実は霧島がカナエと一緒にいたときに現れた魔人は1体だけではなかったのだ。霧島が魔人の首を刎ね飛ばしたその瞬間、どこかに隠れてでもいたのか他の魔人が咄嗟(とっさ)に霧島の左腕を傷つけていったのだ。
 新たに現れた魔人を追おうとも霧島は思ったが、カナエのこともあり、彼は逃げる魔人を後回しにした。それを今さっき、ついに追いつきトドメを刺したのだ。

 ヴヴヴヴ…

 霧島のケータイが鳴った。彼は常にマナーモードにしているのでヴァイブレーションだけだ。上着のポケットが小刻みに振動している。
「なんだ?」
 彼はポケットからケータイを取り出し、二つ折りのそれを開いた。そのディスプレイには『棗田 カナエ』という文字が浮かんでいる。その下には彼女の番号を映し出されていた。霧島は通話ボタンを押して、彼女からの電話に出た。「どうかしたか?」と霧島は通話口越しにカナエに訊ねたが返事はなかった。沈黙する電話を片手に霧島は暫(しばら)く返事を待ってみた。何の返答もない。そう思ったときに電話の向こうから物音が聞こえた。何か大きなものが倒れたような音だ。それを聞いた霧島になにやら嫌な予感が奔(はし)った。カナエの友達の家はどこらへんだったろうか? 霧島は夜の闇を切り裂くように走った。


<作者のことば>
余談ですが、霧島は感覚的に魔人を見分けることが出来るのです。

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