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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/07/22(水)   CATEGORY: 短篇小説
ガールズ・ファンタジア -白日の幻- (1)
「みんな笑顔で居られる世界って、素敵じゃないですか? 誰も悲しむことなく、誰も辛いと思わない。私は、そんな世界に成ることを、いつも願っているんです。ふふ、笑っちゃいますよね、こんな夢物語。世界を変えるなんて、神でもない限り無理なのに。でも、いいんです。願っているだけでも、私はいいんです。それで、十分なんです」

 そう彼女は言った。それはまるで子供が考えるような稚拙なもので、人は笑うかもしれない。けれど、その純粋さが私は好きだった。そして、そんな恥ずかしいことを平気で言ってしまう彼女のことはもっと好きだった。
 なあ、加奈。私は、私たちは、加奈が誇れるような友達だっただろうか――?


***


 私が清水 加奈と出会ったのは中学1年のときで、初めて見たときは何となく育ちの良さそうな印象を受けたのを覚えている。学校を帰ろうとすると可愛らしい女の子が床に伏せていて、構わずに行こうとしたらあまりに悲しげな横顔が見えてつい声をかけてしまった。
「どうかしたの?」
 彼女は目を細めつつ、こっちを見た。え? 何かまずかった? と少し焦りを感じたのだが、聞いてみるとコンタクトレンズを落としたのだという。だから相手が見えず目を細めていたのか…と、一人納得した。
「一緒に探そうか?」
 そのときの彼女の笑顔は忘れもしない。まるでお菓子を与えられた子供のような、無邪気な笑顔。見た方も思わず笑ってしまいそうな、そんな笑顔だった。
 内心、すぐに見つかるだろうと踏んでいた。だが、コンタクトレンズは意外にも見つからない。最近って使い捨てがほとんどじゃないのか? と心中で独白してしまうほどだった。もう数分探しても見つけられない私は、彼女には悪いが先に帰らせてもらおうかと思ったときそれは聞こえた。
「パリン」
 ――え?
 実際は耳に届くかどうかというほど小さな音だったのだろうが、私の聴覚は見事にそれを拾い上げ、無視できないほど大きく耳に響いた。……パリン?
 まるで裸足みたいに足の裏の感覚が冴えわたる。何か踏んでいる。いや、何かではなくて、おそらく、きっと……。
 まずいことになった。何も気づかなかったことにしようか? この足の下には何もない。さっきの音だって、幻聴に違いない。そんな小さな音なんて聞こえるはずがないのだから。
「私もう――」
 帰ることを告げようと彼女を見ると、彼女も私のことを見ていた。まるで私のことがはっきりと見えているかのように、そして信じられないというような、軽く絶望に近いような眼差し。
「ご、ごめん…」
 素直に謝った。足を退けてみると、そこには見事に粉砕された無残な姿のコンタクトレンズが落ちていた。どうしてこんなところに…。どうして気づかなかったんだ…。
「あの、全然気づかなくて…」
 どうにかこの場を取り繕わなくてはと焦りに駆られていた私に彼女は「いいの」と、なぜか笑顔で、言った。
「元はと言えば落とした私が悪いんだし。一緒に探してくれてありがとう」
 怒られるどころが、感謝されてしまった。罪悪感が上乗せされる感じと言ったら伝わるだろうか。「じゃあ、そのままだと大変だろうし、家まで送るよ」
 またもや可愛らしい笑顔を見せつけてくる。罪悪感からか、素直に受け入れられない。

 彼女を送る途中、初めて名前を聞いた。清水 加奈。それが彼女の名前だった。
 茶色がかったきれいなストレートヘアに、おっとりしたような目が印象的な子だった。


 加奈とはすぐに仲良くなった。一番の親友といってもいいくらい、私と加奈はいつも一緒だった。
 彼女はよく家に遊びに来ていて、毎回のようにクッキーなどのお菓子を持ってきた。趣味がお菓子作りというだけあって彼女が作ったクッキーは絶品なのだ。私が紅茶を淹れて、二人でティータイムを楽しもうとすると匂いに釣られてか、決まって妹の遊月がやってくる。本当に食い意地が張っているというか、食べ物に対する嗅覚は物凄く冴えたやつで、文字通り、食べ物の匂いを嗅ぎつけてくるのだ。
 私たち三人はくだらないことで笑い合った。何となく、これが幸せなのかなってにやけてしまいそうな自分がいて、それがずっと続けばいいなって思った。いや、ずっと続くものだと思ってた。いつまでも――。




<作者のことば>
久し振りの玖堂匡介×紅林歩夢。「夏のしらべ」に続く第2弾。
自分が普段書かないようなストーリーなので四苦八苦するところもありつつ、でも楽しい作業でもあるのかな? とても繊細な感じを受けたので、そういう文章を心がけたのだけれど、これが結構難しい。でも新鮮で、面白かったです。

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COMMENT

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卍リシャール卍 | URL | 2009/07/22(水) 20:00 [EDIT]
最近よく小説を書いているのを見て安心しました。

スランプは抜けたようですね。

私はまだまだ練り足りないので練り続けますが、そろそろ短編小説に手を出していこうと思ってます。

暗い話題の作品が増えると思いますが、一度読んでいただけたらなと思います。

まだ書いてないんですがね。

匡介 | URL | 2009/07/22(水) 20:27 [EDIT]
>卍リシャール卍さん
最近は過去に書いたものを載せていることが多いんですよ。
創作としては全然何も浮かんで来ないですね(笑) 適当に文章を綴ったりはしてますが、それは文章を書くことを目的としていて創作ではないって感じです。その間、過去の作品などで時間稼ぎしている現状(笑)
そのうち書きたいストーリーが浮かぶだろうとは思ってますけどね。

短篇が上がりましたら見に行かせてもらおうと思います♪
● こんばんは!
鷹の爪痕 | URL | 2009/07/22(水) 21:02 [EDIT]
『久し振りの玖堂匡介×紅林歩夢。「夏のしらべ」に続く第2弾』
と書いてありましたが、
1弾目はまだ読んでませんでした(*_ _)人ゴメンナサイ
紅林歩夢さまとの協作、ということなのでしょうか?
早速、ゆっくりながら読ませていただきたいと思います!

でもとても面白そうな始まりで、先が楽しみです!!
引き込まれる文章力はさすがですね♪

私も昔、
>『みんな笑顔で居られる世界って、素敵じゃないですか? 誰も悲しむことなく、誰も辛いと思わない。私は、そんな世界に成ることを、いつも願っているんです』
と同じ言葉を言ってしまい、「子供だね」と笑われた記憶がよみがえりました(´;ω;`)
もういい年の大人だったんですがねぇ…(遠い目)

匡介 | URL | 2009/07/22(水) 22:32 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
原案・シナリオは紅林歩夢で、自分は再構成と文章を担当しています。
彼は自分で書いても充分巧いのですが、こうして文章の担当をさせてもらってます。
なので普段とは違う雰囲気の小説が楽しめるのではないでしょうか。

確かに青さはありますよね(笑)
でも、そういう気持ちを持っていることは大事だと思います。ちなみにそういう部分って俺が書く小説にはないですね(笑) そういう意味でも、コラボ作品は面白いです。

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