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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/07/01(水)   CATEGORY: 短篇小説
シュヴァルダンの獣(5)
 結局、討伐1日目の成果はなく、奴の姿を認めることは出来なかった。これだけ大勢の人が山に踏み入れば、奴が気付かないはずはない。生まれながら山村で育ったフランチェスコに勘では、山に異変が起こっていることは確かだった。なのに奴が苛立っていないわけがない。そこに大勢が自分のテリトリーに侵入するのだ。何の干渉もないのは異常にすら思えた。
 夜になって、村民たちは町の者の歓迎をした。宴にはフランチェスコも出席しており、討伐隊の一班のリーダーとしては参加しないなど出来ない。しかし本心はとてもそんな気分ではなかった。
 気分の乗らぬまま時間は過ぎ、宴は半ばお開きといった雰囲気になった。フランチェスコはふと妻の姿を探したが、村の女と料理を運んでいたはずが見当たらない。そこで料理を運んできた女に訊いてみたが、そういえば少し前から姿は見ていないという。何だか嫌な予感が背筋をなぜた。


 ***


 彼は久々に女の匂いを嗅ぎ、湧き上がる欲求に耐えられなかった。
 気付かれないようにそっと近付き、女の背後に立った。背筋に感じる嫌な気配に振り向こうとした女より速く、彼は女を押し倒し、そして荒々しく押さえつけた。
 女は恐怖の眼差しで彼を見た。
 彼は高まる喜びに、女の衣服を剥いだ。
 

 そして女は絶叫した。


***


 妻を捜して家に帰ってみたが明かりはついていなかった。
 フランチェスコはアレッシアと家の中に呼びかける。応答はなかった。
 まだ帰っていないのかもしれないと再び宴の席に戻ろうとしたとき、どこかで悲鳴のようなものが聞こえた。
 ――アレッシア?
 フランチェスコは慌てて悲鳴のした2階へと駆け上がった。そしてそこには妻に覆いかぶさる奴の姿を発見した。あまりの不意に、フランチェスコは完全に思考が止まった。その一瞬で、奴は素早くフランチェスコに接近し、殴った。その力は半端なものではなく、フランチェスコはいとも簡単に吹き飛び、壁に躰を殴打した。
 骨が折れたかもしれない。フランチェスコは痛みに躰が動かず、ただ苦渋の表情で奴を睨みつけるしか出来なかった。


 ***


 町の自警団の団長を務めるリューベンは、その耳で確かに悲鳴を聞いた。
 しかしその場にいたみなに尋ねても、誰も悲鳴を聞いていない。彼は不思議に思いながら、用心の意味を込めて仲間2人を連れて辺り見回ることにした。
 こっちの方角だったろうか。自分の耳を信じて、悲鳴の主を探すリューベンは、ある家の裏から何ともよからぬ気配を感じた。全身の毛孔が開くような、恐ろしい気が発せられている。覗いてみると、そこには引きずられる女と女を引きずる巨大な影を見つけた。影は優に3メートルはあるように見え、思わずリューベンはたじろぐ。
 月明かりに照らされ、影の姿が浮かび上がった。
 それは褐色肌の、異様な風貌をした巨人だった。瓢箪のような頭をしていて、巨大な耳飾り(ピアス)をいくつかぶらさげていた。その眼は異常なほどに剥き出し、ギョロリと巨大な魚眼のようだった。巨人は無表情で、魚眼のまなこでリューベンたちを視界に捉えた。
 ――この巨人は!! まさか!!
 かつては傭兵をしていて、大陸中を駆け回ったリューベンは、目の前の巨人に見覚えがあった。それははるか南の民族が信仰する、人喰らいの神の姿だった。
 南方民族が信仰していたその神は、年に3度の捧げものを必要としていた。その捧げものこそが美しい女で、その神は女を喰らってしまうのだという。神が女を喰らう場面を見るのは不徳とされ、神の姿を見たものは少ないが、民族が祭りに使う神の仮面があり、それはまさにリューベンが目前にしているものと同じ顔であった。
 確か人喰らいの神を信仰していた南方民族は数年前に滅んだはずだった。
 もしかすると、贄を捧げる人間がいなくなったことにより、こうやって女を見つけては喰らおうとしているのかもしれない。――ということは、ここ数日の失踪騒ぎは山に棲む魔獣のせいではない!
 リューベンは剣を抜き、人喰らいの神と対峙した。
 神といえど絶対的存在ではない。圧倒的な力を持つが、その真実は上位の精霊といったところか。ならば人に倒せぬ道理はなかった。



<作者のことば>
個人的に主題歌はEvanescenceかO-Tepってイメージ。
もしくはSlipknotでも良い。

けど、静と動の感じが欲しいので前者のどちらかの方が好ましい。

とか、ちょっと思ったよって話。

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COMMENT

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鷹の爪痕 | URL | 2009/07/02(木) 14:33 [EDIT]
はじめまして。鷹の爪痕と申します。
最初に足跡を辿って、こちらにお邪魔してから毎日のように拝見しておりました。

今は少しずつ昔からの小説を読ませて頂いております。
ホラーの方は、同じ現象を実際に体験しているのもあって、興味深く読んでおります。

とても文章がお上手で、色々参考にさせていただいてます(・∀・)
初めてのコメントで失礼だとも思ったのですが、リンク、貼らせて頂いてもよろしいでしょうか?
ご了承いただけてから対応したいと思いますので、何卒、宜しくお願い致しますm(__)m

これからも楽しみにしていますので、無理をしない程度に頑張って下さい!!

それでは長々と失礼しました。

匡介 | URL | 2009/07/02(木) 15:42 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
初めまして。凄いお名前ですよね(笑)
しかし毎日来られていたとは知りませんでした。ありがとうございます。

昔のやつって何か恥ずかしい気もしますが、参考になりますか?
というか実体験したのってどれだろう? とか気になってしまいます(笑)

で、リンクの件ですが全然問題ないですよ。よろしくお願いします。
構わなければこちらからもそうさせてもらおうかと思いますがどうでしょう?

是非是非、またのお越しを♪

鷹の爪痕 | URL | 2009/07/02(木) 17:41 [EDIT]
早速のありがたいお返事、ありがとうございますっ!!
これで訪問履歴を遡ってみなくても済みます(笑)
速攻、貼らせて頂いちゃいました(≧∇≦)b

あと、リンクの件ですが、もうバンバン貼っちゃって下さい、というか貼ってくださるなんて嬉しい限りです♪

名前、凄いですか?ガビΣ(゚ω゚||)ーン
「羽根の~」は別邸ブログで、本邸の方はとぼけた名前だったので、ちと、シャキーンという名前にしてみたかったんです(ノω≦`)ノ

「羽根の~」の方には本邸のリンクを貼ってないのですが、そっちは「実話怪談」系に魅入られた方達とのやり取りが多いですね。
実際、本や携帯小説で御活躍されている方ともよくしていただいております。
「自動販売機」などは、「うんうん、あるね~」と頷く感じですね。

幅の広いお話を書かれている匡介さまは「凄いなぁ」と思って見ておりました。
これからもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m

匡介 | URL | 2009/07/03(金) 01:07 [EDIT]
>鷹の爪痕さん
毎回そんな手間をっっ!!? もっと早くおっしゃってくださればいいものを!!
そこまでして来て頂いてありがとうございます。今後よろしくお願いしますね。

てか、凄い名前ですよ!
「鷹」でも「鷹の爪」でもなく、「鷹の爪痕」ですからね(笑) 自分には思いつきそうにありません(笑)

――って、あるんですか!!? かなりディープな世界の住人なんですね!
そういう方にも読まれていると思うと今後のハードル上がります。とても書きにくいです(笑)
自分は一応ジャンルレスに書いていきたいなぁ、っていうのはあるので幅広く書いていこうとは思っていますが、やはり手の出しにくいジャンルはありますね。書きたいけど、そこまでの実力がなかったり、あるいは普段はあまり手を出さないジャンルだったり。今後もさらに広げていければ…!とは思っているので、応援よろしくお願いしますね。まだまだ未熟者です。なかなか実力というものは上がりません。

またのお越しをお待ちしています。
● この欄ってよく忘れるよねっ
兎和 | URL | 2009/07/03(金) 01:42 [EDIT]
場面が二転、三転するシーンは読んでて何だかよくわからなくなってきた!って感じに、私の場合は書いてる自分もよくなってしまうんですけど、すんなり読めましたっ。
やや、すんなりというか効果的でスゴイなぁと(笑)
それに緊迫感があって面白かったですよっ。

タイトル話のお返しをしようとして、あ、自分もこうすればよかったって思ったのはナイショです(笑)

匡介 | URL | 2009/07/03(金) 02:54 [EDIT]
>兎和さん
場面が次々と切り替わることが多いのですが、そこを出来るだけ違和感なく、というのはちょっとだけ意識しています。最近掴んできたポイントは強調する部分を作るってことかも?
ちなみに今回は<野獣>の視点を強めに、インパクトあるようにしているつもりです。<野獣>視点のシーンはシンプルな文章を心がけていますねー。そうすると雰囲気付けにも効果は大きいと思っています。
あと<野獣>の野性味、本能的な部分を表現するためにもシンプルにしてるってのはありますね。

「緊迫感」はもしかしたらこの作品で一番意識かつ重要視している部分かもしれないので嬉しいです♪
重みのある空気というのを表現したい!というのはかなりありますね~。

タイトル、…そうですね(笑)
でも本当はサブタイトル好きなタイプなので、毎話タイトルあるのも良いと思いますよ!

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