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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/06/25(木)   CATEGORY: 短篇小説
シュヴァルダンの獣(2)
 どれくらい歩いただろうか。朝に発って、もう夕日が見えてきていた。山間のこの道は夕日が沈み始めると一気に暗くなる。そろそろどこか適当なところを見つけて夜に備えなくてはいけないな、とフランチェスコは思った。
「ダリオ。もう暗くなる。今晩休むところを決めよう」
「ああ、そうだな。みんなキャンプの準備だ」
 火を焚いた。動物は火を恐れて近付きはしなくなる。――しかし奴は?
 フランチェスコは奴が火など恐れないような気がした。むしろこちらの居場所を教えて、自らを危険に晒しているのではないだろうか。
 食事を終え、夜の静けさが響き渡ると、一同全員がひそかに息を呑んだ。
「なあ、誰か見張り番をした方がよくないか」
「確かに。じゃあ、エットレとフランク。今晩は2人で交代に見張りをしていてくれないか」
 ダリオが2人を見遣る。
「わかった。フランク、俺が先にやるから寝てろよ」
「ああ、2時間したら起こしてくれ」
「はいよ」
 再びしじまが訪れ、フランチェスコは目を瞑った。
 町まで、あと何日で着くだろうか。急げばあさってには着くかもしれない。もし馬を借りられれば、1週間もしないうちに帰ることが出来る。
 急に、妻アレッシアに会いたくなった。自分ではあんなことを言っておいて、結局心細いのは俺の方か。――フランチェスコは小さく苦笑した。

 シン、と山が静まり返るのを感じた。

 先ほどまでも静寂が辺りを包んではいたが、それでも山に動物の気配を感じていた。聞こえはしないが、どこか息衝いているのを感じ取っていたのだ。
 それが急に消えた。
 ――奴が現れたのか。
 フランチェスコは祈りを捧げた。また妻に会いたい。それまではどうか無事でいさせてくれ。
「気付いたか?」ダリオがひっそりと声をかけてきた。
「ああ、急に静かになったな」
「…嫌な予感がする」
「エットレ? どうだ、何か見えるか?」
 いち早く異変に気付いて闇を見つめていたエットレだが、辺りに何の気配も感じられなかった。
「何も。恐ろしいくらい静かだ」
「…嵐の前の静けさ、か」
 ガサ。何かが動く音がした。
 一同の緊張が一瞬で限界まで高まる。フランチェスコはうまく息すら出来ていない。
 どこからか獣臭すら漂ってくるようだった。
「…どこだ?」
 エットレが一歩踏み出そうとした瞬間――、闇夜の中から巨大な影が、疾風のような速さでその場を駆け抜けた。
「エットレ――!!」
 フランチェスコがその名を呼び終えるより速く、それは再び闇夜の中へと溶け込んでしまった。
「奴だ。ダリオ、奴だよ」
「ああ、わかってる…」
「エットレが攫われたぞ!」
「わかってる。俺も見たよ」
 ダリオの見たというのは正確ではなかった。実際には速過ぎて何も見えてはいなかった。
 その場にいた者は硬直して動けなかった。立ち込める殺気に似た獣臭に、一同は一寸の身動きすら取れない。金縛りにでもあっているようだった。まるで魔物と対峙しているかのようだ。
「奴は……魔獣だ」フランクが呟いた。
「静かにしろ!」
 ダリオはパニックに陥っているフランクを叱咤した。おそらくこの場にいる全員が冷静さを欠いているのだろう。ダリオ自身もそのせいか、つい大声になってしまっていた。
「――ダリオ」
 静寂にすら掻き消されてしまいそうなか細い声で、フランチェスコがダリオを呼んだ。
「どうした?」
「……奴だ」
 ダリオが気付いてフランチェスコの視線を辿ると、嫌な汗が体中から噴き出すのを感じた。
 肩から胴にかけて引き裂かれたエットレが、闇の中にうっすらと浮かんでいた。




<作者のことば>
今回はどこで区切るかちょっと悩んだ。
シーンにスピード感を持たせたかったので、この闘いは一回で載せたくもあった。

でも長い文章を一度に載せるのは嫌なので(自分自身、ネットで長い文章を読むのが疲れるから)、最も適当だと思われる部分で区切ることにした。

どれくらいまでの文章なら多過ぎず疲れないのかなぁ。
短いって言われたら確かに短いって感じなんだけど、長いっていうよりはいいと思っているんだけどね。

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caramel* | URL | 2009/07/02(木) 23:27 [EDIT]
スピード感ありましたよ!
状況もよくわかり よかったと
思いました。
会話の部分もいいですね。

匡介 | URL | 2009/07/03(金) 01:15 [EDIT]
>caramel*さん
そうですか? だったなら嬉しいです♪
ここで区切ったことによって、スピード感や緊張感などまでも途切れてしまわないかは心配です。
イメージとしてはとても張り詰めた空気の中でのシーンなので。

ちなみに次は苦手なアクションシーンです。
もっと上手く描写出来たのでは?と自分の描写力にガッカリしてますが、今まで書いてきた中では比較的良い気もしています。お楽しみに(笑)

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