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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/06/19(金)   CATEGORY: 短篇小説
コーヒーにまつわる3つの短篇 2/③
 ガコン。自動販売機が吐き出した缶コーヒーを手に取って、そこを去ろうとしたら俺が押したボタンが赤く点(とも)っていることに気がついた。
「最後の1本だったか」
 ラッキーだったな。そう思っているとこちら近付いてくる人影を感じた。きっとこの自動販売機に用があるのだろうと俺は再び去ろうとする。
「あっれー? 出てこない!」
 その声につい振り返ってしまった。
 どうやらボタンを押したはずの商品が出てこなかったらしい。
「あ…、売り切れだった」
 彼女の視線の先に俺の視線も合わせると、そこは俺が最後の1本を買った缶コーヒーのボタンだった。
「あー、残念」
 彼女は缶コーヒーを諦め、代わりに何を飲むか悩んでいるようだった。
「あの…」
 俺はガラにもなく声をかけた。
「…?」彼女の頭上には間違いなくエクスクラメーションマークが浮かんでいる。「なんですか?」
 俺はどうしようかともう一度悩んだ。しかしもう声をかけてしまったのだし、と意を決した。
「よかったらこれあげますよ」
 彼女が俺の持つ缶コーヒーを見つめた。
「これ飲みたかったんですよね? 俺が最後の1本を買っちゃったみたいで」
 当たり前の反応だと思うが、彼女は遠慮して俺の親切を断った。
「いいんです。そんなに飲みたかったわけでもないし」
 そう言って、多少強引に彼女に缶コーヒーを渡した。
 彼女は困ったような顔をしていたが、俺は構わずその場を去った。

 歩いていると大学の後輩に会った。今から借りてきた映画をみんなで観るのだという。その上映会に俺も誘われたが、後輩の集まる場に、俺のような先輩がいたら周りも気を遣うだろうと思って断った。
「吉川先輩もいますよ」
 吉川とは俺と同期で、何を考えているのかわからないマイペースな男だ。
 俺はそうかとだけ言って、後輩と一緒に歩いた。後輩は両手にビニール袋を提げていて、中身は飲み物のようなのだがあまりに重そうだったので片方だけ持ってやった。

 後輩の住むアパートに到着した。俺は後輩の部屋まで飲み物を運ぶ。特に用もないので、もう帰ろうとしていたところだった。
「えっ? 吉川先輩帰っちゃった?」
 その声につい足を止めた。
「仕方がないなぁ。いつも自由なんだから」
 たしかに。吉川の自由さといったら、他に類を見ない。
「せっかく吉川先輩の分のコーヒーも買ってきたのに。この中でコーヒー飲むのあの人しかいないんだよなぁ」
 後輩は俺を見た。
「あ、もしかして先輩ってコーヒー飲みます?」
「ああ、まあ普通程度には飲むかな」
「だったらこれ貰っちゃってください。俺に付き合ってくれたお礼も兼ねて」
 渡されたのは自動販売機で俺が買ったのと同じ缶コーヒーだった。
「じゃあ、もらっとくよ」
 こういう偶然もあるもんだ。俺はつい笑ってしまった。



<作者のことば>
2本目。
前回言ったようにタイトルとは裏腹にラストのはまだ出来ていない。

これから考えようと思うのだが、体調が思わしくないなぁ。

頭痛がする。うう…。

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Mr.ホリック | URL | 2009/06/20(土) 21:16 [EDIT]
人形遣いミルト・アートレットの旅日記のMr.ホリックです。今まで就職活動、その他もろもろの事情で忙しく更新もままならない状態です。なのでこの度ブログを閉鎖いたします。今までありがとうごいざいました。

萬紅堂 | URL | 2009/06/22(月) 16:10 [EDIT]
>Mr.ホリックさん
どうやら大変なようですね。
仕方ないこととはいえ、それでも休止ではなく閉鎖というのは残念です。

わざわざご報告ありがとうございました。
もし今後また復帰するようなことがありましたらその際はお教え願えると嬉しいです。

caramel* | URL | 2009/06/29(月) 21:35 [EDIT]
こんばんは
人のいいとても優しい彼ですね!
親切なことをして・・・また自分のところに
戻ってきたのですね。同じ缶コーヒー
だったところが みそですね。

匡介 | URL | 2009/06/29(月) 23:02 [EDIT]
>caramel*さん
コメントありがとうございます。
「情けは人の為ならず」といったところでしょうか。
良い行いは自分に戻ってくるというそんな感じの話ですね。

是非、またのお越しを♪

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