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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/06/14(日)   CATEGORY: 短篇小説
TIME(8)
 ごくり。アルコールが体を巡る。智生は一気に缶に入った半分のビールを飲み、それをテーブルに置いた。そして大きく溜め息を吐き、あの藤阪今日子に思いを馳せる。
「付き合ってる人に似てる、か」最初に会ったときの言葉を思い出していた。「そりゃそうだよな。俺の親父なんだから」
 藤阪今日子。それは幼い頃に自分のもとを去った懐かしい母の名だった。旧姓など聞くまで思い出せもしなかった。母親のことは記憶にほとんど残っていないし、母方の祖父母は会ったことがあるのかどうかさえわからない。
 母はどうして家を出ていったのか。どうして父を、そして自分を置いて行ってしまったのだろうか。それは智生にとって幼少期からずっと疑問であり、心にしこりとなって残っていることでもあった。今はもう昔のように母がいなくなったことを引きずってはいないが、それが原因で父親とは仲違いをしてしまっていたともいえる。誰にぶつけたらいいのいい悲しみと憤りを、幼い智生はすべて父、雄一郎にぶつけてしまっていた。父の不甲斐なさを責めた。そこから少しずつ、父との軋轢は拡がり、結局は父の死に目にも会わないほどの関係にまで発展していしまっていた。それほどまでに、智生にとって母、今日子の存在は心の奥深くで根を張っているような、大きな存在なのである。若き母に出会って、智生が動揺してしまうのも無理のない話だった。

 美和はいなくなったのは父のせいだと思っている自分がいる。それは責任の転嫁以外の何物でもないのだが、智生にはそういう思いが拭いきれていない。母がどこかへ行ってしまったように、美和もどこかへ行ってしまった。つい自分と父を重ね合わせてしまう。自分が許せない存在のはずの父と自分は同じなのかという悔しさが智生に心には沈殿していた。この血がすべての根源か――。
 マグカップに入ったインスタントのコーヒーを飲み干し、時計を見た。編集長には休めと言われているが、いつまでもそうしているわけにもいかない。ここ数日のタイムトリップの影響なのか体は本調子ではなかったが、智生は仕事に出ようと部屋を出た。
 時間移動――タイムトリップは何が原因で起きていることなのか。もしかしたら精神的な病であるだけかもしれないが、もし本当に自分が過去へ飛んでいたのだと考えると、それはコントロールできることなのだろうか。自分の意思で時間を移動することさえできれば――。
 母が、美和が、いなくなった理由を知り得ることができるだろうか。



<作者のことば>
久し振りなのに短いです。本当、仕方ない野郎です。
もうほとんどTIMEに向ける熱意がなくなってしまっていて、全然進みません。挫折しそう。

だけど、過去に「神狼」という連載を挫折して以来、途中放棄はしないと誓ったので頑張りまス。
「神狼」は自分としては細かく設定を決めたのにも関わらず、そのほとんどが使われないまま頓挫してしまったという苦い過去が。…まだ設定資料は手元に残っているので、いずれリヴェンジしたいと思いつつも、どうなることやら。あるいは別の話にキャラクターだけ持っていくという線もあるけれど、今のところは何もかも未定です。
1本の話をあまり長く書かない玖堂としてはかなりの長篇計画だったんですけどね。どうも時間かけて書くのに向いてないようで。

まあ、そんなことは置いといて。
次回は今回よりは長く書けるよう、頑張り、たい、です。

そして早く次の話にいきたいでス。
何かしばらく書いてなかったらすごく文章が(以前よりさらに)下手になったっぽくて焦っているのだけれど、それでも次の構想はすでにあるので。どうにかそこに持っていきたい。

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| | 2009/11/30(月) 00:41 [EDIT]
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匡介 | URL | 2009/11/30(月) 02:22 [EDIT]
>シークレットさん
こんばんは。
実はこれ未完なんです。まだ諦めたわけではありませんが、再開は未定。
そんなわけで自分の中では「TIME」を思い出すだけで気が重く。。ややトラウマです(苦笑)

まァ こうやって読んでくれる人もいるみたいだし、近いうちに続きを書こうかな?

気長~~に待って頂けたら幸いです♪

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