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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/05/24(日)   CATEGORY: 雑記
読書のこと。
たまには読んだ本のことを書いてみようと思う。




「ネクロダイバー 潜死能力者」
死に潜ることが出来る能力を持つ人間が、主を失い暴走してしまっている守護蟲と闘う話。
守護蟲と呼ばれるのは、常人には見えないが人には必ず付いていて、その人間の行動や想いを記録していく存在。通常、宿主の死後は自然消滅するものだのだが、生前に宿主が怨恨などの強い念を残して死んでいった場合、稀に守護蟲は宿主の死後も残り、暴走して宿主亡きあともネクロダイバーだけが理解できる特殊な文字で記録を続けてしまう――という、説明しようとするとイマイチ要領の得ないものになってしまう。
ちょっと概念的理解が難しかったり、スムーズに呑み込めない箇所がいくつかあった。戦闘シーンはもう少し工夫があってもいいような気がしたけれど、コーヒー好きのクラヴィクルやアニメ(マンガ)好きのコスプレ・などユニークなキャラクターたちがよかった。若干の物足りなさがあるのは、ケータイ配信用に書かれていたものだからだろうか? どうしてもケータイで読むことを想定すると、文章が多少ライトになってしまうのは仕方ないのだろうなぁ。でないと読みにくくなってしまうからね。
それでも深い内容もあって、考えさせられるところもあった。
あの終わり方は、もしかしたら続編が出るのかな? 角川ホラーは続編出る率が高い(萬紅堂調べ)。
後日、授業で主人公たちが武器として使っている「黒御鬘」「爪櫛」が古事記に由来することを知った。ちょうど黄泉の国のところで、ああ、なるほどって感じ。

「聞かなかった場所」
タイトルからはちょっとストーリーの想像が難しいけれど、いわゆるサスペンス。
出張中に突然、妻が死んだという訃報を受け取った主人公・浅井が、あとになって妻の死に不審を持って独自の調査を始める。そもそも妻が死んだのは、生前妻の口からは聞いたことのない<場所>だった――。
あまり内容をバラさず紹介するとこんな感じ? 前半は、妻はどうしてその場所にいたのか――という疑問から始まる推理小説のような進行で、ミステリー好きには面白く読めると思う。しかし後半は打って変わって追う側から追われる側に、しかし主人公の推理調の思考は相変わらず健在で面白い。何より人間の心理的描写にこだわっているように思えるのは、やはり松本清張という感じ(といっても清張は2冊目なのだけれど)。
250Pにも満たない量で、手軽に読み始めやすくていい。だけど厚さの割には内容がぎっしり詰まっているのはさすが松本清張。以前読んだ「神と野獣の日」でも同じ感想だったのだけれど、読み応えはある。ページ数が多くないせいもあって、清張の作品はもっと読んでみたくなるね。今度はある短編集を狙っているのだけれど、ブックオフに良品質な状態のが見当たらなくて残念。ドラマ化などで、よく知られている作品以外でも充分に面白いから探し応えもあって良い。やはり長く愛され続けているだけあるなぁ。

「絶対、最強の恋のうた」
中村 航さんは2冊目。以前は「100回泣くこと」を読んだことがあるのだけれど、ちょっと期待が大き過ぎた感もある。結構な期待を持って読み始めてしまったからね。でも最初に読んだのは「突き抜けろ」で、それは「I LOVE YOU」(祥伝社)というアンソロジーに収録されている。
で、この「絶対、最強の恋のうた」を読んでわかったのが、あの「突き抜けろ」はこの小説の2話目だった。最初はデジャヴかと思ったね。まあ、面白かったけど。
全体通しても「突き抜けろ」が好きかな。

「コーリング 闇からの声」
柳原 慧さん初。表紙と帯に惹かれて買ったのだけれど(本版ジャケ買い)、予想を超えて面白かった。優れた作品は装丁すらも魅力的という個人的理念(なんだそりゃ?)に基づいた結果、大当たりだった。
そもそも妖しげなタイトルがすでに良い。内容の核たるものを構成しているダークな部分を非情に醸し出している。そして「特殊清掃員(つまりは死体などを片付けたりもする)」で、“霊を視ることが出来る”という主人公の設定がもはや俺のツボを突いている。蒼然とするような死体、あるいは展開に対して登場人物が良い味を出していて、ダークな内容とポップなキャラクターが絶妙なバランスを取っているのも良い(ホラー出身らしく、だからか他のミステリー作家にはないダークさがとても良い)。主人公が幻視(霊視)するという特殊な能力を持っているにも関わらず、それに依存し過ぎない点も好きだなぁ。それに医学的あるいはユングを代表に取り扱った精神的・心理的分野の扱いが巧い。好きなタイプのミステリーだ。
病院のところはちょっとリアリティに欠け過ぎて個人的には若干入り込み切れなかったけれど、基本的にはその巧みな文章・筆力で見事にのめり込まされたと思う。他の作品も読んでみたい。
ちなみにカバーイラストは山本タカトさん。山本さん特有のグロテスクな美が凄く良い。実は山本さん出身が同じだったりするんだよね。

「月光」
誉田さんは「ストロベリー・ナイト」来2冊目。ライトな文章が読みやすくて、厚さの割には結構進むのが誉田さん。
この「月光」は交通事故に巻き込まれた姉の死に疑問を抱いた妹が、姉のいた高校に進学し、そして姉の死の真相を解明していくという内容。なんていうか謎解かれていく系。ミステリーかもしれないけれど、推理モノではない。いくつかの登場人物の一人称、多視点で、読者に事実がわかっていくという感じ。推理モノだと思った俺としては少し足りなかったかも。
途中で古処さんの「フラグメント」を連想した。学校という関係で結ばれた登場人物たち、死んだ人間の真相を追い求める主人公。それに解き明かされる真実にも類似点が見られる。もし比較してしまうとしたら、俺は「フラグメント」の方が完成度が高いと思うけれどね。

「玩具修理者」
小林泰三さん、初。少し前に「臓物大展覧会」が平積みされているのを見て、小林さんに興味を持った。そのあと、たまたまブックオフで「玩具修理者」があったので購入。
衝撃。妖しげな雰囲気、グロテスクな美しさ、引き込まれるようなファンタジイ性。ホラーなのか、ファンタジイなのか、SFなのか。とにかく面白かった。表題作に加え収録されている「酔歩する男」では、その豊富な知識量が窺える。理系の人なのかな? 理系的知識に富んでいる。
読後も不思議な余韻に浸らせてもらった。

「観覧車」
柴田よしき、初。最近は初めて読む作家が多い。ちなみにこれは「読んで」と言われ借りたもの。
短篇の連作だと思わず読んで、表題作「観覧車」のあっさりした幕切れに、戸惑った。ミステリーとしては物足りなさを感じたけれど、心の機微というか、何というか、そんなものの表現が他とは違う気がうする。特に女性の心情、弱さだとか強さだとか、強い女性だからこそ弱さが見えたり、弱い女性だからこそ強さが見えたり、そんなイメージ。どちらとも取れるような、でもやっぱり強い。詰まるところ、女性は何事も乗り切ってしまう強さがあるのかもしれないなぁ。心中では弱音吐いても、それでも乗り切るような、そんなタフさを見せつけられた。…しかしあの終わり方はすっきりしないぜ! 気になるぜ!
ちなみに「柴田よしきって男みたいだよね。最初、男だと思ってた」と言われたけれど、俺は何故か最初から女の人だと思っていた。何故だろう? 「よしき」ってひらがななのから、女性の柔らかさ的な印象を受け取ったのだろうか。言われてみると男みたいだな、と思う。しかし女性作家って、意外と男みたいな名前使ってる人が多い。それは本名なのか、意図するものなのかはわからないけれど。桜庭一樹もずっと男だと思っていた。

「美月の残香」
上田早夕里さんは「獣舟・魚舟」があまりに衝撃的な面白さで、もっと読みたいと思っていた(ちなみにこの「獣舟・魚舟」の解説を読んで、俺はアンソロジーである『異形コレクション』に出ている作家さんが好みなのかもしれないと思った。この時期、何度か解説で『異形コレクション』の言葉を読み、気付いた。しかしどうやら『異形コレクション』に収録されている短篇は、作家の短編集に収録されていたりしているので手が出しにくい。新しい作家には出会いたいが、出会ってしまったら結局それが入った短編集を手にすることになりそうだ。機会があったら是非借りて読んでみたいけれどね)。
最初は恋愛モノなのだと思って、あれ?って思ってしまったが、次第にファンタジイ性が増してきて、というかホラー? いやサスペンス? とかなかなかジャンル分けしにくい感じなのだけれど(それはジャンルに疎いだけかもしれないが)、俺の持っている上田さんの作品のイメージとはちょっと違った内容で、それでもやっぱり面白くて、上田さんは進化しているなって思う。もっとジャンルレスに活躍できる作家さんなのかもしれない。是非オススメしたい作家さん。

「パーフェクト・プラン」
知ってはいたものの、最近までそこまで惹かれずにいた。けれど作者が先日読んだ「コーリング 闇からの声」の柳原さんだと知ると、俄然読みたくなってしまった。
「身代金ゼロ!せしめる金は5億円!」という、ふとしたことから始まった誘拐劇。誘拐犯であるEnigmaのメンバーは合法的に子供を誘拐し、そして大金を頂こうとするのだが、話が進むにつれ事態はあらぬ方向に…。『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作であるが、あまり『このミス』大賞を個人的には重視していない。これも、一応受賞作だし何より柳原さんだからとかなりの期待を持って挑んだのだけれど、期待を超えられたかなー? 微妙なところ。あまりに多くのキャラクターの多視点で進むのが混乱させられた感もある。けれど後半になって、それぞれのストーリーが重なり始めたときのスピード感は引き込まれるものがあった。
「コーリング 闇からの声」でもキー・ポイントとなる「美容整形」、そして「虐待」や「風俗」、「老人介護」あるいは「インターネット」とした社会的問題を多く取り扱うことで、現代社会の危うさを訴えているように思える。そしてその中心には、やはり人間。決して幸福ではない、むしろ不幸ですらあるキャラクターたちが、自らの幸せを獲得しようともがいているように思えた。その中でも「家族/家庭」がクローズアップされている。
これは犯罪小説であって、家族の、家庭の、崩壊と再生の物語でもあるのかもしれない。この小説にはいくつもの絶望が散りばめられているが、同様に希望も散りばめられている。

「人獣細工」
小林泰三の魅力に憑かれて早くも2冊目。
おお! 表題作「人獣細工」のグロテスクさ! 「吸血狩り」の妄想感! 「本」の錯綜する感覚! まことに禍々しいほどの短篇集だった。特に「本」は現実と非現実の区別、あるいは境界を喪失させようとしているのかとすら思えるほどの悪意を感じる。いかにも小林泰三らしいと、まだ2冊目だというのに思ってしまった。小林泰三の作品には狂気が凝縮されている。
解説に先日読んだ「ネクロダイバー」の牧野修の名が出てきた。解説中の文章に。

「霧が晴れた時」
現在読書中。ずっと読みたかった本。初・小松左京。
短篇集で、だいたい平均20ページくらいでそれぞれ本当に短いが、何と15篇も収録されている。多いね。
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