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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/05/08(金)   CATEGORY: 短篇小説
TIME(5)
 夢を見た。祖父と会う夢だった。
 智生は知らない場所にいて、目の前には初老の男が一人立っていた。
「わしが幾雄だよ」
 男はそう言った。
「やあ、じいちゃん」
 一度も会ったことはない、それでも智生は自分の祖父を知っているようだ。
 確かに、写真を何度か見たことはある。優しい面持ちをした、人だった。
「お前は父さんのことが嫌いか?」
 父さんとは、きっと雄一郎のことだろう。
「ああ。あいつがしっかりしてなかったせいで、母さんは出て行った。何があったか知らないが、親父が愛想を尽かされなかったら俺はもっと普通の人生を送っていたと思う」
「普通ってどんなかな?」幾雄は笑っているようだった。「彼女に愛想を尽かされない人生かの?」
「俺は、愛想を尽かされるようなことはしてない」智生の声に怒気が籠もる。「俺は帰ったら一人だった。帰りを迎えてくれる人もいなくて、飯時には自分で料理しなきゃならなかった。学校であったことを話す人もいなくて、父兄参観のときには誰も来てくれなかった。運動会のときなんかも親父は来ないことが多かったし、いつも独りだった」
「そうじゃな。確かにお前は母親がいなくて寂しい思いをたくさんしたのう。わしが生きていたらもう少し変えられたかもしれん」
 言っている意味がわからなかった。
「じいちゃんが生きてたって、何も変わらなかったよ」自然と溜め息が出た。「まあ、ばあちゃんの相手くらいはして欲しかったけど」
 智生は、父親同様に祖母にもあまり良い印象を抱いていない。祖母は何かしらと母親の悪口を言う人だった。雄一郎はどうしてあんな人と結婚したのかしら。もっとしっかりした母親だったら、こうやって智生ちゃんが苦労することもなかったのにねぇ。同じようなことを何度も何度も聞かされた。智生は、母親の悪口を言う祖母がどうしても好きになれなかった。そんなことを思い出す。
「そうだなあ。あれはお前の母親のことをあまり好くは思っていなかったようだ」申し訳なさそうな、哀しい顔をしている。「今日子さんには悪いことをした」
 久し振りに聞く、母の名。もう、何十年振りだろうか。
「ばあちゃんは何で、あんなに母さんのことを嫌ってたのかな?」
「それは、いずれわかる」幾雄は優しい笑顔を見せた。「お前の顔を見ることが出来てよかった。でも、とても疲れた顔をしている。少し、休んだらどうだ?」
 智生は言われるがままにベッドに横たわると、急に眠気が襲ってきた。
「元気でな」
 幾雄が微笑んでいるのが見えた。もう目を開けていられなくなって、智生はまぶたを下ろす。
気付けば、祖父の気配はなくなっていた。


 ***


 変な夢だな、と思った。
 智生は祖父のことを知らない。だけど生前の祖父は、ああいう人だった気がする。きっと、優しく笑う人だっただろう。写真の祖父もそのように笑っていたのではなかっただろうか。
 時計の針は昼過ぎを示していた。
 仕事は休みだった。正確には「休め」と社長に言われている。お前は少し頑張り過ぎてたからな、とも。少人数の小さな出版社だから一人の欠員も大きいはずなのだが、智生はその言葉にしたがった。それくらい、疲れてもいた。
 今日はどうしよう。とりあえず外に出てみようか。久し振りにそこらをぶらつくのも悪くない。
 智生は着替えて、ナイキのスニーカーを履き、ドアを開けた。



<作者のことば>
ついに行く先がわからなくなる。
ちゃんと終われるのか心配になり始めた今日この頃。

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COMMENT

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卍リシャール卍 | URL | 2009/05/09(土) 19:54 [EDIT]
読ませてもらいました。

まずは誤字の報告を・・・
5話のじいちゃんの言葉・・・「彼女に愛想と尽かされない人生かの?」

「愛想を」の間違いだと思います。


内容は正直よくわからなかったです、すいません・・・

時間的な感覚がなくて、各話の時間的ずれがよくわからなかったです。(でも題名がTIMEなのでそれが狙いなのかもしれませんねw)

話も意味深過ぎてまだ内容が把握できていないというほうが正しいかもしれません。

でも書き方というんでしょうか?文章構成力はかなり高いと感じました。私の文章がへたくそに思えてきました。

これからも自信を持って書いていってくださいね。

匡介 | URL | 2009/05/09(土) 20:07 [EDIT]
>卍リシャール卍さん
あ、本当だ。誤字訂正しておきました(どうやったらそこの「を」と「と」を間違えるのか…)。
時間的なものは、もう少しゆっくり書けばいいのかもしれないけれど、結構ペース飛ばして書いてるんですよね。思ったより長くなりそうなのを防ごうと(笑) そこまで長く書くほどのものでもねえな、と(笑)
内容はしばらくよくわからないまま進んでいくと思います。全てが繋がるのはほとんど最後の方なので。

もし最後までお付き合い願えるなら嬉しい限りです。
またのお越しを。コメント大歓迎ですので(笑)

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