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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/19(木)   CATEGORY: 短篇小説
ウィザード(下)
 ――Tokyo・第7区――

 そこも廃墟と瓦礫に囲まれた場所だった。
 第7区は少年たちの溜まり場として有名だ。強盗や恐喝など、いわゆる不良というカテゴリーに当て嵌められるような少年ばかりが集う場所が第7区なのだ。

 リュウスケはハーレーから降りて、瓦礫に囲まれた中央広場の上に立った。
 するとそれを俊敏にも察知した16、7の少年たちがどこからともなく現れ、あっという間にリュウスケの周りを囲みこんだ。
「オッサン、何しに来た?」
 少年のうちのひとりが言った。
「お前ら10代(ガキ)から見たら俺ら20代はもうオッサンなのか?」
 ヤル気なのか? と少年数人が威嚇的な殺気を浮き立たせている。
 それを感じてリュウスケは溜め息を吐いた。
「お前らは血の気が多いな、ホント。
俺はコウキってヤツに会いに来ただけだ」
「コウキ? お前、コウキに何か用か?」
「用は本人に直接言う」
「オッサン、俺らがガキだからってナメちゃいけねェよ?」
「わかったからコウキってヤツに会わせろ」
「とりあえず痛い目見とくか?」
 少年2、3人がリュウスケに飛びかかる!
リュウスケはそれを避けて、少年ひとりを掴まえた。
「死にたくないなら答えろ。コウキはどこにいる?」
 リュウスケの周りでは鉄パイプなどで武装した少年数人が殺気立っている。
「仲間が殺されたくなければ教えろ!」
 リュスウケの言葉を無視して少年たちが突っ込んでいった。
 鉄パイプが振られ、それをリュウスケは右腕で受けた。鈍い痛みが奔ったが、骨まではいっていないようだ。
「ガァァァァアア!!」
 鋭い咆哮とともにリュウスケは大きく口を開けた。
 その口からは一見「泡」のようなものが次々と発せられた。まるで人間シャボン玉発生装置でもあるかのごとくリュウスケの口からは「泡」が放出される。
「なんだァ?」
 少年たちは戸惑う。この「泡」はなんなんだ? と。
「泡」のひとつがひとりの少年の左足をかすめた。すると「泡」は弾ける。それと同時に少年の太ももの肉が抉れた。
「うわァァァァアア!!」
 左足が血まみれになった少年は叫んだ。
 彼の仲間たちもそれを見て絶句している。
「殺されたくないならコウキとやらに会わせろ」
 少年のひとりが恐るおそる問う。
「お前、ウィザードか?」
「だったらなんだ?」
「い、いや。おい、誰かコウキを呼んでこい」
 彼がそう言うと、少年のひとりがどこかへと走っていった。

***

 しばらくの間、リュウスケと少年たちは膠着(こうちゃく)を保っていた。
 なかなか現れないコウキにリュウスケは苛立ちすら感じていて、小さくチッと舌打ちをした。
「まだかよ…」
 ひとりの少年が呟いた。
 もちろんリュウスケも同じ気持ちだ。彼としてはさっさと用件を済ませてこんなところからオサラバしたいのだから。

 膠着状態が続く中、ひとつの影が疾走してきた。
 それはあっという間に距離を詰め、リュウスケを己の間合いの中に入れた。
「コウキ!」
 誰かがそう叫ぶ。その影の本人こそがコウキであったのだ。
「チッ」
 リュウスケは再び舌打ちをした。
 彼は人質にとっていた少年を突き飛ばし、コウキに当てた。しかしコウキはそれを難なくかわす。
 コウキが一瞬地面に触れると、コンクリートで出来た地面はどんどんと隆起していく。そして隆起した部分は円錐上にカタチを成していく。
 その円錐がリュウスケに向かって伸びたとき、彼は久し振りに己の危機を感じた。コウキが地面に触れてから円錐に隆起するまでの時間はほんのコンマ何秒の出来事で、彼の恐るべき瞬発力を持ってしてどうにか避けることが出来たと言えよう。
「それがお前の魔法か?」
 コウキを間合いの外に置いてリュウスケが問うた。
「アンタの魔法はどんなんだい?」
 そう言うとコウキは素早くリュウスケとの距離を詰める。彼が地面に触れるとそこはたちまち隆起して円錐が生えた。リュウスケはその円錐の鋭い先に捉われぬよう、全力で回避する。
「アブネェなァ」
「アンタ、逃げてばっかかい?」
 コウキはリュウスケに接近しながらどんどんと円錐を作っていく。
リュウスケはそれを避けながら、コウキとの距離を一定に保とうとした。
「アンタの魔法も見せなよ」
 コウキの言葉は無視する。
 リュウスケは後ろに退けつつ円錐を避けていくと、瓦礫の壁にぶち当たった。
「もう後ろには下がれないよ?」
「チッ」
 リュウスケは大きく口を開けた。
 再び彼の口から「泡」が放出される。
「うおッ!!」
 コウキは驚きつつ後ろに飛び退いた。
「なんだコレ!?」
 正体のわからない「泡」にコウキは混乱する。
「さあなァ!」
 リュウスケはコウキとの距離を詰めた。
 コウキは地面から円錐を作る。それがリュウスケの吐き出した「泡」とぶつかった。次の瞬間、コウキの作った円柱が見事に弾け飛ぶ。
「ウォ!! 爆弾か、コリャ!?」
 リュウスケがにやりとする。
「まァ 似たようなもんだ」
 ポタリ。
 微かだがどこかから聞こえてくる水の垂れる音。
 リュウスケは周りを見回した。
「アブネェのはオッサンの方じゃねえかよッ」
 コウキが叫ぶ。
 ヤツには聞こえてないのだろうか、とリュウスケは思案した。
 コウキは地面から円錐を出して、リュウスケを狙った。それをリュウスケは避けたつもりだったが、今回は円錐からさらに円錐が生え、その先端がリュウスケの頬をかすった。頬からは血が出始めた。

 ポタリ。

 やはりどこかから水が垂れている。リュウスケは思った。
 どこだ? どこにある? リュウスケはコウキとの戦闘しながら水のありかを探した。
「よそ見してちゃア 命落とすぜ!」
 コウキは地面だけではなく、瓦礫はそれで出来た壁からも円錐を繰り出してきた。その大きさも大小様々である。
「その口きけなくしてやるよ」
 そう言うとリュウスケは大量の「泡」を吐き出した。
 一見すれば本当に綺麗に見える。シャボン玉があたりを覆っているようだ。
 コウキはその「泡」を避けたり、円錐を盾にしながらよけていった。当たれば大ダメージは必死だ。コウキの手に汗を握る。
「よおく見定めりゃア案外簡単に避けられるもんだなァ!」コウキが言った。
リュウスケは何も言わない。
「コウキ、アブネェッッ!!」
 叫んだのは第7区の少年のひとりだった。
 それを聞いてコウキは身構えた。身構えつつも一体何に対して身構えているのかがわからないでいたことだろう。コウキは思う。一体、何が危ないというんだ?
 そのときだ! コウキは自分の背後に何かがあることに気がついた。彼がそれに反応しようとしたときにはもう遅かった。いつの間にかに背後に存在していたその「泡」は彼の腹部を抉り取った。「泡」が弾けると同時に彼の血も飛沫を上げる。
「なんだ…?」
 コウキは何が起こったのか未だわからないままだ。
「お前の後ろに細いパイプがあるだろ? そこから水が漏れてる。まァ こんな瓦礫だらけの荒れたところじゃ気にも留めないだろうが」
「み‥ず…?」
「ああ、水だ。 お前はどう思ってたのか知らないが、俺の魔法は泡を吐き出すことじゃアない。少量の水分から圧縮した空気を詰め込んだ泡を作ることなんだよ」
「少量に水分?」
「そうさ。だから近くに水さえあればそれでいいんだ。そこから泡を生み出せる」
「このパイプから漏れている水で泡を作ったってことか?」
「そういうことだ。多分、お前らは俺が爆弾のような泡を吐き出すウィザードだと思ってたんだろうが、それは身体の中にはたくさんの水分があるってだけだ」
「ハハ」
「さてと、こんなくだらない話で時間を潰すこともないか。お前の余命もあと少しだろうし」
「確かにこの出血じゃ免れんかもな」
「あァ、だから残りは質問にだけ答えてもらう」
「答えなきゃいけない理由はない」
「答えたらお前の仲間の命は助けてやろう」
「その保証はないだろ?」
「そうだな。でもお前が答えなければガキどもが俺の泡の餌食になるのは確実だ」
「質問はなんだ?」
「答える気になったのか? 俺が訊きたいことは簡単だ。お前の所属するチームの名前が知りたい」
「俺のチーム?」
「そうだ。入ってるだろう?」
「このガキどものか?」
「もちろんウィザードのだ」
「知らないね」
「いや、そんなはずはない。それとも仲間の血が見たいのか?」
「ハァ。わかった答えるよ。ミョルニルだ」
「ミョルニル?」
「そうだよ。もういいだろ?」
「ミョルニルとやらはどこに集まってる?」
「ないよ。俺らは招集されたときにだけ、そのとき指定の場所に集まるんだ」
「ミョルニルにメンバーはどこにいる?」
「知らないね。何か用があるときは連絡係が俺のところに来るだけで、他のメンバーとの交流は滅多にないからな」
「じゃあ、リーダーは誰だ?」
「もういいだろ? 喋るのも億劫になってきた。逝かせてくれ」
「リーダーの名は?」
 それ以上もうコウキが何かを話すことはなかった。もう彼には声を発する力さえもなかったし、死へのカウントダウンが秒読みになっていたからだ。
「まァ、いいか」
 リュウスケは「泡」を作りだし、コウキの頭部にそれをぶつける。
 彼の頭は破裂し、コウキは完全に肉塊と化した。


<作者のことば>
なんか中途半端に終わってしまってすみません。

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COMMENT

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● ウィザード読了
神瀬一晃 | URL | 2010/01/29(金) 11:34 [EDIT]
 こんにちは。
 最近頻繁にやってきている、神瀬です。

 うん。非常に読みやすかったですw
 物語が気になるところで終わっているのが残念でならないw
 続きが読んでみたい。

 ちょいと、批評? みたいなこと言うと、リュウスケの魔法は少量の水で圧縮した空気を閉じ込めて泡を作る……で、リュウスケが直接その水に触れなくても発動できるっぽい(パイプから零れる水を使ったことから)ってことは、そもそも泡なんか作らずとも、敵の体内にある水と空気を使えば、敵の体内で爆発でもさせれば倒せてしまうのでは。
 もし、それが不可能な設定がされていたのなら、作中でその辺の弱点みたいな説明があった方が良かったかも。

 と、偉そうにすみません。
 とはいえ、全体的にとても読みやすく、楽しかったです。
 ではでは。

匡介 | URL | 2010/01/29(金) 12:33 [EDIT]
>神瀬一晃さん
ありがとうございます。
これは長篇として書こうかな?って思っていて挫折したもので、プロローグ的な感じで書いておけばのちに続きを書ける!と思っていたのですが、続編の予定は今のところないです。残念ながら。

そして設定がどうだったのかイマイチ覚えていないのですが、おそらく何かを隔ててしまうと「泡」を作ることが出来ないんじゃないかと思います(予想)。
それか対象(水)があまり動いてしまうと能力の照準が合わないのかもしれません。敵は動きまくってますからね。……あるいは知らない間に水に触れたのかも?(笑)

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