FC2ブログ
みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/04/28(火)   CATEGORY: 短篇小説
TIME(2)
 頭がガンガンする。目が覚めて最初に思ったことはそれだった。胸がムカムカする。妙に喉の渇きを覚え、ふらつく足で冷蔵庫まで行き、冷えていたミネラルウォーターをごくりと飲んだ。その直後、一瞬吐きそうになったが智生は何とか堪えた。
 昨日はどれだけ飲んだんだろう? 二日酔いなんて久し振りだ。頭痛がして額を押さえると、少しだけ熱っぽかった。実際には飲んでいたときすでに日付は変更されていたが、それは大したことではない。それより床でそのまま寝てしまっていたことが智生には気がかりだった。風邪をひいたかもしれない。
「今、何時だ?」
 智生は顰めた顔で、時計を睨んだ。
 部屋の壁にある掛け時計の針がぐにゃりと歪む。おかげで時間がわからない。
 そのうち時計全体が歪み、ゆっくりとそれでも加速度的に渦になっていく。
 いつの間にかに部屋自体も回っていた。
 ぐるぐると視界が回る。
 智生はよろけた。
 次の瞬間にはもはや立っていられなくなって、床に倒れ込んだ。
 時計が回る。
 部屋が回る。
 世界が回る。
 視界がぐるぐると。
 ぐるぐると視界が。
 回転は速度を速めて、もう何がどうなっているのかわからなくなるほどだった。
 酷い吐き気に襲われ、智生はその場に嘔吐した。


 ***


 目の前には母親がいる。彼女は智生が6歳のときに蒸発した。理由はわからない。
「母さん…」
 智生は呟くように言った。それは実際に呟きだった。それを聞いて母親は微笑む。
「お母さん? …ふふ、大丈夫?」
 若い女性の声だった。
 それを聞いて徐々に思考が回復を始めた。彼女は母親ではない。もしそうだとしたら最後に会ったときから少しも歳を取っていないことになる。いや、もっと若い。
 視界がクリアになってきた。さっきまで陰になっていた顔が見えるようになる。
 目の前にいる女性はもっと若かった。明らかに母親というようなふうには見えない。学生くらいの歳に見えた。
「あ…、申し訳ない」
 智生は自分の言っていた言葉を思い出して、耳まで真っ赤になっている。もう二日酔いも何もない。すべてが吹き飛んだ。
「いいえ。それより大丈夫ですか?」
 智生は周りを見回した。ここは…、どこだ?
「飲み過ぎね。お酒くさいわ」
 小さな公園のようだった。自分はなぜこんなところにいるんだろう? 見覚えのない公園だ。
「立てる?」
 彼女は智生の頬に付いていた土を優しく払った。
「…ああ」
 智生は膝を立て、立ち上がる。
 吹き飛んだと思われた酔いはまだ残っていたようで、少しぐらついた。
「大丈夫じゃないみたいね」
「・・・いや、大丈夫。大丈夫」
「少し休んだら? わたしのアパートはすぐそこなの」
 彼女は指差すが、その向こうは夜の闇で覆われてよく見えなかった。
「見ず知らずの人のにそんな迷惑は……」
「いいから、いいから」
 有無を言わせず彼女は智生を引っ張った。意識すると再び頭痛が襲ってきていた智生はそれに抗えず、彼女に連れられるままに歩くしかなかった。



<作者のことば>
前回言ったように、TIMEはストーリー的なものをあまり意識していない。
文章的な感覚を掴む(リハビリ)と新しい表現の模索を意識している。個人的には。

今までとはちょっと違う新しい文章、
それを会得できるだろうか。

←応援してくれる人はclick!!
[ TB*0 | CO*0 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © みやび萬紅堂。. all rights reserved. ページの先頭へ