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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/18(水)   CATEGORY: 短篇小説
ウィザード(上)
 見渡すばかりは廃墟である。
 今にも崩れ落ちそうなビルディングが生えたこの一帯が、自分が見る最後の景色になるとは彼は思いもしなかったことだろう。といっても今の時代、どこも似たような風景であるから仕方ないことでもあるが。
赤い髪にブラックの光沢が目立つライダースジャケットを着た男は、左胸からその肩にかけてぽっかりと空いてしまった孔(あな)からその髪より少し黒味を増した赤い液体を噴き出させながら倒れた。倒れたあとも男の孔からは血がドクドクと流れ出ている。
 そんな男の姿を横目に黒髪短髪のがっしりとした身体を持つひとり男が去っていった。

***

 シンジュクに店を構えるBAR・キングクリムゾンにリュウスケは足を運んだ。
 廃墟が並ぶ街の一画に、ひとつだけ周りと比べ綺麗に保たれたBARの重厚な金属製の扉を開けて中へと入ると、キングクリムゾンのマスターの姿が見えた。マスターは入ってきた客がリュウスケだと確認すると何も言わずに後ろの棚から一本のボトルを取り出してその中身をグラスに注ぎ始めた。
「最近は、ウィザードの取締りが厳しくなってるらしいぞ」
 マスターはそう言って、そして酒が注がれたグラスをリュウスケに差し出した。
「アメリカの局員が派遣されてくるんだろ?」
「なんだ、知ってたのか」
「ああ、小耳にはさんだ」
 そう言ってリュウスケはぐいとグラスを傾け、一気に中身を飲み干した。
「もっと味わって飲めんもんかねぇ」
 マスターはもったいなさそうに言う。
「今どき、まともな酒なんてそうそう飲めんぞ」
 リュウスケはそんなことどうでもいいといったふうで、マスターの話を聞き流しているように見える。
「ここは大丈夫なのか?」
「どういう意味だ?」
「こんな登録もしてない違法ウィザードの溜まり場みたいなところ。局の捜査が入ったらたちまちアウトだろ」
「まあ、なんとかなるだろ」
「気楽なもんだな」
 マスターはそんなもんさと笑いながらリュウスケのグラスに再び貴重な酒を注ぎ始めた。

***

 数多ある瓦礫の下からトカゲのような男が現れた。
 男の姿は人間大の文字通りトカゲそのものである。それに意味があるのかどうかはわからないが、一応服などは着ていた。
「こんなところに居たのか」
 トカゲ男に声を掛けたのはリュウスケだった。
「なんだ、ダンナか。なにか用ですかい?」
 見た目からは想像は難しいが、この男はトカゲの容姿とは裏腹に、普通に人間の言葉を話した。
「解ってるだろ」
「…マナトを殺したヤツか?」
「見つけたのか?」
「いや、見つけてはないさ。
でも、最近幅を利かせてきてるチームがあるらしい。もしかするとそいつらかもな」
「そいつらはどこに?」
「そのチームに入ってるって噂のヤツが第7区にいる」
「第7区だな。どんなヤツだ?」
「コウキって呼ばれてる。名前しか知らん」
「それでよく情報屋なんてやっていけるな」
「黙っとけ」
 リュウスケは懐から小さなボトルを取り出した。それをトカゲ男に投げる。男は慌ててボトルをキャッチした。
「ウィスキーだ」
「ありがてえ」
 リュウスケはそこから少し離れた場所に停めてあったバイクにまたがった。典型的なアメリカン、ハーレー・ダビッドソンだ。
 バイクにキーが差し込まれエンジンがかかる。リュウスケは2、3度ふかしてからバイクを出した。


<作者のことば>
本当は長編として書きたかったけれど、自分の力量では無理で上・下に分けた短編に。
でもリュウスケはお気に入りのキャラ。

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