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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2009/04/17(金)   CATEGORY: 短篇小説
少女A
 高校生になれば何もかもが変わると思ってた。もちろん楽しい方に。だって高校生って自由で、好きなことできちゃうし、それに何だか青春って感じがして、人生でいちばん楽しいってイメージだったから。だから私は何の根拠もなく、当たり前のように何もかもが変わると思ってた。もちろん楽しい方に。
 だけど大して何も変わることなく気付けば1年が過ぎていて、「なあ~んだこんなもんか」って思って、何だかガッカリした気持ちとちょっとだけほっとした。どうしてかわからないけど、どこか変わることが怖かったのかもしれない。
 そして今も少しだけのおそれはあって、でもこれからすべてが変わるはず。だって私にも彼氏ができたから。だから私の青春はここから始まるはずなのだ! そう、きっと!

 尚哉は私と同い年で、クラスは違うけど同じ学校に通っている。それまでは全然話したこともなかったんだけど、ある日の帰りに呼び止められて、そして告白された。別に見た目は悪くなかったし、付き合うってことに興味もあった。なにより青春って感じがしたし、私は尚哉のことをよく知らずにOKした。そうして私はあっさりと自分の彼氏を手に入れて、あっさりと他人(ひと)の彼女になった。ところでどうして彼氏彼女って三人称になるんだろう? 英語でいうとHeとShe? だけどアメリカ人はそうは呼ばなくて、きっとダーリンとかハニィって呼び合ってるんだろう。どうでもいいけど。
ちなみに尚哉は見た目どおりに悪い人ではなくて、ちょっと真面目で、なかなか誠実で、私の彼氏としては申し分なかった。かっこいい!と自慢できるほどではなかったけど、あんまりかっこいい人って女にモテてたぶん調子に乗っちゃってるし、きっと浮気とかしちゃうんだろうから、見てるだけならいいけれど、彼氏としては微妙。それに人に見せられないような顔でもないから、私は尚哉くらいがちょうどいいのだ。
 ただ問題なのはもう付き合って1ヵ月も経とうとしているんだけど、彼から何のアクションもないということだ。周りの友達からは「もうヤっちゃった?」なんて訊かれるけれど、私たちはまだキスすらしていないピュアな、そう、プラトニックな関係。
 もしかしたら彼は彼なりに気を遣ってるのかもしれない。がっついた男だと思われるのがイヤなのかもしれないし、私のことを大切にしてくれてるのかもしれない。けれどそんなの大きな勘違いで、本当に好きならむしろいっそのこそあんなことやこんなことをやっちゃってくれ。男だったら度胸だろ。誠実すぎるのもちょっと考えものだと思う。いい人なんだけど、いい人なんだけど、それだけでは物足りないのが女の子なのだ。
 そんな私の彼なのだけれど、今とっても重大な局面を迎えている。これまで何度もあったであろう、いわゆる“イイ雰囲気”ってやつだ。今まで自然にそういうムードになったこともあるし、私がそういう雰囲気に持っていったこともあった。なのに彼は何もしてこなくて、そのたび私はガックシきていた。ちなみに今はその後者の方で、私がそういう雰囲気を作り出している。夕暮れの人気のない公園。さっきまでそこらで遊んでいた子供たちはもう帰って行ったし、私たち2人だけ。もう今しかない!
 実はさっきから彼が私の肩に手をかけようとしていて、寸前のところでためらっている。それに私は気付かないフリをしていた。だけど、あまりにもじれったくてちょうど今私は自分の体を彼の方へとすり寄せた。体と体が触れた瞬間、彼がドキっとしたのがわかった。私も少しドキドキしている。
 気付けば私の彼の視線は宙で絡み合っていて、今にもキスしてきそうな雰囲気だ。
 1秒2秒……。じれったい。じれったすぎる! おまえそれでも男か! 私のことが好きなんだろ! 男なら覚悟を決めろ! キスしたくないのか!
 以前、彼に私のどこが好きだと訊いたとき、「女の子って感じがして、純粋なところ」って言っていたのを思い出す。だけど私だって普通の女の子なのだ。キスだってしたいし、それ以上のことだって興味ある。尚哉のことは嫌いじゃないし、そこまでしてもいいって思ってるのに。そんな勝手な女の子像をつくられても困る。女の子だってエッチなこともしてみてみたい。
 彼の口がわずかに動いて何かを言おうとしていたのがわかる。けれど私はそれを言わせる前に彼の口をふさいだ。
 あれだけ覚悟していたのに、この唇は緊張で震えている。今、彼は何を思っているだろうか? 何がなんだかわかっていないかもしれない。それとも初めてのキスを自分からしてくるような軽い女だと軽蔑してる…?
 わからない。だけども何もかもが遅い。私は私で、あなたの理想像と違うかもしれないけれど、それが女の子だってことをわかってほしい。すべてはどこまでもじれったすぎるあなたが悪いのよ?
重ねていた唇を離して、私は彼を見つめる。緊張でキスの味なんかわからなかった。彼は驚いているようで、それを見たら少しおかしくなって私は笑ってしまった。
「今日ね、親帰って来るの遅いんだ。ウチ…来る?」
 月並みなセリフ。だけどこれくらいしないと彼はいつまで経っても何もしてこないだろう。だから私から誘ってあげる。ここまでさせたんだから恥かかせないでね。
 もうすぐ日が沈む。私は彼の方へと手を伸ばした。


<作者のことば>
少し前に書いていたので、読み返してみた。
ん? これは俺の書いたものなの?(笑) そう思うのも、自分が思っていたより女の子らしい気がするからだったり。
まあ、実際に女の子がどういう思考をしているものなのかなんて男の子の自分(笑)には到底わからない話で、だから女の子の特に一人称なんてあくまで想像で、空想で、現実とはおそらくかけ離れたものしか書けない。だけどそこをどうにか現実にあり得そうというふうに錯覚させるのが、書き手の腕の見せどころなのかもしれない。……あ、だから自分の力量が凄いってわけではないわけで、つまりは自分が思っていたよりもイイ感じかもって思っただけなわけであって、つまりはそういうことです(笑)

何か文章も今までとは少し違う感じがして、少し新鮮。

女の子の一人称を書くにあたって、おそらく自分が抱く女の子イメージだけではなく、たとえば女性作家が女の子を主人公にした小説などの影響も大きい、はず。
そこで俺は誰の影響を受けているかというと、読んでいて“そして今も少しのおそれはあって”という言葉からフラッシュバックしたのだけれど、思うに豊島ミホさんの影響が大きいような気がする。豊島さんのどの小説かの(予想するに「檸檬のころ」に収録されている作品のどれか)一文に“だけど少しのおそれはあって”とかそういう感じの言葉が含まれていた、と思う。
そう思いながら読むと、見事に文章の感じは豊島テイストに仕上がっている、気がする(笑)

いやー、人って誰かに影響されて、そして誰かに影響を与えながら生きているんですね(俺も誰かに影響を与えている?)。

だからなんだっつーわけでもないよ? ふと、そう思ったってだけですぜ。
最後に豊島さんの作品を読んだのは結構前のことになるし、その間に他の女性作家さんにハマったりもしたのだけれど、それでも今回は意識せずともおそらく豊島さんの文章を選んだわけで、それって凄いなぁ。バタフライエフェクトって言葉もあるけど(何か違う?)、どんなことが、いつどんなカタチで影響を及ぼすかってことはわからないものですね。きっと女子高生ってキーワードが豊島さんを連想させたのかもしれない。今思い浮かぶのはもしくは綿矢りさですが。豊島ミホが描く女子高生って俺は好きです。


ちなみに、わかる人はわかるだろうけど「少女A」ってタイトルは中森明菜さんの同名の曲から頂いてます。内容もその曲を意識してのものになっているので、知っている人は歌詞を思い出しながら(できれば曲を聴きながら(笑))読んで頂けるとまた違った楽しみ方ができるかと(笑)

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COMMENT

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卍リシャール卍 | URL | 2009/04/17(金) 20:33 [EDIT]
読ませていただきました。

女の子視点の文章はあまり読んだことがないので新鮮でした。

私の作品でも女の子視点の文章を書こうと思っているので参考にさせていただきます。

匡介 | URL | 2009/04/17(金) 21:26 [EDIT]
>卍リシャール卍さん
参考にするのはどうでしょうか?(笑)
でも普段とはまた違う文章を書いてみるっていうのもなかなか楽しいですよ。

卍リシャール卍さんの女の子視点はどうなるのか楽しみにさせてもらいますね♪
● 始めまして。
沙希萌 | URL | 2009/04/18(土) 13:46 [EDIT]
訪問有難うございました(*´I `*)
同じカテゴリ同士仲良くしてください☆゚+.(*ノェノ)゚+

匡介 | URL | 2009/04/18(土) 15:44 [EDIT]
>沙希萌さん
どうも、初めまして。
わざわざお越しくださいましてありがとうございます。

こちらからも是非、お願いしますね。

またのお越しをお待ちしていますので。

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