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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/06/17(火)   CATEGORY: 短篇小説
仮面の者
そこには村があった。
その村には昔から旅行客が多く、小さいながらも賑わいを見せていた。
しかしそれも以前までの話だった。最近では村で人影を見ることも少ない。もはや昔の面影はなく、かつてそこに賑わいがあったことすら信じがたいほど廃れてしまっていた。

原因ははっきりしている。
もう半年も前から村の近辺で魔物が現れるようになっていたからだった。その魔物は頻繁に現れることはないものの旅行客を何人か餌食にしていた。
それから村に旅行客はほとんど来なかった。村人も魔物を恐れて家から出るのも極力避けるようになった。

そうして村から活気はなくなり、現在のように廃れていく一方になってしまっていた。

しかしその日は珍しいことにひとりの旅人が村へやってきた。
その者は黒衣に身を包んでいた。その黒衣がその者の長い銀髪をより強調させていた。

「この時期にこの村に来るたぁ珍しいね。最近じゃあこのあたりに魔物が出るようになっちまってるんだ、知らないのかい?」

宿屋の店主は旅人に訊(たず)ねた。
「噂には聞いている。死人も出たそうじゃないか。」
「あぁ、この村の者じゃないんだが、旅人が何人かやられてね。実際には見てはないんだが、残された死体は見るも無惨なほどにズタズタだったらしい。」
宿屋の店主は溜め息をついた。
「まだウチの村の者には誰も襲われたという奴はいないんだがね、やっぱりみんな恐がっちまって表に出て来なくなっちまいやがった。この村も一気にしけた村になっちまったよ。」
店主はまた溜め息をついた。今度はさっきより深い溜め息だった。
「お客さんは何しにこの村へ来たんだい? 今のこの村にゃあ何もないだろう。」
「あァ、ちょっと仕事でね。」そう旅人は答えた。


***


その日、村の様子が騒がしかった。
宿屋の店主に訊いたところによると、子供がひとり森へ行ってしまったらしい。
村の裏にある森は例の魔物の棲み処(すみか)だと思われている場所だった。

その子供は好奇心旺盛だったらしい。魔物という未知のモノに彼の好奇心がくすぐられたのかもしれない。

その日のうちに村の男たちで捜索隊が組まれた。
狩りで使う弓や槍などを手に男たちは森へと向かった。

男たちの中には村が寂(さび)れていくのに我慢ならず、魔物を倒したいと思っている者も少なくはなかった。

夕方になると子供が村へと帰ってきた。
両親はその安堵に泣き崩れた。子供は自分が何をしたのかをわかってはいない様子だった。

そして夜になった。子供が帰ってきたことを捜索隊に知らせに村の者が行ったが、帰ってはこなかった。
村人たちは不安に満ちていた。もしかすると魔物に襲われたのかもしれない。

夜が更けても村人たちは捜索隊の男たちが帰るのを待った。
村の広場には絶えず火が灯(とも)されていて、男たちの帰りが願われていた。

そして朝方になり空が霞みだした頃、捜索隊の男がひとり帰ってきた。
その男の片足はなく、森からずっと這ってきたようだった。

その男は村唯一の医者の下へ運ばれた。
男が帰ってきて一日が経った。もはや他の男たちの生存は絶望的だということに村人たちは気付いていた。

***

その音に何人かの村人は目を覚ました。ひとりの女が窓から外の様子を窺った。

窓の外には巨大な塊があった。
彼女が覗いた2階の窓まで優(ゆう)に届く、その巨体に彼女は絶句した。

その塊には太い足が6本あり、眼が8ツもあった。
その姿はまるで巨大なタランチュラのようだった。彼女は悲鳴をあげた。

***

女や子供、それに老人は避難を始めた。どこが安全かはわからない。しかしどこかに身を隠すしかなかった。

男たちは弓を構え、矢を放った。
硬い毛で覆われたその魔物には矢など通用しなかった。その矢には奴の巨体を貫けるほどの威力はなかった。
村人たちにはもうなす術(すべ)がなかった。

***

村人がすべてを諦めたときにその者は現れた。
黒衣を身に纏った仮面の者。その者の黒衣と銀髪に宿屋の店主は旅人だと気付いた。

魔物の前に立ちはだかる仮面の者を誰もが無謀だと思った。
彼はその腰に携えた剣を引き抜いたが、村人の誰もがその剣に希望を託すことは出来なかった。

仮面の者が構えると、次の瞬間、彼の姿はなくなった。
村人たちが次に彼を見つけたとき、彼は魔物の6本あるうちの右前足を斬りつけていた。

そしてまた消えた。

もう村の誰にも彼の動きについていける者はいない。
彼は宙に舞い魔物の頭に立った。そして8ツある内の1ツの眼を潰した。

ゴォォォォォォォォォォ。

魔物は呻(うめ)いた。
そして低く呻いたあと、魔物のその硬い毛が逆立った。
魔物はその逆立った毛を仮面の者に向かって飛ばした。

彼はその全てを携えた剣で打ち落とし、その超高速の動きで魔物を切り刻んでいった。
右前足が切断され魔物は傾いた。さらに左の中足も切断された。

魔物は口元から強酸の体液を吐いた。
しかし彼のその速さの前では無意味に等しい。

彼は魔物の上空へと跳んだ。
その位置から速度をあげて落下していく。そして首を一刀両断した。
魔物の首は地に落ちた。


***


「ありがとうございます。」
村人たちの感謝の言葉が彼に向けられた。
「おれは依頼があったから仕事をしただけだ。報酬さえ貰えればそれでいい。」
彼はある組織に所属している。その組織とは魔物退治を専門に扱う組織だった。
彼の組織は要請があれば魔物討伐に組織の者を派遣する。しかし依頼には莫大な金が必要だった。
昔に比べ、かなり廃れてしまったこの村にとってその莫大な金を払うのは大きな痛手だった。しかし村民の命には代えられない。そしてこれから村が復興していくことを願って村長が組織に依頼したのだった。


彼ら仮面の者は魔物を狩ることを生き甲斐(がい)としている。
組織に依頼があり、組織の命ならばどんなに危険な依頼でも遂行する。


彼らの仮面は組織の証。魔を狩る者の証。
彼らは魔を狩るそのときに、その仮面をつける。


<作者のことば>
意外と気に入ってる作品です。
まぁ、元ネタは「クレイモア」です。

バラしてしまえば「あぁ」ですよね(笑)

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COMMENT

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● 仮面の者読みました
神瀬一晃 | URL | 2010/01/28(木) 18:15 [EDIT]
 ども~。
 またやってきました神瀬です。

 順調に上から読破していってますよ~。
 ヒョッヒョッヒョww

 さて、元ネタが“クレイモア”らしいけど、俺はなんのことやらw
 なので変な予備知識が作動することも無く、普通に楽しませてもらいました。
 ただ、昔書いた作品だからなのでしょうか? 語尾が「た」で終わることが多い気がしました。
 語尾の音に同じものが続くと、語呂が悪くなって結果的にテンポが悪く感じるようになるので、あまり語尾は揃えない方がいいかと。続いてしまっても3回くらいが限度かも。

 そんなこんなで、また読みに来ますよ~。
 次はこの仮面の者の下にある作品を読破しますぜw

匡介 | URL | 2010/01/29(金) 09:28 [EDIT]
>神瀬一晃さん
上からいくと古いの読まれるだけではなく、新しくなってからまた古いの読まれてしまうのでキツイです(苦笑)
以前は「た」で終わることが多かったと思います。新しくなるにつれて改善されているはずですが、もしあったとしてもご愛嬌ってことでお願いします(笑)

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