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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/12/03(水)   CATEGORY: 「怪奇蒐話」
「チャンネル」
僕はテレビを観ながらカップラーメンにお湯を注いだ。
観ているテレビ番組は僕の好きなバラエティ番組だ。毎週欠かさず観ている。

「そろそろ3分かな。」

テレビを見ているとカップラーメンなんてすぐに出来上がってしまう。
少し気を抜いてしまったら3分なんて忽(たちまち)ち過ぎ、麺が伸び切ってしまうなんてことはよくあることだ。

カップラーメンのフタを開けたとき、箸がないことに気付いた。
僕は立ち上がり割り箸を探す。たしか台所の引き出しに入っているはずだった。

台所の引き出しから割り箸を取り出してテーブルに戻った。
するとテレビのチャンネルが変わっていることに気がついた。

「あれ? おかしいなぁ。」

僕は再びチャンネルを戻し、バラエティ番組を観た。



***



住んでいるアパートの部屋に疲れて帰ってくるとテレビがついていた。
テレビ画面には今話題になっているドラマが映し出されている。

「出るときに消し忘れてたっけ?」

朝、ニュースを観たあとで電源を切ったと思ったけれど、今朝は急いでいたし消し忘れていたというのは十分あり得る。
僕はテレビを消してミニコンポの電源を入れた。すでに入っているはずのCDを再生した。
ミニコンポからは僕のお気に入りのアーティストの曲が流れた。

僕は音楽を聴いているうちにうとうとし始めた。
しかしそれは携帯のバイブレーションにより掻(か)き消された。

携帯を開いてディスプレイに目を遣(や)るとメールが届いていた。
それを開くと文面には『今、ひま?』とだけ打たれてあった。

僕は気怠(けだる)さを感じつつ返信の文章を打った。
そしてそのメールを送信すると返信のメールはすぐに返ってきた。

彼はメールで、ある映画のDVDを一緒に観ようと誘ってきた。
彼はちょうどDVDをレンタルした帰りで、このアパートの近くにいるらしい。
その映画に出ている女優は好きだったし、その映画も上映中に観ようと思っていたのだけれど結局観なかった映画だったから一緒に観ることにした。


アパートの前に立っていると彼がやってきた。
僕は彼を連れてアパートの自分の部屋に戻った。

そして目に入ってきたのは某人気ドラマのクライマックスシーンだった。

「あ、もしかしてドラマ観てる途中だった?」
そう言って彼は、悪い、とだけ呟いた。
「おかしいな。テレビは消してたはずだけど。」
「気のせいじゃないの?」

いや、今度は確かに消したはずだ。
帰ってからはずっと音楽を聴いていたし、テレビは観ていない。

「テレビをつけた覚えはないんだけど。」
それを聞くと彼は言った。
「調子悪いんじゃない? 俺の姉さんも勝手にテレビがついたり消えたりするとかでテレビ買い替えてたよ。」

そうなのだろうか。
確かに最近勝手にテレビがついてたり番組を観ている途中でチャンネルが変わることが何度かあった。

「そんなに気にすることないって。」

僕はDVDをレコーダーに入れて再生した。
しかし映画のオープニングが始まったかと思うとチャンネルが変わってしまった。

「ホント調子悪いな。これは絶対買い替えたほうがいいよ。」

そう言って彼はリモコンのボタンを押した。
そうするとテレビの画面はドラマのエンディングから映画のオープニングへと切り替わった。



***



僕は困っていた。
部屋にあるテレビは完全に壊れてしまったらしく、夜中にいきなり電源が入ったりするようにまでなってしまった。

普段はテレビのコンセントを抜くようにしているが、早急にテレビを買い替えなければならないようだ。

僕はコンセントを挿し、テレビの電源を入れた。
もう明日には新しいテレビを買おうと思っている。このテレビで番組を観るのは今日で最後になる。

リモコンを取ってチャンネルを変えた。プロ野球の試合が画面に映し出された。
僕が応援している野球チームはこのところ負け続けで、今日を勝たないとあとがないのが現状だった。

僕はテレビの前で固唾(かたず)を飲んで応援する野球チームを見守っていた。

応援するチームは9回の裏で2点差で負けている。
しかし今は満塁で、まだ逆転の余地は十分にあった。

4番バッターがバッターボックスに入った。
試合の勝敗を分けるほどの重要な場面、緊張の中でピッチャーは振りかぶった。


次の瞬間―――――


テレビ番組はドラマに変わった。
このテレビはなんてドラマが好きなんだろう。おかげで重要な場面を見逃してしまった。
僕は深い溜め息を吐(つ)いてからリモコンを手に取り、プロ野球中継に番組を戻した。

しかし、すぐにまたチャンネルは変わり再びドラマが映し出された。
一瞬見えた感じでは点数に変わりはなく、まだ4番バッターがバッターボックスに入っていた。どうやら今日の目玉はまだ見逃してないらしい。
僕はすぐにチャンネルを戻し、番組を野球中継に変えた。

携帯のバイブレーションが鳴った。
今、試合の勝敗を左右する重要な場面だけれど、仕方なく僕は携帯を開いてディスプレイを見た。どうやらメールのようだ。

『なんでかえるの?』

メールの送信元のアドレスは知らないものだった。
意味のわからない文章に僕は戸惑いつつも返信をして誰かと訊いた。

『わたしだってみたいのに、わたしにはみさせてくれないの?』

返信は僕の問いに対しての答えではなかった。
そして続け様(ざま)にもう一通メールが届いた。

『わたしはどらまがみたいの』

全文ひらがなで読み難(にく)かったせいもあって少し時間がかかったけれど、僕は文章の意味を理解した。
このメールから考えると誰かが僕のテレビを見ていることになるというのが結論になる。

僕は周りに目をやった。
しかし当たり前のように誰も居ない。



でも、僕は気付いてしまった。

テレビの画面に反射して映し出された僕の部屋に、知らない女性が居て、その手にはテレビのリモコンを持っていることに。

それに気付いたとき、僕は身体(からだ)の至るところから汗が吹き出るのを感じた。


<作者のことば>
久し振りに載せることが出来たー。これは最初期の作品。
流しながら読み返してて「彼?」と思った。なんつーか、これの主人公って女だったっけ?
でもどうやら「彼」は友達らしい。てっきり彼氏のことかと思ったじゃないか(笑)

ちなみにタイトルは「テレビ」だったのを改題して「チャンネル」に変えた。

どちらがいいかは微妙だなぁ。
それより過去の作品を改題するのは初めてだ。

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COMMENT

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● お初にお目にかかります。
庵/雛 | URL | 2008/12/03(水) 22:31 [EDIT]
ブログで流れてきました、こんばんわ。
読んでて乙一のある話を思い出しました。
その話は恐怖ではなくてもっとホンワカした話だったんですけど;;

私もいろいろと書いているのですが、きれいに描いてらっしゃるなぁと尊敬いたしました;;w
これからもちょくちょく読ませてもらいますね。
でわまた。

卯月シュウ | URL | 2008/12/04(木) 14:50 [EDIT]
面白いと思います。
僕には大抵、かけないジャンルのものなんで(笑)

うまくいけば長編になるんじゃないかなぁ。

タイトル、タイトルは、……そうっすねぇ。

匡介 | URL | 2008/12/05(金) 03:58 [EDIT]
>庵/雛さん
初めまして。実は自分のホラーは乙一さんを意識してるところもあります。…というか影響かな?
内容は全然違うあるマンガの影響が大きいかと自分では思ってるんですが、文章的な面では乙一さんの雰囲気を意識しながらなところがたしかにありますね。特に初期はそうだったと思います。
ちなみに乙一さんを全部読破しているわけではないので、どの話を思い出されたのかはちょっと見当もつきませんねぇ。

しかし本当に最初から何番目かに書いたやつを褒められちゃうとは(笑) でも、自分でも初期の作品は好きなんですよね。…もしかして実力が落ちてる?(笑)

お待ちしていますので是非またのお越しを♪

匡介 | URL | 2008/12/05(金) 04:01 [EDIT]
>卯月さん
たぶん長くなるとそれだけボロが出てくると思いますよ(笑)
それに自分の中でホラーはいかに短く怖くっていうのがテーマとしてあるんです。最近はちょっと長編ホラーを書こうかとも思ってますけどね。

でも、もし長編を書いても今までのホラーとはかなりテイストが違うものになるんじゃないかと思ってます。

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