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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
カッフェ
 申し分ないほどの真夏日で、アスファルトも融けてしまいそうなほどだった。
 暑さで汗だくの隆太の視界に「F’sカフェ」の文字が入る。彼は思わず、逃げるようにその店内へと入っていった。
 冷房は少し足りないくらいだったが、それでも外の暑さに比べると全然ましと言えた。それにあの殺人的な陽射しから逃れられるだけで、その店内はとても快適に思えてしまう。
 隆太が店内の空いている席に腰掛けると、若い男がメニューを持ってきた。白と黒を基調にした制服がよく似合う男で、その黒髪がかかる端整な顔立ちは、とても爽やかだった。それに隆太は思わず見とれてしまった。同性の彼でさえ、この従業員の魅力にはつい目が向いてしまうほどなのだ。
「えっと…じゃあ、アイスコーヒーひとつ」
 隆太がそう言うと、男は「かしこまりました」と下がっていった。
 制服の胸元に付いていたネームプレートには「黒戸」と書いてあるのがチラリと見えた。
 しばらくして、アイスコーヒーの注がれたカップを持って黒戸が現れた。そしてカップは隆太の目の前に差し出された。
「どうぞ」
 隆太は喉がからからに渇いていたが、コーヒーに手をつける前に、黒戸に代金ちょうどのお金を払った。
「ごゆっくり」黒戸が下がり際に言ったのが聞こえた。

 アイスコーヒーを口に含ませ、喉を鳴らした。
 熱された体に冷たいものが駆け巡る。隆太は、ふう、と一息吐いた。
「ちょっと今の人かっこよくない?」
 隣のテーブルから声が聞こえてきた。
 見てみると女性2人が互いの飲み物で喉を潤しながら、この店の従業員である黒戸の話をしているようだった。
「うん。あたしもそう思った」
 そんな話になるのも仕方あるまい、と隆太は心中で呟いた。
 彼のあの容姿ならば、女性には堪らないだろう。少し長めの艶やかな黒髪に、ほどよく白い肌。まっすぐと通った鼻筋に、思わず唇を重ねたくなってしまう口元。その眼光にはキレがあり、直視されてしまったら逃れられそうにない。身長もなかなか高かった。
 女性たちは彼のどこがいい、とか、きっとこういう性格なのだ、とか、あることないことを熱心に語り合っていた。
「すみませーん」
 女性のひとりが声をあげた。ロングの茶髪を髪先だけ巻いてカールさせた、なかなか綺麗な女性だった。
 呼ばれる声が聞こえたのか、黒戸はすっと彼女たちの席に向かった。
「何でしょうか?」
 黒戸が丁寧に尋ねた。
 女性2人はそんな彼を見て、キャッキャッ言っていた。それを見て隆太は少しだけ黒戸に同情した。いつも周りがあんなだと、彼も肩が凝るに違いない。
「あのぅ、お兄さんのメアドとかって訊いちゃってもいいですかぁ?」
 少し間延びしたような声で茶髪カールの女性が尋ねた。
 隆太の目には、彼女は黒戸よりもいくつか年上だろうと見えた。
「申し訳ございません。そういうのはお断りさせて頂きたいのですが」
「えー、だめ?」
「すみません。店長にきつく言われてるんで」
 彼は本当に申し訳なく思っているのか、半分事務的な口調で告げた。
「そーなんだぁ」
「お詫びにジェラートの方をサービスさせて頂きます」
 黒戸は優しい声で言った。
「ほんとぉ? だってさクミ、どうする?」
 彼女達はしばらく相談して、ミルクとカボチャのジェラートをそれぞれ頼んだ。
 すぐに彼はカウンターの向こうに下がり、ジェラートを盛り付け始めた。
 隆太はアイスコーヒーに口をつける。
「うちら、ついてるね!」
 クミと呼ばれていた女性が言った。
 茶髪カールの女性が「だね、だね」と肯定し、同意を示した。
「こちらをどうぞ」
 2色の、甘そうなジェラートが2人の前に差し出された。
 それを見た2人が狂喜する。黒戸はにこりと笑顔を見せて再びカウンターの向こうへと戻っていった。
 隆太は再びカップに口をつけて、冷たいコーヒーを喉へと流し込んだ。
 外は相変わらずの晴天で、太陽が悪魔的な微笑みを見せていた。
 はしゃぎながら互いにジェラートをつつきあう2人を横目に、隆太はもう一度カップを口元へと運んだ。


<作者のことば>
個人的にはCoffee Breakの外伝のようなつもりで書いた。
たしか黒戸みたいなキャラが書きたくて作ったじゃなかったかな?

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玖月さくら | URL | 2008/11/20(木) 21:05 [EDIT]
もう日本語をしゃべることは出来ないと思う。。。
アニメはもう一年見えません、語感もないし。。。TAT
来年は学校に日本語勉強したいといって、今のレブルは全然だめ。。。
。。。とりあえず明日がら勉強します。

いろいろな恨み言(?)、御免なさい。

匡介 | URL | 2008/11/22(土) 15:30 [EDIT]
>玖月さくらさん
アニメって日本語で観てたんですか?(驚)
言葉って難しいですよね。人間が生み出した文化の中でも特にレベルの高いものだと思います。日本語って微妙なニュアンスが難しかったり、漢字・ひらがな・カタカナで理解が大変だと思います。

日本人としては日本に興味を持ってくれて嬉しいので、日本語を習得したいなら頑張って欲しいなって思いますね。応援してますよ♪

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