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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
Coffee Break ~元店員~
 京介がいつものようにMATATABIでコーヒーを啜っていると、店にひとりの客が入ってきた。
「ブォンジョールノ」
 オットリーノがそう言って客を迎える。
 客である男はなんとも気まずそうにしていた。
「どうか致しましたか?」
 オットリーノが心配をした。
 京介は男の顔に見覚えがある気がした。確か、何度かこの店の近くで見かけたことがあったんではなかったろうか。
「どうかしましたか?」
 店の奥からマスターの声がした。
「おや? 隆太君じゃないですか」
 隆太と呼ばれたその男はマスターのお辞儀をした。
 オットリーノは、誰?といった感じだったけれど、特に何も言わなかった。
「マスター、この方は?」
 代わりに京介が言った。
「ああ、昔ここで働いて頂いていた青年ですよ。オットリーノが来る以前にね」
 京介がここを初めて訪れたときにはもうオットーがいたので、彼が知るはずもなかった。
「家はこの近くなんですか?」
 その京介の問いには隆太ではなく、代わりにマスターが答える。
「いいや、少しばかり遠かったと思いますよ」
「このあたりで何度かお見かけしたような気がしたんですけど」
 京介のその言葉を聞いて、隆太はやっと口を開いた。
「俺、ずっと来ようと思ってたんです。でも、なかな勇気が出なくて」
 彼は申し訳なさそうにそう言った。
「まだ気にしていたのですか? 大丈夫、元から何も気にすることなどありません」
 マスターの言葉に、彼は少しだけ安心したように見える。
「何かあったんですか?」
 それを訊いたのはオットリーノだ。
「彼はね、その、ミスの多い従業員だった」
 申し訳なかったです、と小さい声が聞こえた。それでもマスターは続ける。
「別に大したミスでもないんですよ。オーダーを間違えたり、皿などを割ってしまったり。でも、働きだしたばかりでしたし、それも当たり前のことです」
 マスターは彼に席を用意した。そしてオオットリーノは何かを言われるとカウンターへと向かっていった。
「本当に使いものにならない従業員でした」
 隆太はそう言った。
「いいえ。そんなことはありませんよ」
 マスターが優しく微笑む。
「隆太君は責任感が強すぎたようです。特に大きなミスもすることはなかったですけれど、自分で辞めると言い、そして本当に辞めてしまった」
 マスターの様子は残念そうだった。
「大学ではうまくやっていますか?」
 隆太は今、大学2年生だ。MATATABIで働き始めたのは彼がちょうど大学に入ってすぐの頃だった。
「はい。今はファミレスでバイトをしています」
 それを聞いてマスターは微笑んだ。
「そうですか、他でアルバイトを始められたのですね。それはよかった。ぜひ、頑張ってください」
「あれからいくつかのバイトをしましたけれど、どこでもミスをしてしまって。でも最初は誰でもそうなんだということに途中で気付いたんです。それで今のバイトは出来るだけ長く続けたいと思ってます」
 そこでオットリーノがコーヒーを片手に現れた。運んできたコーヒーを隆太の前に差し出す。
「どうぞ。これは私からの奢りです」とマスター。
「そんな! ちゃんと払います!」
 しかしマスターは首を横に振り、そして微笑んだ。
「それではまたいらしてください。たまには元気な姿を見せて欲しいです」
 それを聞いた隆太はちょっと嬉しそうに、また来ることを約束する。
「たしか、カフェオレがお好きでしたよね?」
 彼は頷く。そして目の前にあるカフェオレの入ったカップに口をつけた。


<作者のことば>
お蔵入りにしようと思ってたけど、載せてしまおう。的な。

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宝來りょう | URL | 2008/11/15(土) 23:52 [EDIT]
「Coffee Break」新作ですね。

誰でも最初は間違えるもんなんだよね。
でも、会社が望んでいるのは最初から間違えない人ではないんではないかしら?
あたしもマスターと同じことをいうと思うわ。
でもそこに隆太くんが気づけてよかった。

匡の次の作品も期待してますね。

匡介 | URL | 2008/11/17(月) 00:26 [EDIT]
>宝來さん
新作というより未発表な感じです。書いたのずっと前だし。
気付けないだけに一生懸命だったし、気付けるだけ経験を積んだんだと思います。そういうのが成長っていうのかな?
しかし、せめて書き直せばよかったと思いました。文章の粗さが気になりますね。

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