FC2ブログ
みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/10/25(土)   CATEGORY: 短篇小説
有島奇亜人の憂鬱(3)
「――――!!」
 声が聞こえる。
「――――!!」
 何だろう、よく聞こえない。
 もっと――耳を済まさなくては。
「おー…な……き‥ろ!!」
 え?
「おーい、名無、起きろ!!」
 自分の名を呼ばれハッとした名無は、飛び起きるように目を覚ました。
「まったく、昼間っから寝過ぎだぞ」
 眠りから覚めたばかりでまだ頭の働かない名無だったが、有島のセリフを聞いて、それだけはお前に言われたくないと心中で毒づいた。
「さあ、出掛けるぞ。さっさと着替えろ」
「出掛ける?…どこへ? 」
「何を寝ぼけてるんだ。石橋さんのところ以外どこへ行くっていうんだ。仕事だよ」
 有島に急かされ、名無は半眼で準備をするはめになった。

***

 有島は石橋の住むアパートのドアを2、3度ノックした。すぐにドアは開いた。
 部屋に入ると石橋の姿しかなく、夫人の美樹子がいない。それについて名無が訊ねると、買い物に行っているらしいことがわかった。
「有島さん、実は…」インスタントのコーヒーが注がれたカップを2つ、有島と名無に差し出し、石橋はミネラルウォーターをなみなみ注いだコップを自分の前に置くと話し始めた。「妻が怪しい行動を取っているんです」
 一瞬の沈黙が流れた。
てっきり石橋が美樹子の行動に関してさらに詳しく教えてくれるのだと2人は思ったからだ。しかし石橋は、そこから先を喋らない。
「はあ、奥さんが」さすがの有島からも、間の抜けた声が出た。「それで、その怪しい行動とは?」
「夜中のことなんですが、妻がひっそりとベッドを抜け出すんです」
「抜け出す?」
「ええ、僕が寝静まったと思われるあたりに抜け出しているようです。最初はたまたま妻が起き上がったときに僕が目を覚ましたんですが、そのときは何も思いませんでした。――でも、同じことが2、3度続くとさすがにおかしいなと思います。それで、昨夜は寝たふりをして妻の様子を窺いました。そうするとやはり妻は僕が寝たことを確認して、寝室を抜け出すんですよ」
「なるほど」
「例の件に、実は美樹子が関係しているんじゃないかと思って…」
「どのように関わっていると思われますか?」
「こんなこと言いたくはありませんが…、妻は不倫をしているのかもしれません。視線を感じるというのも、その不倫相手が僕のことを観察しているんじゃないかと」
「それでは美樹子さんも普段見られている気がするというのは、彼女の嘘ということになりますね」
「…ええ、そうですね」
 美樹子が嘘を吐いている。その可能性は低くないと名無は思った。むしろそうであるとするならば、石橋と美樹子が視線を感じる時間が妙に近いのも頷ける。そうすると元々見られているのは石橋だけになるからだ。
「それで妻のことを調べて欲しいんですよ。お願いできますか?」
「構いませんよ。そもそもこちらはお金を頂いているわけですから。まァ 美樹子さんの調査は別途になってしまいますが。…あ、多少は安くしますよ?」
「お願いします」
「わかりました。――それで質問なんですが、美樹子さんはベッドを抜け出してからアパートから出ていると思われますか?」
「それが…そうとも思えないんですよ。寝室からは出てるのに、アパートの部屋にはいるようなんです。一度も外に出た気配はありません」
「不思議ですね」
「ええ。だから正直なところ不倫というのも単に可能性のひとつとして言っただけで、実際は何をしているのか見当もつきません」
 石橋は本当にわからないといったように、肩を竦(すく)めた。
「じゃあ、今夜から俺と名無で張り込みをしましょう」
 また勝手に決めて…。名無は溜め息をすると同時に、昼のうちに寝ておいてよかったなと思ったのだった。


<作者のことば>
この回は中でも納得のいく出来ではなかったところ。
うーん、自分の力量を思い知らされる。

←応援してくれる方はclick!!
[ TB*0 | CO*2 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する
● 訪問ありがとうw
美夏 | URL | 2008/10/27(月) 13:25 [EDIT]
続きがすごく気になる・・・
o(>ω< o) (o >ω<)oジタバタッ!!!

ちょくちょく確認に来ますっ♪

匡介 | URL | 2008/10/27(月) 16:44 [EDIT]
>美夏さん
ありがとうございます!

ぜひ またのお越しを♪

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © みやび萬紅堂。. all rights reserved. ページの先頭へ