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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
Cofee Break ~元エース~
 体育館で白熱するバスケットの試合。男子生徒がボールをパスする。それを受け取った男子はそのままドリブルで数人を突っ切り、リングを彼の射程距離内に収めたが、敵チームの男子が彼の持つボールを取りに突っ込んできたので、彼はやむなくボールを後方にパスをした。これでせっかくの彼の進撃が意味をなくしてしまうことになるが、敵にボールを回すよりは全然マシだ。
 パスを受け取った遠藤 葉月はその華麗な動きで周りの者を圧倒し、リングの周りに引かれた白線の外からボールをシュートした。それはいわゆる3ポイントシュートで、放られたボールはみるみると飛距離を延ばし、見事にリングへと入った。その瞬間、味方チームからは歓声があがり、彼を讃える声もあがった。

***

「葉月クンって本当にかっこいいわよねぇ」
 そう言ったのは保健室の常連である美香だった。もちろん常連というのは保健室でコーヒーを淹れる京介のコーヒー目当ての、という意味だ。
「いつもバスケでは活躍してるし、それにスポーツ万能って感じ♪」
 そう言うと美香はコーヒーを啜る。
「なんで美香さんがヨウの活躍を知ってるのさ?」
 先ほどまで読書にふけっていた順平が話に割って入った。
ちなみにヨウとは葉月のあだ名である。彼の名の葉月の「葉」から取って一部の友達からは「ヨウ」と呼ばれていたりもするのだ。
「なんでって、体育が一緒なのよ」
 この学校の2年である美香と1年の葉月が一緒に体育の授業を受けるというのは、この学校の特殊事情にある。県内でも生徒数が極めて多いこの学校は、クラス数も非常に多く、どうしても授業時間がかぶってしまうのだ。そのせいもあって体育の授業のときは体育館を複数のクラスが一緒に使うというのが生徒数およびクラス数が多いこの学校ならではの特殊事情である。
幸い体育館は他の学校には見ないほど大きく、2、3クラスが一緒に使ってもお互いが邪魔にならなかった。
「そうなんだ~。それで美香さんはいつもヨウのバスケを見ているわけだ」
 ちなみに彼女が葉月の名前を知っているのは、京介伝いである。
「葉月クンかっこいいから♪」
 どうやら美香は葉月にベタ惚れのようだった。しかしそれも無理はない。彼は見た目も悪くない。いや、むしろ良い方だろう。それに加えあの抜群の運動神経に、持ち前の優しさで女子からはかなり人気を獲得していた。
「毎回のように点数獲ってるのよ? すごいと思わない? それも3ポイントが多いの!」
「まぁ、彼は元々バスケ部でしたからね」
 少し興奮気味の美香に京介が言った。
「そうなの? 初めて知った。だからあんなにバスケ上手いんだ~!」
 そこで保健室のドアが開いた。一同が目をやる。入ってきたのはちょうど噂の人物である遠藤 葉月だった。
「ヨウが来るなんて珍しいね」
 順平が言う。
「うん。ちょっと京介のコーヒーが飲みたくなってね」
 葉月がそう言うと、京介はちょっと待ってというようにコーヒーを淹れ始めた。
「きゃー!! 葉月クンだー!!」
 美香が狂喜する。
 葉月は一体どうしたことだと驚いている様子だ。しかしそれも無理はないだろう。
「美香さん、ヨウのファンみたいだよ」
 順平が簡略すぎるほどの説明を葉月に施した。
「美香さんっていうんですか」
 葉月はやっと名前を知ったというふうな様子だった。
「あれ? ヨウ、美香さんのこと知ってるの?」
「うん。だっていつも俺らバスケしてるとこ横で見てるから」
 それを聞いた美香は再び狂喜した。自分の存在を知ってもらっていたことがよほど嬉しかった様子だ。
「そういう洞察力も鋭いのね!」
 美香は満足そうにいった。
 葉月は少々困ったように見える。
「ちょうど今ね、葉月クンの話をしていて、葉月クンがバスケ部だったって知ったところなの」
 そう言われて、葉月は本格的に困ってしまったようだ。
「ええ、まあ。」
「今は? もう部活はやらないの?」
「高校ではやらないつもりです」
「どうして? あんなに上手いのに」
 そこで美香の質問をさえぎるように京介が葉月へとコーヒーを差し出した。
「美香さんがあまりに迫るものだから、彼も困ってますよ」
 そう京介は言い残して下がった。
「俺はそんなに上手くないですよ。元バスケ部だからクラス内でやればそれなりに上手く見えるんでしょうけど、本当にバスケをやってる人を相手にすれば適わないです」
 葉月がそう言い終えると、美香が大声をあげた。
「そんなことないわよー! 葉月クンだったら絶対にいいとこまでいくわ!」
 それを聞いて葉月はさらに困り果ててしまった。
「実は俺、中学でバスケを辞めたのも、元々はケガが原因なんです。試合中に靭帯を損傷しちゃって、しばらくして部を辞めました。本当はもっと続けたかったんですけど、ケガが回復したころにはみんなに置いていかれてるのが目に見えてるし、だったらもうバスケを辞めようって思ったんですよね」
 彼は自身がケガにより、バスケから遠ざからなければならなかったことでとても苦しんだ。ケガが回復した頃には以前より筋力も落ち、基礎体力作りから始めなくてはいけないほどであったのだ。チームの主戦力として活躍してきた彼にとって、チームメイトより実力が衰えてしまったことに大いに苦しんだ。それはずっとエースとして活躍していた彼だからこその苦悩で、以前のようにはできなくてもバスケットを続けたら? という周囲の声は、彼にとって屈辱的なものでもあった。
 彼はそれをキッカケに一切バスケから遠のいた。それは彼自身のトラウマにもなり、彼はずっとボールにすら触れようともしなかったのだ。
それが最近になってやっとトラウマに打ち克ち、彼も再びバスケを楽しむようになった。しかしながらはやりバスケ部というのは彼にとってはタブーのひとつであり、それを考えるとエースでいられなくなった自分への敗北感でいっぱいになるのであった。
「そうなんだ。なんだかごめんなさい」
 場の空気がしんみりとしたことに気付いた美香は素直に謝った。
「いいですよ。別に大丈夫です」
 京介の腕が葉月の手前に伸びてきた。
「おかわり、いるでしょう?」
 そのまま京介は葉月のカップを手に取る。
「ああ、そうだね。もらおうか」
 京介は微笑んで、おかわりのコーヒーを注いだ。


<作者のことば>
このシリーズもかなり初期に書いたものになってしまった。
正直今さら載せるのも恥ずかしい。文章が粗いのもあるんだけれど、ストーリーメイクも納得いかない。改善の余地あり、みたいな。
なんかキャラクターも脆い感じがする。←しかし書き直したりはしない人。

だけど、ぶっちゃけ載せないと更新が途絶えてしまいそうです。

まぁ、こんな時代もあったよ、的な。

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