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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/10/02(木)   CATEGORY: 短篇小説
美しい雨
 狭いライヴハウスのステージ上、少し高めの声で歌う可憐な少女。
 彼女の髪は漆のように黒く、肌は仄暗いライヴハウスの中でもはっきりとわかるほど白かった。ちなみに髪の長さは少し長めで背中の半分の長さはあるように見える。
 ステージ上でひとり歌う美雨を見とれるように眺めていたマコトにとって、彼女の歌声は天使が歌うかのように聴こえた。
 事実、美雨はその天使のような声でライヴ客を魅了していた。彼女がこのライヴハウスで歌い始めてまだ1ヵ月だが、すでにファンクラブでも出来そうなほど彼女のファンらしき客足も見えるようになってきていた。
 この1ヵ月で美雨がステージに上がったのはたった3回。その3回で彼女は着実にファンを獲得してきたのだ。彼女の歌声はそれほど驚異的で、もはやこのライヴハウスの看板のひとりとも言えなくはなかった。

 アマチュアながらシンガーソングライターとして活動している美雨はまだ若干の19歳で、それでいて彼女の紡ぎだす詩とメロディーは人々を魅了するには充分過ぎるほどだった。

 そんな彼女をずっと近くで見てきたのはマコトだ。
 彼は美雨の幼馴染みで、幼稚園のとき以来の腐れ縁である。
 そもそも美雨が音楽の道を歩み始めるキッカケはマコトにある。彼は小学校のときにギターを始めたのだが、彼が5年生のとき美雨も彼に影響されてギターを始めるようになったのだ。
 マコトがギターを始めたのは3年生のときだった。その2年遅れでギターを始めた美雨には才能があったのか、恐るべきほどの上達を遂げ、今ではマコト以上の腕を持っている。
 しかし美雨が今、一部ながら注目を浴びているのはそのギターの巧さのせいではない。それよりも人々が共感できる切ない彼女の詩だったり、そのメロディーセンスだったりの影響の方が大きいと思う。そう、彼女は曲を作ることにとても優れているのだ。

「お疲れさま」
 ステージから降りてきた美雨にマコトが声を掛けた。
「ありがと。どうだった?」
「今日もよかったよ。とても」
 それを聞いて美雨はにっこり微笑む。
「やったね」
 マコトは少しドキドキしながら褒められ喜ぶ美雨を見ていた。
 彼は彼女に恋をしていた。本人はどう感じているのかはわからないけれど、彼の心にあるのは紛れもない恋心だった。

+++

 この半月、マコトは必死に曲作りに励んでいた。
 彼にとって作曲というものは初めての経験ではない。今までに何曲か実際に作ったこともある。それでも美雨の作る曲に比べると圧倒的な力量差がある、とマコト自身は思っていた。
 確かに美雨のメロディーセンスは群を抜いているし、詩も素晴らしい出来だと誰もが思うようなもので、彼女は作曲というものに秀でているのは否めない。しかし、マコトの曲もそう悪くはないのだ。美雨という才能が近くにいたことで、彼の中のハードルは自然と上がってしまっているのかもしれない。だから彼は自分でも納得のいく曲を作れたことはそう多くはなかった。
 そんなマコトも今回だけは上出来といえる曲を作りたかった。もう少しで訪れる美雨の誕生日までには完成させて、自分の作った曲を聴いて欲しいと思っているのだ。
「クソ。俺が作りたいのはこうじゃないんだ」
 試行錯誤。彼はそれを繰り返していた。ところどころ自身でも良いと思えるような箇所がなくもなかった。でも、曲全体の完成度としては彼のイメージとは程遠い。
「あー! 俺には無理なのかよ!」
 俺には美雨のような人を感動させられるような曲を作ることは無理なのかよ。その想いがマコトの心で反芻した。

+++

「最近、なんか疲れてない?」
 美雨がそう言って心配すると、大丈夫だよとマコトは答えた。
「ちょっと夜遅くまで起きててね」
「早く寝ないと体によくないよー」
 マコトの頭を美雨が小突く。
「曲作ってるんだ」
「曲ぅ~? だからって夜更かしはよくないゾ! 少年!」
「誰が少年だよ」
 そう言って2人は笑いあった。
 美雨の誕生日は明後日に迫っている。マコトの曲の完成も間近だった。順調にいけば今夜中には出来るだろうとマコトは予想していた。

+++

 ヴヴヴヴヴヴヴ…

 深夜0時20分。美雨のケータイが鳴った。
「もしもし?」
「あ、俺だよ」
 ケータイの通話口の向こうから聞こえてきたのはマコトの声だった。
「誕生日、おめでと」
 それを聞いて美雨は驚く。
「あー、そっか。今日誕生日だ。アタシ」
「なんだよ。自分で忘れてたの?」マコトはあきれた声で言った。
「んー、忘れてたね。見事に」
 そう言って美雨は笑った。
「あきれたやつだね」マコトも笑う。
「本当にねー」
 ケラケラケラ。
「聴いて欲しい曲があるんだ」
「曲?」
「うん。俺が作った曲」
「へぇー、もしかしてアタシの為に? 嬉しいなぁ」
「今、そのまま聴いてくれる?」
「電話で?」
「そう」
「わかった。いいよ」
 美雨のケータイからはギターのチューニング音がもれた。しばらくするとマコトの声が聞こえてくる。「いくよ?」。そう言って彼はギターを弾きはじめた。美雨には始まってすぐにわかった。この曲がとても良い曲だということが。
 そのまま数分間、美雨はケータイから聴こえてくる曲に耳を傾けた。歌詞も良い。自分を想ってくれている曲だというのがとても伝わってきて、思わず涙が溢れそうになる。
「どうかな?」
 曲が終わって、マコトが感想を求めた。
 美雨は何も言わない。
「ダメだった?」
「…よかった」
「マジ?」
「マジ」少し涙声になってしまって美雨は戸惑う。
「なに? 泣いてるの? 感動した?」
「バカヤロウ」
「図星かよ」
 少しの沈黙。
「この曲、今度のライヴで歌ってもいい?」

+++

 20歳になって最初に迎えたライヴ。
 美雨はいつものように狭いライヴハウスの狭いステージにギターをぶらさげてひとり立っていた。
「この曲は、幼馴染みがアタシの誕生日の為に作ってくれた曲です」
 ライヴ客と一緒に居たマコトは少し照れてステージから目をそらす。
「美しい雨」
 そう言って美雨は歌い始めた。それはタイトル通りの美しい曲だった。
 そのときこのライヴハウスにいたものはみんな魅了されていた。ひとりの男がひとりの女に贈った一曲に。


<作者のことば>
書いたのは結構前になるんだけど、書き直しは面倒だしそのままで(笑)
ストーリー自体は気に入ってるんだけど、当時は文章力に限界を感じてました。←なのに書き直さない。

美雨はお気に入りのキャラクターで、実は某漫画のあるキャラクターが元になっていたりする。
ちなみにそれはその漫画のメインキャラクターではなく、途中少しの間だけ出てくる脇役のキャラクター。でも個人的には好きなのだ。

でも性格的にはまったく似てない(笑)

だけど美雨は好きです。


ぴーえす。

実は同じブログに小説を載せている方で、大好きな物書きさんがいるんですが、もう何ヵ月もブログを更新されてませんでした。
でも昨日、久々に更新があって嬉しかったです。

個人的にとても文章が好きで、参考にさせてもらっているくらいで。

なんかすっごいパワーをもらった気がします。
なんだか小説書くぞー! って気分(笑)

本当に復活おめでとうございます♪

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COMMENT

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momocanal | URL | 2008/10/02(木) 20:38 [EDIT]
萬紅堂さんは、ホント多作で凄いなぁ、、、
前、コメントで言われたように、確かに小説だけだと、忙しくなると続けられませんね。
長編とかを忙しいときに、やっつけでやってしまうと後で話の持っていき方に困りますしね。それで、日々のことなども書くことにしました。更新だけはとぎらせないよう頑張ります♪

匡介 | URL | 2008/10/03(金) 02:48 [EDIT]
>momocanalさん
そんなに、量多いですか?
でも、そろそろマジで厳しくなってきてます(笑)

前に何を言ったかなぁ? と思っていたのですが、何か気楽にとか言ったの、かな?←曖昧(笑)
俺も最初は小説だけを載せていこうと思っていたのですが、まぁ 自分あっての小説だし、ということで自分のことも載せてますよ。
別にこれで食べてるわけではないので、ゆる~いスタンスで頑張ろうと思います。てゆーか、一緒に頑張りましょう!(笑)

しかしフランスにいらしていたんですね! やっぱりパンが長かったりするんですか?←そこか(笑)
フランスと聞くと大崎善生さんの小説を思い出します。大崎さんは俺の大好きな尊敬する作家さんなんですが、ヨーロッパを舞台とする話も多いんです。「ロックンロール」とかフランスだったはずです。
一度は行ってみたいなぁ、とか思っていたり。

銀チョコを食べるクマ(銀クマ) | URL | 2008/10/04(土) 13:20 [EDIT]
足跡をたどってきました~!銀クマです。小説を読ませてもらいました。全体的に、まとまりがあって読みやすかったですよ♪自分も小説といっても、趣味で、書いているだけなんですがねw

多分、ネタになっている物をしらないと、自分の小説は面白くないとおもいます(・w・;)こうやって、小説を載せている人たちのサイトやブログを見てますが、勉強になります。どこをどんな風に表現するかとかを勉強させてもらいますb

これから、もしよかったらブログリンクとブロとも申請をしてくれませんか?そして、自分の小説を読んで、ダメなところとかをおしえてくれると幸いです。まだ、載せてはないんですけどね(ぁ

最後に、自分のブログに訪問していただきありがとうございます♪

匡介 | URL | 2008/10/06(月) 16:15 [EDIT]
>銀チョコを食べるクマ(銀クマ)さん
リンク構いませんよー。こちらは先にやらせてもらいました。
まぁ 参考になるかはわかりませんが、何か学べることがありましたらどうぞ(笑) そのうち小説の方を覘きに行かせてもらいますね~。

どうぞ、よろしくお願いします。

リュゼ | URL | 2009/11/05(木) 10:16 [EDIT]
はじめまして!
足跡を辿ってやってきました(^^)。
たくさんお話書かれているんですね!
どれを読もうか迷いましたが、美しい雨、タイトルが綺麗で選びました。
タイトルのイメージ通り、透明感のあるお話だなあ、と思いました(^^)。

面白そうなタイトルが一杯並んでいるので、また読みに来ますね!

匡介 | URL | 2009/11/06(金) 17:42 [EDIT]
>リュゼさん
初めまして。
コメントありがとうございます!

タイトルは多いですが、どれも読みやすい長さだと思うので
「多っ!」と気圧されずに読んでやってください(笑)

またのお越しを是非是非お待ちしておりますので♪

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