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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/09/28(日)   CATEGORY: 短篇小説
平成妖異奇譚(7) 「食人鬼Ⅳ」
 魍魎退治というわけのわからない行事に無理やり参加させられた僕だが、愛染の他にはまたもや袈裟姿の劉心と、縦にも横にも脹(ふく)れた田島氏。そして見知らぬ少女の姿があった。
「久し振りだね。ぶふぅ」
 田島が息苦しそうに挨拶をしてきた。心なしか以前より太ったようにも見える。
まァ、あれだけのチョコレートパフェを食べていれば当然と云えば当然のことで、どうにも自業自得である。
「では、行こうか」と愛染が云った。
 僕以外のメンバーはこれからすることを理解しているようで、僕だけが何もかも置き去りである。どこかへと歩み始めようとする彼らを見て、どうしても僕は問わずにはいられなかった。
「行くってどこへ?」
 田島が目を丸くして僕を見た。
 それを見て、僕は呆けるようにぽかんとしていた。
「國彦くぅん、彼に説明をしてやっていないのか?」
 田島が愛染に訊ねた。
 田島の後ろには少女が引っついている。
「ああ、そう云えばまだだったね。どうにも神宮寺君は例の妖怪によって、混乱しているようだったから、タイミングを見て話すつもりが、どうも忘れてしまっていたようだ」
 愛染はごめんごめんと僕に謝った。
 それで許してもらえると思っているのだろうか。僕の怒りと戸惑いは相当なものだ。
「まあ、歩きながら話そうか」
「ぶふぅ。是非そうしてくれたまえ」
 そうして僕ら一行は歩き始めた。
 傷痕でツギハギ顔の愛染に、目隠しとピアスをした袈裟坊主に、少女を連れた肥満のすぎる男。どう考えても異様な光景だ。もしかすると妖怪以上に不気味な面子(めんつ)となっているのかもしれないなと思った。
 愛染の話によると、僕らは先の殺人鬼を捜しているらしい。まあ、それは予想が出来ていた。彼が「魍魎退治」と云ったところからも推測が出来るからだ。
 では何故、警察ではなく僕らが例の殺人鬼の捜索に当たっているかということだ。それは簡潔に云うと、田島氏の依頼なのだそうだ。よくはわからないが、田島が殺人鬼を捜していて、それを僕らが手伝っているということになる。
「僕が捜しているのは研究対象の男でね。とても貴重なサンプルなんだ。ぶふぅ。ちょっとした実験で、施設の外に放してみたら、我々はあっという間に彼を見失ってしまってね。まァ、なんとも情けないことなんだが、ぶふぅ、こうしてまた國彦くんに手伝ってもらっているわけだよ」
 田島のせりふにあった「また」という言葉が気になったが、その場は触れないことにした。どうにも説明が長くなりそうだからだ。
「でも、どうやって捜すんです? まさか夜が明けるまでこうやって殺人鬼が再び現れるのを待つんじゃないでしょう」
「そこで劉心を呼んでいるわけだよ。それに彼女も」
 そう云って愛染は僕がずっと気になっていた少女を指さした。
 少女は田島の陰に隠れている。もしかすると人見知りする質(たち)なのかもしれないが、この奇人怪人のふたりが揃えば、彼らを見て彼女が怖がっているとも当然のように考えられる。
「さっきから気にはなっていたんだが、その少女は誰なんだ?」
 僕は率直な疑問をぶつけた。
 愛染の傷痕がぐにゃりと歪む。彼は笑んでいた。
「彼女こそが例の巫女だよ。未来を読む少女さ。忘れてはいないだろう?」
 そんな話を聞いたこともあったな、と僕は思い返していた。
 確か非常に優れた記憶力と計算・推理力で、近い未来を見通すことが出来るという少女のはずだった。その未来を読む力に霊的な要因がないとも言い切れないが、とにかく予測と推測に尋常ではないほどに長けた少女なのだ。
 その少女は一見、普通の女の子だった。そこらへんを歩いていたとしてもまったく気に留めないような、何とも一般的な少女の姿だった。とても特別な力が備わっているとは考えつかない。
「彼女の予知では、犯人は今日このあたりに現れるはずなんだ」
「ぶふぅ、その通りだ」と田島も加わってそう云った。
「愛染、その犯人を見つけたらどうするつもりなんだ?」
 一般論で考えるとするならば、犯人を見つけても一筋縄で捕まえることは出来ないだろう。そもそも相手は凶悪な殺人鬼なのであるし、どうして僕らがその捕獲に成功することが出来るだろう? これは最初から無茶な計画なのだ。最悪の結果としてこちらの命が危ない。しかもその最悪が中々の高確率でくるときたもんだから堪ったものではない。
「それはそのときの状況によるさ。なに、こちらはこの人数だ。どうにかなるだろう」
 僕の思っていた以上に愛染の計画は適当だった。
 というかそもそもこんなもの計画とさえ云えない。ただの無謀でしかないのだ。
「ぶふっ、見つかりさえすればこちらのものだよ。君を危険には晒させやしないさ」
 そう田島は云うが、大体にしてすでに充分過ぎるほど危険と云えるではないか!
 僕は心中穏やかではなかった。無事に生き延びることが出来るだろうか。この面子と一緒よりか、数多(あまた)の妖怪どもと一緒に百鬼夜行と洒落込む方がずっとマシだというものだ。それほどまでに何とも信じがたい連中と僕は夜道をともにしているのだ。それも行く先には極悪非道なる残忍な殺人鬼が待っているのだから、何度も云うが堪ったものではない。
「劉心、何かにおうかい?」
 会話の間を縫うように愛染が訊ねた。
 それに対して「まだ何も」というのが劉心の答えだった。
 田島はいつの間にやらどこから取り出したのか板チョコなどをほお張っている。
 未来を読む少女は相変わらず、そんな田島に引っつくように歩いていた。
 僕たち一行はしばらくの間、真夜中の散歩を楽しむことになったのである。


<作者のことば>
確か、「未来ヲ予測スル少女」を書いていたときは、のちにこの少女が出てくるなんて考えていなかったように思う。けれど食人鬼編でまた出てきてしまった。
ついに今まで出てきたキャラクターが勢揃いしてしまう今回だが、想像してみると、相当怪しい一行だ。警官に職質をされても文句は言えまい。

そんな中で自分が意外にも気に入っているのは田島 章兵だ。

彼は自分が書く小説のキャラクターとしては珍しい。
そもそも太ったキャラが初めてだったりする。それにこんなにも癖の強いやつはいなかったような気もする。

いくらフィクションの世界とはいえカッコイイやつばっかではやはりつまらないと思う。
そういう意味では、田島のような人間は重要だ。こういうキャラを今後も生み出さなくてはいけないと思う。

「平成妖異奇譚」の登場人物はとても個性的だ、と思う。
今までも個性的で魅力のあるキャラクターを登場させ、活躍させてきたつもりだけれど、ここまで人間として異色なキャラはいなかったんじゃないか。

やはり一度インパクトの強いキャラたちが登場すると次回が苦しい。
俺はさらに自分を振り絞って今後のキャラクター作りに励まなきゃいけないなぁ、と思うと、自分に「頑張れ」と言いたくなる(笑) 俺は頑張ります! なので末永くお付き合いください(笑)

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COMMENT

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卍ふくろう卍 | URL | 2008/09/29(月) 21:58 [EDIT]
訪問ありがとうございました。
出来れば相互リンク結んでいただけるでしょうか?
返事待ってます。

Yuka | URL | 2008/09/30(火) 09:45 [EDIT]
友達にすごく太っている男の子がいます。 1度自転車を貸してあげた事があったのですが、急ブレーキをかけたら重さで前方へ受身をするように一回転しました・・・ 自転車ごと!!
彼の体重に比べれば、自転車の重さなんか無いも同然といった所ですね!



匡介 | URL | 2008/09/30(火) 16:25 [EDIT]
>卍ふくろう卍さん
どうも、こんにちは。
リンクの件は全然OKです。先にこちらからリンクさせてもらいますね。

是非、仲良くしてやってください。

匡介 | URL | 2008/09/30(火) 16:27 [EDIT]
>Yukaさん
それよりそんなアクロバットのあと、その彼はどうなったか気になります。まさか車輪で着地!?(笑)

Yuka | URL | 2008/09/30(火) 20:51 [EDIT]
ええ、車輪で着地して無傷でした! 側で見ていた人が拍手してくれたのですが・・・
「もう他人の自転車は危険だから借りない!」だそうです^^;

たぶん後輪ブレーキが死んでいて前輪を思いっきり掛けたところ回転したんだと思います。

匡介 | URL | 2008/10/01(水) 09:30 [EDIT]
>Yukaさん
すげぇー(笑)
見てみたい&やってみたいっすねー。

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