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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/08/22(金)   CATEGORY: 「怪奇蒐話」
「エミコ」
俺は仕事が終わると急いでエミコのアパートへと向かった。
エミコと付き合って1年になるが、今までは何の問題もなく過ごしてこれた。
しかし、数週間前から俺たちの平穏を乱す奴(やつ)が現れたのだ。


数週間前から俺の部屋に変な手紙が届くようになった。
最初はただのラブレターのようなもので、好きです、なんてことが書いてあっただけだった。

しかし、その手紙は毎日のように部屋に届き、内容も日々過激になっていた。
俺のどんな仕草が好きということから、どの黒子(ほくろ)位置が好きだということまで、それはラブレターというものも領域を超えたものだった。

低い声が好き、優しいところが好き、動物が苦手なところが可愛い、今日は何をした、貝類が嫌いなところは私と一緒、あそこへ行きたい、次の休みはどうしてるの?

それはもう俺の彼女気取りとしか思えないような異常な内容だった。
そしてついに恐るべき手紙がきてしまったのだ。


『あの女は誰? どうやら自分をあなたの彼女だと思ってるみたい。』


そして4日前にきた手紙には、


『あの勘違い女をして殺してあげるわ。あの女ってば、あなたが迷惑してるのにも気付かないようだし、それが当然の報いだと思うの。』


その手紙の内容を知ってしまったエミコは怖がってしまったので。俺は出来るだけエミコのそばに居るようにしていた。


エミコの部屋の前に着きインターホンを押した。
反応がないので鍵を探した。鍵を鍵穴に差し込んで回すとガチャリという音がした。

ドアを開けて部屋に入るとエミコはTVを観ていた。
部屋は暗くTVの明かりだけが部屋を照らしていた。
「遅くなってごめん。」と言うとエミコは気にしてないという風にTVを観たまま頭を横に振った。

「部屋の電気も点けないで。どうかしたの?」

そこでケータイの着信音が鳴った。
「もしもし?」と電話口に話すと返ってきたのはエミコの親友の声だった。

「ああ、どうかしたの?」
「エミコが、エミコが!!」
「ああ、エミコなら…」

「エミコが刺されて運ばれたの!!」

え?

俺は意味が解らなかった。
現実にはエミコはこの部屋に居てTVを観ている。

「落ち着いて。そんなはずないよ、エミコなら部屋に居るよ。」

「何言ってるの!? 私は今病院に居て、エミコは手術中なのよ!!」

俺は混乱(パニック)を起こした。
じゃあ、この部屋に居るエミコは誰だというのだ。

足の裏が冷たさを感じた。
水でも零(こぼ)れているのか足元が濡れていた。

俺はとりあえず部屋の電気を点けた。
エミコの方に目を遣ったが、TVを観ているエミコの背中しか見えない。

「エミコ?」

濡れた床が目に入った。
確かに濡れている。

真っ赤に、

血で濡れていた。


「やっと2人きりになれた。」


その声はエミコの声ではなかった。
TVを観ていた女はいつの間にかに目の前に立っていて、血で濡れた床見ていた俺の視界には女の足が入ってきた。

「誰だ?」

俺の視線はまだ女の足元に向いていた。

「ひどいわ、私を忘れたの?」

「エミコよ。」

俺は「嘘だ。」と呟いた。
すると「本当よ。」と女は言った。

俺は視線を上げて女を見た。

手にはエミコを刺したと思われる包丁が握られていた。




「また私を愛してると言って頂戴。」


<作者のことば>
最初期に書いたもの。
意外と書き始めの頃の方が気に入っていたりする。

でも「怪奇蒐話」に収めるのはどうだったかな。
まぁ そんな厳密に分けてるわけでもないからいいか。

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COMMENT

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lolina | URL | 2008/08/22(金) 22:42 [EDIT]
新しい小説ですね。
恐ろしいストーリのようで、ハッハッ。
今度の小説は同じく面白くて、私はずっと読みます~~
頑張って!~^^

錆浅葱 | URL | 2008/08/22(金) 23:40 [EDIT]
…今日 夕方ちょうど「本当にあった怖い話(再)」やってて…
怖いな~とか思ってたら、何と こちらも今日は恐いぃ(T_T)


匡介 | URL | 2008/08/23(土) 02:57 [EDIT]
>lolinaさん
新しいといっても読みきりの短篇ですが。
結構怖い話を書くのが好きなんですよねー。

匡介 | URL | 2008/08/23(土) 02:59 [EDIT]
>錆浅葱さん
それは偶然ですね(笑)
実はどちらかというとホラーテイストの話を書くのが好きなのです。今は短い文章でいかに読み手の恐怖を煽れるかということに挑戦しているのですが、もっと技術が向上したらいずれ本格的なホラーを書いてみたいと思ってます。
● 初めまして
紫苑あかね | URL | 2008/08/23(土) 20:09 [EDIT]
匡介さん、こんばんは、初めまして。

【緋沙子's novel Ⅱ】さんより飛んでまいりました。
季節柄、こういうお話はイイですね。
本当に怖い思い・・・霊系体験があるため
こういうお話は書けない私です。
でも読んだり、観たりは好きです。

またお邪魔しますね。よろしくお願いします。

匡介 | URL | 2008/08/23(土) 20:19 [EDIT]
>紫苑あかねさん
初めまして。緋沙子さんのところからお越しくださいましたか、ありがとうございます。
ホラー好きですか? 実はホラー映画が好きなのですが、最近は心底怖いと思うようなものを観れていません。もしオススメがありましたら教えてくださいね。

こちらこそよろしくお願いします。
またのお越しをお待ちしていますね。

宝來りょう | URL | 2008/08/23(土) 21:26 [EDIT]
ストーカーに遭った実体験のあるあたいはなんま怖かったわ。
玖堂センセはホラーもの、うまいからさ。
それにしても、彼らのあの思い込みは一体どこからくるんだろうねぇ(*_*;

関係ないんだけど、本物の「エミコ」さんが助かりますよーに。

匡介 | URL | 2008/08/23(土) 21:44 [EDIT]
>宝來さん
んー、初期作品なのでそううまくもないと思いますが。
まぁ程度にもよるのでしょうが、ストーカーには気をつけてくださいね。

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