みやび萬紅堂。
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~クリスマスの小さな風景~
 やけにカップルが多く思えるのは、きっと気のせいではないだろう。
 とある書店でアルバイトをしている隆太はそんなカップルたちを横目に、レジ打ちを続けた。
 今日はクリスマスだ。しかし隆太には何の予定もなかった。
「はあ」
 つい溜め息が漏れた。
「これ、お願いします」
 レジに差し出された本は、隆太の好きな作家のものだった。
 クリスマスをテーマにした短篇集で、もちろん隆太も読んでいた。読み手を温かな気持ちにさせる、いかにもクリスマスらしい内容だった。
 顔を上げると、隆太はこの本を差し出してきた女性の顔を見た。
 ――とても美しい女性だった。
 隆太の動きが一瞬止まった。
「大丈夫ですか?」
「――え? ああ、はい。すみません」
 どうしてだろう。凄く胸がドキドキしている。――これって一目惚れ?
何でもいいから話しかけたい、そう思った。「この作家、僕も好きなんですよ」。そう言えたらなんていいだろう。そうすれば、きっと「そうなんですか」と彼女の笑顔が見ることができる気がする。
「ありがとうございました」
 結局、何も言えはしなかった。いつも通りに本の代金を告げ、それを受け取って、本を渡しただけだった。
 ――また会えるだろうか。
 ――また会えたらいいな。
 隆太の鼓動はまだ早く脈打ち、彼の気持ちを昂らせていた。


 ***


 今日はクリスマス。小川 律はこれから友達と一緒に遊ぶ予定だった。
 美緒と夏実のふたりと遊ぶのは確かに楽しい。律もふたりを親友だと思っているのだが、しかし、やはり今日はクリスマス。本当に会いたいのは、いつもの女友達ではなく、ひとりの男子。
 律は同じクラスのある男子のことが好きなのだが、それは片想い。実は女子の間で人気がある彼に、今日の予定を訊くことは怖くて出来なかった。もし彼女とかいたらどうしよう。そう思うと胸が苦しくなる。他の女の子と仲良くしているところなんて見たくもないし、想像するのも嫌だった。
 ゴトン。自動販売機から缶が吐き出される音。
「あー、間違えた!」
 男が突然大声を上げた。
 律は思わずビクッと体を震わせた。――え? なに?
「あ、」男が振り向いて律の存在に気付いた。「ねえ、キミにこれあげる」
「え?」
「飲んでいいよ」
 渡されたのはホットのミルクティー。冷えた手が熱さを感じた。
「あ、いたいた。吉川先輩!」
 男が現れて、律にミルクティーを渡した――吉川というらしい――男に駆け寄った。
「ん? 先輩の知り合いですか?」
「いや、知らん」
「はい?」
 男の頭上に「?」が浮かんでいるのがありありと想像できた。
「小銭ある?」
「はあ、ありますけど…」
「じゃあ、貸して。さっき間違えて買っちゃって小銭なくなった」
「いいですけど、吉川先輩返してくれたことないじゃないですか」
「たった120円でそんなこと言うなよ」
 結局、男は吉川に120円を奪われ、それで吉川は缶コーヒーを買っていた。
「じゃあね、バイバイ」
 嵐のように過ぎ去っていった、そんな感覚だった。律は呆然と立っている。ただ、その手にはミルクティーが握られていた。


「ごめん少し遅れるね! でも急いで行くから~!」
 夏実からの電話を切って、律はふぅと息を吐いた。美緒もまだ来てはいない。
「あれ? 小川じゃん」
 不意に声をかけられて、律はまたもやビクッと体を震わせた。
「なに、驚いてんだよ」
 聞き覚えのある笑い声に振り向くと、そこには藤岡 諒(まこと)が立っていた。
「諒君…」
「誰かと待ち合わせ?」
「うん、友達と」
「そっか。しかし今日は寒いなぁ」
「……あ、これ、飲む?」
 律は持っていたミルクティーの缶を差し出した。
「お、もらっていいの?」
「うん、いいよ。わたしも飲みたかったわけじゃないし」
「俺、ミルクティー好きなんだよ」
 諒の笑顔にドキドキする自分がわかった。律の鼓動がドンドン高まる。
 ――ミルクティーを好きだってこと、知らなかった。
 新しい諒を知った喜びがじわじわと律を包み込んだ。
 それは律にとっての、小さなクリスマスプレゼント。

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~クリスマスの風景~
 本棚に手を伸ばして、一冊の本を引き抜いた。お気に入りの作家の新刊だった。
「新しいの出てたんだー。最近本屋に寄ってなかったからなぁ」
 ぱらぱらとページをめくってみた。どうやらクリスマスをテーマにした短篇集のようだった。今日は25日。クリスマスの気分に浸るには、やや遅い気もした。
「クリスマス、か」
 特別な何かがあったわけでもない。クリスマスらしいことなんて何もしなかった。しいて挙げるなら生意気な弟にプレゼントをせびられたくらいか。高岡舞子はハアと溜め息を吐いた。
「最後に少しくらいクリスマス気分になってもいいか」
 舞子は手に取った文庫本を持ってレジへと向かった。


 外は息が白く染まるような寒さだった。どこかでお茶でもしていこうか。そう思ったが、周りはクリスマスらしくカップルばかりが歩いていて、やはりやめておくことにした。きっとどこのカフェのカップルだらけなのだろう。その中に女ひとりなんて気が滅入る。
 そうなれば早く帰るに越したことはないと思い、足早に歩き出した。そのとき舞子の名前がどこからか呼ばれた。
 寒さでうつむき気味だった顔を上げると、そこには見慣れた顔。自分が勤める学校の生徒である高谷京介だった。
「京介君」
「先生、こんにちは」
2人はそれなりに親しい仲だが、舞子が学校の外で彼と会うのは初めてだった。「こんなところで会うなんて、奇遇ね」
「そうですね。先生はこれからどこかに?」
「ううん、もう帰るところ。京介君は?」
「コーヒー豆が無くなってしまったので、買いに」
 コーヒー好きの京介らしいな、と舞子はつい微笑んでしまった。
「今日は寒いですね」
「そうだね」
「もう用が済んでいるのでしたら少し暖まっていきませんか? 近くに良いカフェを知っているんですけど」
「それはデートのお誘い?」
「そうかもしれませんね」
 京介が冗談っぽく笑った。
「じゃあ、行きましょうか」
 舞子は京介の腕を掴んだ。まるで周りと同じカップルのように。
 京介は仕方ないな、といった顔で舞子の好きにさせた。そしていつものカフェへと歩き出した。


***


 進藤順平は本屋に通うのが日課だ。本好きが高じて、本屋にいるだけで楽しいと感じる。目的を持たずに本棚を眺め、たまに面白そうなものがあったら手に取ったりして本屋での時間を過ごす。それは今日も同じだった。
 本棚にある本のタイトルを順に目で追っている途中、ふとレジカウンターの方へ目を向けるとそこには見慣れた姿があった。「――舞子先生?」
 順平の通っている高校の保健室医だった。順平は保健室で本を読むことも多いので、舞子とは仲が良かった。声をかけるため彼女に近付こうと体の向きを切り替えたそのとき、
「あれ? 順平君?」
 と自分が声をかけられた。
 振り返ると順平のすぐ隣には同じ高校に通う一年先輩の高田美香が立っていた。
「ああ、美香先輩か」
「何よ、その言い方は。あたしじゃ不満なのかしら?」
「まあ、少しは。とびっきりの美女じゃなくて残念だったかな」
「相変わらず可愛くない子ね」
「先輩は、少しは可愛いよ」
 順平の言葉に、美香は彼の額を指ピンと弾いた。
 額をさすりながら順平はレジを見たが、もう舞子の姿はない。
「ねえ、順平君のオススメの本ってない? なにか読みたいんだけど、普段はそんな読まないからどれ読もうか決まらなくて」
 しばらく考え込んで、順平は一冊の本を取り出した。
 面白い本はたくさんあるが、その中でも読みやすいと思われる本を選んだ。普段あまり本を読まない人間と毎日のように読書にふける人間では同じ作品を読んでも、面白さが違う。本を読み慣れていない人間は、面白くなる前に読み疲れてしまうことがあるからだ。
「じゃあ、これ買おっと」
「え……そんな簡単に決めて……」
「だってオススメなんでしょ?」
「まあ」
「だったらこれでいいよ」
 順平は少しハラハラしながらレジに向かう美香を見送った。
 もし面白くなかったらなんて言われるだろうか。一応面白い自信はあるのだが、それも個人の感覚でしかない。
 すぐにレジ袋を携えた美香が戻ってきた。
「コーヒーでも飲みながら本を読みたいなぁ。どっか近くにいいところ知らない?」
「だったら近くに京介に教えてもらったカフェがあるけど」
「じゃあ、そこ行こう」
「俺も?」
「いいじゃない。どうせ道案内は必要だし」
「まあ、いいけどね」
 美香に引っ張られて店を出た。外は寒く、確かに熱めのコーヒーの一杯でも飲みたくなる。
 順平は美香に急かされながら、寒空の下を歩いた。


 ***


 バスに乗るのは久し振りだった。
 いつもはバイクで移動している智明だったが、昨日から愛車の調子が悪い。仕方ないので整備に出していた。クリスマスなんて自分には関係ないが、それにしたってツイてないなと思う。特別なことなど期待しないが、せめて普通に過ごしたかった。まさかクリスマスに自分からバイクを取られるとは。
 周りを見ると車内はカップルで溢れていた。決して嫉妬ではないが、そんな中に自分がいると思うと気分が滅入る。カップルは好きなだけイチャつけばいいと思う。しかし自分の見えないところでやって欲しい。見ていて鬱陶しかった。
 バスが停車した。女の子が乗車してきた。


 今日はクリスマス。いやにカップルが目につく。
 美奈はそれを見て羨ましいと思った。好きだった先輩と楽しくクリスマスを過ごせていたら、と思った。美奈は以前好きだった先輩に告白をした。仲が良くて、一緒にいて楽しい先輩だった。きっと先輩も自分のことを好く思ってくれているに違いない、そう思って告白をした。しかし先輩は自分のことを「後輩としか見れない」らしい。
 そのときのことを思い出すと今でも泣きそうになる。――ああ、仲良く手を繋いで、羨ましいな。
 そう思いながら美奈はバスに乗り込んだ。
 すると見覚えのある顔。
「あ、猫舌の人」


 智明は困惑していた。バスに乗り込んできた女の子と目が合うや否や「あ、猫舌の人」と言われた。確かにそれは事実だが、誰だったろうか?
「あのときは、どうも」
 美奈は智明の隣の席に腰を降ろした。
「……え? 誰だっけ?」
 ストレートな疑問。普通、それを言うかな、と美奈は苦笑しながら説明をする。
「前に、缶コーヒーをおごってもらった」
「コーヒー?」しばし智明は記憶を探り、そしてやっとの思いで思い出した。「ああ、あのときの」
 美奈は思い出してもらえたことが嬉しくて智明に寄った。
「少し近いって」
 少し照れたように智明が言う。
「また、話を聞いてもらえますか?」
 どうしてか、自分はこの人に心を許していると美奈は思った。
 どこか優しい空気を漂わせている。もしかして、好きってこういうことなのだろうか?
 自分は全然この人のことを知らないけれど、このバスに揺られている間で、いくらか仲良くなれると嬉しい。そう思いながら、美奈は智明に話かけた。


 ***


 コーヒーの香りを愉しみながら、遠藤葉月はカップに口をつけた。
 冬の冷気で冷えた体がゆっくりと温まっていくのを感じた。「相変わらず美味しいですね」
 遠藤葉月の言葉に、カフェのマスターはにっこりと微笑む。
「ゆっくりしていってください。きっとそのうち京介君も顔を見せてくれるでしょう」
「本当によく来ているんですね」
「ええ。お得意様です」
 葉月は笑って、もう一度カップに口をつけた。ふと窓の外を見遣る。
 ――おや?
 彼がカップを置くと同時に店のドアが開いた。
「いらっしゃいませ」

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~クリスマスプレゼント~
 ちらほらと雪が降り注ぐ。冷たい風を避けるように店内に入った。
 空いている席に腰を掛けて、絵美はメニューに目を通した。向かえに座る佳恵はすでに頼むものは決まっているらしい。慣れているせいかメニューを手に取ることもしなかった。
「ここの彼、ほんっとカッコイイんだから!」
 この店には佳恵のイチオシだという男の子がいるらしい。本当に熱を上げているようで、ここ最近は通い詰めていると絵美は聞いていた。おかげで今日はいつも行く馴染みの店ではなく、佳恵たっての要望で、今日はこの「F’sカフェ」でのカフェタイムになった。
「お決まりでしょうか?」
 スッと現れたのは、端正な顔立ちの男だった。その艶やかな黒髪が、何とも言えない色気を醸し出している。胸元には「黒戸」とあった。絵美は何も言われずとも、彼が佳恵の意中の人だと理解出来た。
「わたしはオリジナルブレンドを」
まだ決めていなかったので、絵美は佳恵と同じものにした。「じゃあ、同じものを」
「かしこまりました」モノクロームの制服がシャープな印象で、とても似合っていた。でもきっとこの子は何を着ても似合うだろうと絵美は思った。「いつもありがとうございます」
「聞いた? いつもありがとうだって~!」黒戸が下がると佳恵があからさまに喜んだ口調で言った。「わたしのこと覚えてくれてたのよ!」
 そりゃ連日通い詰めていたら誰だって覚えるだろう。そう思うと絵美は笑ってしまった。
「あー、わたしにとっては最高のクリスマスプレゼントだわー」
「あら、じゃあわたしからは何もいらないかしら?」
「貰える物があるなら是非とも頂くわよ?」
 しばらくして、絵美たちのもとにコーヒーが運ばれてきた。
 それと一緒に、ショートケーキが2つテーブルに置かれる。「え?」
「ケーキは頼んでませんよ?」
「いえ、これはサービスです。いつもお越し頂いているので、当店からのクリスマスプレゼントですよ」
 黒戸が微笑んだ。それを見て、これはモテるな、と絵美は確信した。佳恵の気持ちがわからないでもない。
「他のお客様には内緒ですよ」
 ああ、佳恵のハートが射抜かれたな。絵美は小さく笑った。


 ***


 時計に目をやると時刻は23時を回っていた。絵美は小さくあくびをする。
 せっかくのクリスマスなので、気合いを入れてちょっと豪華な料理を準備して旦那の帰りを待っていた絵美だったのだが、少し遅くなるとのメールを最後に連絡はない。「あー、もうクリスマスなっちゃうよ」
 仕事熱心なのもいいが、たまには早く帰ってきて欲しいと思う。そのおかげで、今の暮らしが成り立っていることはわかっているけど、今日くらい早く切り上げても何も問題はないのではないだろうか。
「せっかく頑張って作ったのに…」
 少しだけウトウトしてきた。絵美はもう一度時計を見て、小さく溜め息を吐いた。


 コーヒーの香りが漂ってきて目が覚めた。いつの間にかに寝てしまっていたらしい。瞼をこすって目を開けると目の前には包装されたプレゼントが置いてあった。
「メリークリスマス」
 隣を見ると旦那がコーヒーを飲みながら微笑んでいた。「ただいま」
「遅くなってごめん。急な仕事が入っちゃってさ、なかなか上がれなかったんだ。クリスマスの日に部下を残して家でゆっくりってのも出来ないだろう?」
 絵美は目の前に置いてあったプレゼントを手に取った。「これ、開けてみていい?」
「もちろん」
 包装を外すとその下からは本のようなものが現れた。どうやら画集のようだ。
「これ…」思わぬプレゼントに絵美は驚きを隠せなかった。「わたしが欲しかったやつ。――知ってたの?」
「キミのことなら何でも知ってるよ」
 そんなにも自分はわかりやすいだろうか。自分でも憶えていない些細な一言をちゃんと憶えていてくれた? いつかも似たようなことがあった気がする。
「ありがとう」
 本当に敵わないな、と思う。佳恵には悪いけれど、自分にとってこの人以上に素敵な人はいない。
「じゃあ、食べようか」
 外では雪が降りしきる。絵美は何より幸せをプレゼントされたような気がしていた。そして自然と笑みがこぼれている自分に気が付いた。

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DATE: 2009/12/24(木)   CATEGORY: 短篇小説
クリスマスの奇跡
 路肩に積もった雪を眺めながら車を停めた。
 助手席に置いていた包装されたプレゼントを持ってマイクは車を降りる。玄関のインターフォンを押し、少し待つとドアが開いた。「メリークリスマス」
 出迎えてくれたアナはにっこりと微笑み、慣れた手つきで車椅子を器用に反転させた。
「どうぞ入って」
 彼女は半年ほど前に遭った大事故以来、車椅子で生活をしている。呑み込みが早いのか、今では車椅子の扱いも手馴れたものだ。しかし彼女はその脚とは別に、大きな後遺症を残していた。
 彼女は事故以前の記憶が曖昧になってしまっていたのだ。
 憶えていることもあれば、全くわからないこともあった。しかし徐々に思い出してきていることもあって、マイクは以前ほど心配をしていない。今では希望すら持っている。
「昨日は凄い雪だったわね」
「本当に。でもアナが望んでいた通り、ホワイトクリスマスになったね」
「ええ、嬉しいわ。やっぱりクリスマスは雪がないと♪」
 暖冬だと言われていた今冬だが、数日前から急に寒くなり、ついには雪が積もるほどまで降った。単なる偶然かもしれないが、マイクはあることに気づいていた。事故以後のアナの願いや思いつきがことごこく現実のものになっていたのだ。
 たとえば「喉が渇いた。何か飲みたいわ」と彼女が言うと、ある店の新作ジュースの試飲で出会う。あるいは流れ星を見たというマイクの話を聞いて「わたしも見たい!」と言った直後に流れ星が空を奔ったり、久しく会っていない友人の話をしていて「ああ、今どうしているのかしら? たまには会いたいわね」と彼女が言うや否や家のインターフォンが鳴り、玄関に出てみると例の友人が「近くに来たから」とそこに立っている等、偶然にしてはそのようなことが続き過ぎていた。
「ディナーの準備は出来てるから席に着いて」
「オーケィ。楽しみだな」
 豪勢な手料理が並ぶテーブルを前に、マイクは席に着いた。
 窓から外を見てみると、雪が降ってきていた。一体どれだけ積もる気なのだろう、とマイクは思ったが、すぐに目の前の食事に集中した。



「今日は素敵な日ね」
 観ていた映画が終わり、TV画面には長いクレジットが流れていた。
「そうだね、僕も楽しいよ」
 マイクが時計を見遣ると、時刻は23時58分。もうすぐクリスマスを迎える。
「あら、もうこんな時間? クリスマスになっちゃうわね」
 アナも同じことを考えていたようだ。マイクが彼女の頭を優しく撫でた。
「クリスマスって復活祭なんでしょ? もうすぐ復活するのかしら?」
「え? それはイースターだよ。クリスマスはイエス・キリストの誕生祭だよ?」
「あら、そうなの? わたし勘違いしてたみたい。今日って人が生き返る日なのかと思ったわ」
「違うよ」
 マイクは笑いながら否定したが、このとき嫌な予感が過ぎった。しかし何のことはない、と頭を振り払う。
「あ、25日になった!」
 時計の針は互いに12の数字を指していた。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス♪」
 マイクはTVのチャンネルを変えるとニュースがやっていた。最初は微笑ましいクリスマスの街の様子を中継しているのかと思ったが、どうやら雰囲気が違う。
『――です。繰り返します! 死人が街を襲っています! 信じられません! 墓地から死体が這い出てきて、街の人々を襲っています! これは聖なる夜に由々しき事態です! どういった原因なのかわかりませんが、死人が墓地から蘇り、街を襲っています! まるでゾンビです! わたしもこの目を疑ってしまいますが、これは真実です! 報告によれば世界の各地で同様の異常事態が起こっているようです! ――うわああああ!!』
 TV画面の向こうでは、見るからに死体といった風体の人間たちが街の人々を襲っていた。それはまさに地獄絵図。マイクは言葉を失った。
 ガシャン。窓ガラスの割れる音がした。血の気がサッと引く。マイクはアナの手をぎゅっと握り締めた。
「ア゛ーーヴーー」
 背後から呻くような低い声が聞こえてきた。

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~近付く聖夜~
 青々とした晴天。暖かそうな風景とは裏腹に、空気は冷たく皮膚を刺す。
 後方から響くエンジン音が鼓膜に届き、高谷京介はふと振り返った。彼の隣に白いバイクが停車した。
「おう」
 フルフェイスのヘルメットを脱ぐと、そこには馴染みの顔が見えた。同じ高校の塚田智明だった。
 京介は挨拶を返した。
「さみィな」
「そうですね」
「これからどっか行くのか?」
「帰るところですよ」
「じゃあ送って行こうか? ほら、乗れよ」
 やや強引に、智明は京介をバイクに乗せた。智明の後ろで、京介は渡されたハーフヘルメットをかぶった。
 凄まじい音で、エンジンが吼えた。2人を乗せたバイクが走り出す。加速とともに冷たい空気が当たってくる。2人は風を切りながら進んだ。


 智明が濡れた部分をタオルで拭いた。
 同様に京介もタオルで水滴を拭う。 
「災難でしたね」
 突然の雨で濡れてしまった2人を見ながら、マスターは言った。
「予報では、今日は降らないとのことでしたが、どうも今日の天気は気まぐれのようだ」
 マスターが微笑む。
 そこにオットリーノが、温かいコーヒーが注がれたカップ2つ運んできた。
「どうぞ」
 渡されたコーヒーを京介が受け取った。「グラーツィエ」
 智明もカップを手に取り、ゆっくりと口元に運んだ。
「熱ッ」
 予想外の熱さに、思わず智明が叫んだ。
「そりゃ淹れたてですから」
マスターが笑った。
「そういえば、もうすぐクリスマスですね。マスターは、クリスマスはどうしているんですか?」
「わたしはいつもと同じですよ」
「オットーは?」
「ナターレは地元に帰ります」
「イタリアに?」
「ええ。ナターレは家族と過ごす日ですから」
 智明はふぅふぅとコーヒーを冷ましながら、ゆっくりゆっくりと喉に通した。「へえ~、わざわざ家族と過ごすために帰るのか」
「そうですよ。向こうでは家族一緒でナターレを過ごすのは普通なんです」
「俺だったらそこまでして帰らないけどな」
「家族は大切にしなきゃダメですよ」
 オットリーノがパンのようなものを2人に差し出した。
「パネットーネです」オットリーノ説明に、マスターが付け加えた。「クリスマスの時期に食べる、イタリアでは伝統的な菓子パンらしいですよ」
 智明がパネットーネを頬張った。レーズン、プラム、オレンジピールなどが入っていて、独特の甘さがあった。「これ、うまいな!」
「grazie di cuore(どうもありがとう)」
 オットリーノは満足そうに微笑んだ。
「おや」
京介が窓を通して外を見た。小さくて白いものがふわふわと舞い降りてきている。雨が、雪に変わったようだ。
京介に続いて、マスターも外の様子に気付いた。「雪ですか」
「もう冬なんですね」
「また一年が終わりますね」
 カフェ・MATATABIの外を、雪がゆっくりと降り注いだ。
 コーヒーの香りを愉しみながら、京介はゆっくりとカップに口をつけた。

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DATE: 2009/12/23(水)   CATEGORY: 雑記
14年と4年、AVATAR。
昨日はアバターを観た。
久々の映画館。基本的にはDVDを借りて家で観る派なのだけれど、たまに「これは映画で!」ってのがやはりある。アバターは映画館のあの大画面、スクリーンで観るべきだろうと足を運んだ。


実は洋画は出来れば字幕で観たい派で、演技って会話も含めて演技だと思うし、俳優の苦労を思うとまずは字幕で観なくては! と思ってしまう。
なので昨日もそのつもりだったのだが、カウンターでチケットを買うときにふと思ったことがあった。


(あれ? 3D映画って、メガネどうなるんだ?)


アバターは3D映画で、3D映画を観るには専用の3Dメガネ的なのを装着しなければならないのだけれど、メガネ掛けている人はメガネの上から3Dメガネで大丈夫なのか?
ちょっとメガネ・オン・メガネが想像出来ず、仕方ないから「吹き替えで」。この日、俺はダテでそれは外せば良かったし、連れは日常ではメガネ掛けていないくらいの視力なので字幕でなければ観れなくもなかった。


しかしこの選択がのちに活きた。


アバターのその美しい映像。ほとんどがCGなのだが、かなり細かい。精密過ぎる背景の作り込み。
あの壮大なまでの迫力は字幕追ってる場合じゃないだろう、と。見ているか見ていないかくらいの細かいところまで作り上げていて、字幕より映像観なきゃって感じだった。
あの労力はハンパじゃないね。字幕追ってたら映画の何割かを損してしまうね。それくらい圧巻。


ストーリーは王道だけれど、それはそれで良かったし、細かな伏線も効いていたと思う。
王道なら、むしろ王道過ぎた方が良い。王道・オブ・王道の方が観やすい。


いやー、何度かジーンときちゃったなぁ。個人的には良い映画だった。
ラストは、まあ読めなくもないけれど、悪くない。シガニー・ウィーバーが出ていることは知っていたけれど、ミシェル・ロドリゲスも出ていた。結構好きな女優だったりする。カッコイイよなぁ。
そんなわけでアバターはあの作り込まれた美しい映像を堪能するだけで観る価値はある気がする。まぁ、ストーリーが王道の割には構想14年って長いけれどね。きっと世界観を構成するための細かい設定も丹念に作り込んだんだろう。もしストーリーで14年だったら呆れる(笑)

ちなみに3D映画初めて観たのだけれど、あの3Dメガネは改良の余地があるな。
いっそもっとデカくしてスキーやスノーボードで使うようなゴーグルタイプにした方が使いやすい。耳に掛ける部分の後ろが余って、背もたれにもたれにくい。
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DATE: 2009/12/22(火)   CATEGORY: 短篇小説
出会いと休息の旅人
 冷たい風が吹いていた。ジニアは体を覆うマントを強く掴んだ。そうすることで寒さをしのげるかのように、マントを強く掴んだ。
 眼前にあるのは何もない大地。かつて建物であったろうモノが、崩れ瓦礫となってあちらこちらに見えている以外は、何もない。その光景がより寒さを引き立たせていた。彼女は歩を速めた。
 まさか、人が住んでいるとは思えないこの大地にも人間は存在していた。一見して砂漠と何ら変わらぬほどの印象を受けるこの土地でも、人はその営みを続けていた。その順応力はなかなか目を見張るものがある。(どんなところにも人は住めるものだな)――ジニアは人の力強さというものをふと感じた。
 この瓦礫砂漠の各地には、いくつかの生活共同集落(コロニー)が存在している。そこでは仲間同士、力を貸し合い助け合って生活を送っていた。そうでもしなければとてもじゃないがこの地では生き延びられないのだが、かつてこの地にあったであろう村、街、あるいは都市が存在していた頃より人々が互いに助け合いより強固な絆で結ばれているのは何という因果の皮肉だろうか。
 空には雲が覆っていた。この時代、それは当たり前のことで、ジニアはその暗い空に構わず歩を進めた。やがてコロニーが近くにあることを悟り、周りを見回した。彼女の嗅覚は、食べ物の匂いを捉えていた。
 コロニーは瓦礫の陰に、細々と築かれていた。そこは20人ほどの男女が共同生活を送っている、中規模のコロニーだった。
「こんにちは」
 初老の男に声をかけた。男はジニアの姿を認めると、見知らぬ来客を珍しがった。人の出入りがないわけではないが、彼女のような旅人の風体の人間は少ない。それもジニアは女だ。女の身ひとつでこの地を旅するということが、どれだけ大変なことか。「旅の人かい?」
「ええ、まあ」
「ひょえ~、そりゃすごい。おひとりで?」
「はい」
 男は驚きに目を丸め、とりあえずとジニアをコロニーの中へと案内した。
「お嬢さんは、どこへ向かっているんだね?」
「行き先は決めていないので」
「行き先も決めずにこの地を旅しているというのか。世の中には変わった人もいるもんだなぁ」
 男が自分の家――実際はただの寝床と言っていいほど、小さく、何もないスペースだった――にジニアを入れ、大きな声で女性の名を呼んだ。しばらくするとジニアとさほど変わらない歳ほどの娘が姿を現した。「なあに? 父さん」
「こちらの旅の方に、何か飲み物でも差し上げてやれ」
「いえ、お構いなく――」
「いいんです、いいんです。どうかご遠慮などなさらず。――ほら、レンゲ」
「ちょっと待っていてくださいね」レンゲと呼ばれた男の娘は奥の方へと下がっていった。
「しかし、女の身で一人旅とは。さぞ大変でしょう」
「慣れてますから」
「ほう。いつから旅を続けているのかな?」
「さて、どうでしょう。もう忘れてしまいました」
「ずっとおひとりで?」
「昔は、連れが。……でも今はひとりです」
「そのお連れの方は?」
「ケンカ別れをしました」
 それを聞いた男はハッハッハ、と大声で笑った。「ははは、失礼。いや、しかしケンカ別れとは、若いですなぁ」
「そうですか?」
「今の時代、ひとりで生きるのは誰だって大変です。そんな中、旅の相棒とケンカ別れを出来るのは、若さのほかありませんよ」
「そんなものですか」
「そんなものです」
 部屋にレンゲが入ってきた。その手にはコップを2つ、そのうちひとつをジニアの前に差し出した。「ありがとうございます」
「ケンカ別れをした、その連れの方。いつかまた出会えるといいですね」
「どうしてです?」
「だってあなたの眼には憎しみの色がない。それにわたしが『お連れの方は?』と尋ねたとき、少しムキになっていましたよ。ふふふ、わたしが思うに、あなたは意地を張ってられますね」
「――どうでしょう」
「やはりムキになってらっしゃる。それは親しい者に対するムキになり方ですよ」
 男は笑っていた。
ジニアは自分を落ち着かせようと、手に持っていたコップを口に運び、中身を飲んだ。甘い、そして温かな心地にさせる飲み物だった。
「それはこの地方に伝わるお茶に、ハチミツを混ぜたものですよ。甘くて美味しいでしょう? 旅の疲れにはそれが一番です」
「そんなものをわざわざ――」
「大丈夫です、お気遣いなく」男はにっこりと笑みを浮かべた。「旅の大変さは充分にわかっているつもりです。これはせめてもの労いですよ。こうして出会ったのも何かの縁ですから」
 食糧の確保が何より難しいこの土地で、水ですらここの者にとっては貴重であることは明白だった。そんな中、ハチミツのような栄養価の高いものは当たり前のように重要視されるはずなのに、目の前のいる男は何の惜しげもなく今日知り合ったばかりのジニアに差し出した。なんてありがたいことだろう。ジニアは一口ひとくちを噛み締めるよう、大事に喉に通した。
「今晩は、食事もしていくだろう?」
「いえ、そこまでお世話になるわけには……」
「まだ遠慮しているのかい? 本当に、遠慮なんてしなくていいんですよ」
 結局、ジニアは男に言われるがまま夕食までご馳走になることになった。コロニーの食糧は、ひとりだけの物ではないのだが、コロニーに住む他の者もジニアのことを歓迎してくれたのだ。
 その晩、いつもより盛大に食事が振る舞われた。ジニアは感謝の意を表しながら、それを食べた。温かい味がした。ここに住むコロニーの人々の人柄がそのまま味として沁みているのだろうか。
 コロニーの人々はまるでひとつの家族だった。そしてこの一瞬、ジニアは自分もその家族の一員になっているかのような錯覚を感じた。男を見遣ると、微笑みを浮かべていた。
「今日は泊まって行って、明日出発するといい」
 ここまで世話になったのならば、むしろ厚意に甘えた方がいい。無駄な遠慮などせずに、彼女は「お願いします」と頭を下げた。
「しかし今日は冷えるなぁ」
 ジニアはそんなことを感じないくらい、温かさに包まれていた。


 早朝。まだ皆が寝静まっていて、コロニーには閑静さが漂っていた。
 そっと寝床を抜け出したジニアは、誰にも気付かれることなく準備をして、コロニーを抜け出した。また皆と顔を合わせては旅立ちにくくなる。ここは、つい長居してしまう不思議な空気に包まれているとジニアは感じていた。これ以上、世話になるわけにはいかない。
 コロニーを出ると、空から白いものが降り注いできた。ボオオーン、とどこからか低い鳴き声のようなものが聞こえた。
「ほう、雪ですね」
 背後から声がした。振り返るとジニアがお世話になった、あの男が立っていた。
「昨日は大変寒かったですから」ボオオーン。また鳴き声が響いた。「この鳴き声はユキフラセクジラですね」
 ユキフラセクジラ。巨大な体で、何の苦もなく空を自由に泳ぐ、クジラ。ジニアは以前にその姿を見たことがある。その雄大な姿は、何もかもを受け入れてくれそうな温かさを感じた。
「どこか近くを泳いでいるんでしょうかねぇ? 残念ながら姿は見当たりませんが」
 ヒヒーン、と男の隣にウマが現れた。寒さのせいか、軽く体を震わせている。
「ウマ、ですか」
 このような小さなコロニーに、ウマは珍しかった。ウマは食糧を食らう意味では厄介だが、物資調達にはかなり役に立つため、とても貴重な存在だ。それをなぜここに?
「これを、差し上げようと思います」
「――え?」
「どうかこのウマを使ってください」
「そこまでお世話になることは出来ません。ウマはこのコロニーの、財産でしょう?」
「いいんです。どうか持っていってください。――実は最近、ウマが以前のように働けなくなってきていて、その働きとこいつのエサが見合わなくなってきたんですよ」
「それだけで? だとしても他のコロニーに売り渡せばかなりのものになるでしょう? それにウマの食糧に出来る」
「この辺りのコロニーは、もうここだけです。他はなくなってしまいました。コロニー間の物資の交換が出来ないとなるとウマの価値はぐっと下がります。しかし、だからと言ってわたしたちには少々愛着のあり過ぎるウマなんです。とてもじゃないが、食糧として扱うことも出来ない。ならばあなたの役に立たせてもらいたいんです」
 男が喋るたびに、息が白く変わっては掻き消えた。
「このウマに乗れば、あるくより早く次のコロニーに着くことが出来るはずです。おそらく、こいつの体力が尽きるより先に、そこは見つかるんじゃないでしょうか。もし、このウマが先に駄目になってしまっても、それは仕方ないことです。それでもあなたの旅の役には立つでしょう」
 ボオオーン、とユキフラセクジラの鳴き声が大気を震わせる。
「――ただ。ひとつお願いがあります」
「それは?」
「この手紙を届けて欲しいのです」男はジニアに一枚の手紙を差し出した。「息子の宛てたものです」
 ジニアはその手紙を受け取った。
「息子は今どこにいるのかわかりません。何年も前に、ひとりこのコロニーを出て行ったっきりです。生きているのかどうかもわかりませんが、もし生きているのならば、いつかあなたと出会う日が来るかもしれない。そのときは、息子の、息子のレンにそれを渡して欲しいのです」
 それは、ほとんど奇跡的な望みだった。おそらく出会うことはない。どこかで出会っていてもわからないかもしれない。レンという名だけを頼りにこの便りを届けることは、まさに奇跡に近かった。
「わかりました」
 それでもジニアはそれを受け取った。自分が出来るせめてものお返し。それをこの手紙を受け取ることだと思った。それがこの男の希望になるのかもしれない。ささやかな希望を打ち砕くことなど出来なかった。きっと男も手紙が届くことはないだろうとわかっているのだ。それでも、もしかしたら。そんな希望も持ってしまうのだ。
「きっと、届けます」
「ありがとうございます」
「では」
「お気をつけて」
「ええ」
 ジニアは譲り受けたウマにまたがり、慣れた手つきでそれを走らせた。
 コロニーが遠ざかっていく。彼女は一度も振り返ることはなかった。
 空から雪が降り続く。それを見て、あいつはどうしているだろうとふと思う。あいつとケンカ別れをしたあの日も雪だった。あいつも今どこかでこの雪を見ているだろうか。
 旅をしていればそのうち出会うかもしれない。運命ならば、また出会うだろう。
 ボオオーンとユキフラセクジラの声がまた響いた。
 ジニアは前も見つめ、手綱を握りしめてウマを走らせた。雪が舞い散った。

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DATE: 2009/12/18(金)   CATEGORY: 短篇小説
ナターレ・ナターレ
 呼吸をすると息が白かった。いつもと変わらず、どんよりとした錆色の空。空気は刺さるように冷たい。ナユタが知っている限り、これほどまで寒い日は初めてだった。
 仕留めたブタガエルを2匹携えて、ナユタは瓦礫の山を軽い身のこなしで飛び越えて自分の住処に戻った。瓦礫が重なり合って、小さな洞窟のように見える住処。中を覗くと、誰の姿もない。
「あれ? 上かな?」
 薪をいくつか手にして、ナユタはさらに瓦礫の山を登った。そうして登ったところに、少し拓けた広場のような場所がある。そこに2つに束ねた金髪をなびかせた少女がいた。見たところ、大体10歳ほどだろうか。
「セージ、寒くない?」
 ナユタは少女のそばに寄り、薪を置いた。
「うん。寒くない」
「そっか。でもお腹は空いてるでしょ?」
「セージはいつもお腹が空いている」
「だよね」
 ナユタは苦笑しながらも、夕食の準備をした。
 薪を効率よく燃えるよう重ね、ポケットからグシャグシャに丸まった紙を出した。それを薪の間に詰め、マッチに火をつける。それを薪の間に放り込むと勢いよく紙が燃え出した。
「何か獲れたか?」
「うん、これ」ナユタは獲ってきたブタガエルを両手にぶら提げて掲げて見せた。「セージ、好きでしょ?」
「おお、ブタガエル! ……でもたった2匹だけ?」
「これ1匹食べるだけで結構お腹いっぱいになるよ」
「それはナユタだけ。セージは1匹じゃお腹いっぱいにならないもん」
「じゃあ、僕の分を少し分けてあげるから……」
「仕方ない。それで我慢するか」
 焚き火がいい感じに燃え始めていた。それを見て、ナユタは薪と一緒に持ってきていた鉄製の串を2本取り出し、それに仕留めたブタガエルを突き刺した。
「ナユタ、クリスマスって知ってるか? 今日はクリスマスなんだぞ!」
「クリスマス?」
「うん、クリスマス」
「クリスマスってなに?」
「祭りらしい」
「お祭り?」
「うん。クリスマスは恋人や家族と楽しく過ごす日で、それはお祭り騒ぎなのだと本に書いてあった」
 セージはナユタより2つほど年下だが、物知りだった。本を読むことが好きで、2人の住処には本が山のように積まれている。今の世では本は希少なものではあるが、ほとんどの者にとって貴重ではない。文字を読める者が少なくなっているし、そこで得られる知識のほとんどには意味がない。その大半は焚き火に使われてしまう。
 ナユタも紙が足りないときにはセージの本から千切って使っていた。それをセージは悲しげな目で見るのだが、そうでもしないと2人は肉を焼くこともできないし、今日のように寒い日に暖をとることもできない。それを理解しているからこそ、セージは黙って、しかし悲しげな目でナユタが本のページを千切り取るのを見ているのだった。
「それでクリスマスには何をするの?」
「わからない」
「わからない?」
「うん。なにやらクリスマスツリーというのを飾ってみたり、ケーキというものを食べてみたりするらしい」
「クリスマスツリー? ケーキ? なんだろうね、それ」
「セージはケーキとやらを食べてみたい」
「どんな味なのかな?」
「甘いらしい」
「へえ」
 ナユタはブタガエルの肉が万遍なく火に当たるように、串の向きを変えた。
 食欲をそそる、香ばしい匂いが漂ってきた。ブタガエルはブタ肉のような味がすると聞いたことがあったが、ナユタはブタ肉の味を知らない。それに他のカエルはトリ肉のような味だとも聞いたことがあった。ナユタは他のカエルも食べたことがあったが、やはりトリ肉の味は知らなかった。ただブタガエルは他のカエルに比べ、断然に大きいので好きだった。満腹になれる。特にセージはよく食べるので、ブタガエルの獲れた日には自然と足が軽くなるのだった。
「おおい、ちょっと助けてくれー」
 下の方から声がした。ナユタは覗き込むと、瓦礫の山を必死になって登っている老人が見えた。ヨハンだ。
 ナユタは少し降りてヨハンの手を引っ張った。ヨハンは息を切らしながらもどうにか上に登ることができた。
「ふう。老体にはここまで登るのは堪えるなぁ」
「大丈夫ですか?」
「おう、一応な。今日は食い物が多く手に入ったから少し分けに来てやったぞ」
 セージの耳がピクピクと動き、素早い動きでヨハンに飛びついた。「おお、ヨハン!」
「こら、セージ! そんな飛びついたらヨハンさんが――」
「ぬおおおお……」
 バランスを崩したヨハンは後方に倒れそうになった。
 それを見て、ナユタが慌ててセージを引き剥がす。同時にヨハンの体を支えた。
「すまん、ナユタ。――そうだ、今日は酒もあるぞ?」
「おお! 酒か!」セージがテンションを上げる。
「セージはお酒飲めないでしょ。いっつも飲もうとして吐き出すんだから」
「酒は大人の飲み物だからなぁ」
「セージも大人だから酒くらい飲めるぞ!」
 ムキになって反論するセージを見て、ナユタはやれやれとなだめた。
 それを見て微笑みつつヨハンは持ってきた食材を出して、焚き火の前に座った。そしてブタガエルの串の向きを少しだけ変えた。
「――ん?」
 セージが急に何かに気付いたように空を見上げた。
「どうしたの?」
 セージの指が天空をさした。「ん。何か降ってきた」
「え?」
 ナユタも空を見上げ、天空から降り注ぐ小さく白いものに目を遣った。
「――灰?」
 灰が降ることは年に何度かあることだが、しかし降ってきた“それ”は触ると冷たく、そしてすぐに溶けてなくなってしまった。
「ナユタ! これ冷たいぞ!」
 ボオオーン、と低い、うなり声のような音が響き渡った。大気が振動するのをナユタもセージも感じた。「今のはなんだろう?」
「ナユタ!! あれ!!」
 セージはある方向を指差した。ナユタがその先を見遣る。そこに巨大な、魚のような何かが空を飛んでいた。どうやって空に浮いているのだろう? とナユタは思った。
「おお、これは珍しい。雪鯨じゃないか」
「セツゲイ…?」
「ナユタは初めて見るのか? まぁ、そうかもしれないのぉ。雪鯨なんて本当に久々だからな」
「ヨハン、セツゲイってなんだ!?」
 セージがヨハンを急かした。
「雪鯨っていうのはな、ユキフラセクジラって名前の空飛ぶクジラだよ」
「ヨハン、クジラってなんだ!?」
「クジラかー。まあ、でっけえ魚だな」
「おおー。食べるとウマイか?」
「さあ、どうかな?」ヨハンは頬を撫でた。「雪鯨の背中にはな、孔(あな)が開いていて、そこから雪を吹いて空に降らすのよ」
「雪!! これが雪なのか!!」
 セージはテンションを上げて走りまわった。「これが雪か!!」
 ナユタは雪を知らなかった。そういえばセージが以前にそのようなものを話していた気もするが、これが雪なのか。白くて、冷たい。
「今年は寒いからなぁ。雪鯨は寒くないと現れないんだ」
「ナユタ!! 知っているか? 雪が降るとホワイト・クリスマスっていうんだぞ!!」
 セージは楽しそうに大声で言った。それを聞いてヨハンは「そうか、今日はクリスマスか」と呟いた。
「クリスマスは家族と一緒に食事をする日でもあるらしいからな、こうやってみんな一緒に食べられて嬉しいぞ」
「そうだね、じゃあ食べようか」
 セージは飛びつくようにカエル肉を食らった。ヨハンは酒を取り出して、ナユタに勧める。
 ボオオーン、とユキフラセクジラの鳴き声が響く。雪がゆっくりと降り注いだ。

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DATE: 2009/12/18(金)   CATEGORY: 雑記
セージ/ヒャクニチソウ/大雪警報。
地元では雪が降っている。先週までは雪なんて全く降る気配がなかったそうだが。
去年までの暖冬はどこへ行ってしまったのか。なんかニュース観ても各地で大雪じゃないか。

北海道なんて-25℃なったっていうし…。

寒い地方の人間にとっては1℃2℃なんて暖かいに入るよね。
とりあえず氷点下じゃなきゃ暖かい。

特に意味はないけれど、本日18日の誕生花は「セージ」らしい。
セージの花言葉は「家庭的」とかそういうのだとか。今日が誕生日の人は家庭的な人なのだろうか?
あと「幸福な家庭」とか。素敵な花言葉だなぁ。そんなわけで12月18日生まれの人おめでとうございます。

……あれ? 今月妹の誕生日(だった)じゃん。

まあ、いいか。

そういえば先日CDを何枚かレンタルしてその中にスキマスイッチの『ナユタとフカシギ』ってアルバムも含まれていたのだけれど、スキマスイッチ初めてちゃんと聴いたら、好きだ。良い。
個人的には「ゴールデンタイムラバー」が聴きたかっただけだったのだが、このアルバムは買っても良かったなぁ。バラエティーも豊富。はたしてスキマスイッチは俺のツボなのか、それとも今もスキマスイッチが好みなのか気になる。それによってアルバム全借りするかどうかを左右する。
関係あるのかないのか、アルバムタイトルもちらっと見たら過去のタイトルは『夏雲ノイズ』『空創クリップ』など漢字+カタカナのような法則性があるようだったが、今回のタイトルは『ナユタとフカシギ』。これは今までのスキマスイッチとは違うぜ!って意味あるのかなぁ?

あー 今日も今日とて頭が働かない。こんな時間だが、やや寝起き。


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DATE: 2009/12/15(火)   CATEGORY: 短篇小説
遺志(後編)
 数度ノック繰り返した。反応はない。
 大城 秋一がドアノブを回すと、目の前のドアはすんなりと開いた。
「おい、いるか?」
 部屋の中に入るとそこは機械のコードで床は覆われ、至るところに本が積まれ、大小の何に使うのかよくわからない器具や機械に溢れかえっていた。
「マモー?」
 部屋の主に呼びかけてみる。返事はなかったが、奥の方で何かが動いた。
 回転式の椅子が回った。「ここにいるよ」
「だったら返事くらいしてくれよ」
 椅子に腰掛けながら現れたのは、脂ぎったギトギトの黒い長髪をうしろで束ね、元来の彫りの深さに加えひどいクマで眼窩が窪んだように見える薄汚い男だった。「そもそも俺の名前はマモーじゃない」
「別にあだ名だろ?」
「周りが勝手に呼んでるだけだ」
「そういうのをあだ名っていうんだよ」
 秋一は足元に気をつけながら部屋を進んだ。右側の棚にはホルマリン漬けになっている眼球やら何やらがぞろぞろと並んでいてなんとも不気味だった。
「この前の用件か?」
「ああ。頼めるか?」
「別に俺は構わないが、お前は本当にそれでいいんだな?」
「構わないよ。これは俺だけじゃない、春二の願いでもあるんだ」
「そうか。――それも兄弟の絆、なのかな? 残念ながら俺には理解できないが、お前がいいならいいだろう」
 マモーの案内で、怪しげな地下通路を渡り、何度も角を曲がってやっと到達した部屋に車に乗せていた弟の春二を連れて入った。
 そこは病院の手術室のようにも見えたが、わけのわからない大仰な機械の山に、まるでこれからサイボーグにでも改造されてしまいそうな印象を秋一は受けた。
「まるでショッカーに改造される仮面ライダーの心境だな」
「仮に改造人間にしてやっても、あんな風にベルトで変身できるなんてことはないぞ」
「冗談だって」
「それがお前の最後の冗談になるかもな」
「そんな怖いこと言うなよ。――でも、ある意味そうかもな。きっとこれが大城 秋一最後の冗談だよ」
「だからといって俺は憶えておいてやらないぞ」
「ははは、わかってるって。お前の脳にはそんなくだらないことを記憶するようなスペースはないんだろ?」
 マモーは悪かったな、と言うように鋭い眼光で秋一を睨めたが、次の瞬間には穏やかな口調に変わった。「お前のことは忘れないよ」
「――ありがとう」
 涙が溢れてきそうだった。秋一はそれを防ぐようにして上を向いたが、意思に反して目頭が熱くなるのをとめられない。
「春二――俺は間違ってないよな。俺は――俺たちは洋子さんのこと幸せにしてやらないとな」
(――ありがとう)
 たとえ幻聴だったとしても、それが秋一が聴いた春二の最後の言葉になった。
「マモー、よろしく頼む」


 ***


 病院の廊下。歩く音が静かに反響する。
 春二の病室の前に着いた。昨日の検査の結果はどうだったのだろうか。洋子は部屋の中に誰かの気配を感じた。――お兄さん?
「いや、お兄さんはもう日本にはいないんだった。じゃあ、お兄さんが言っていた知り合いのお医者様かな?」
 ゆっくりとドアノブを回し、病室に足を踏み入れた。
 室内を見回してみると知人の医者だという人も、もちろん秋一もいなかった。
「――あれ? 気のせいだったのかな?」
 洋子は一気に体の力が抜けた。「春二、今日の調子はどう?」
 返事がないとわかっていても声をかける。それが洋子の日課で、そして洋子にできるせめてものことだった。
「――悪くはない」
「そっか」ベッド脇の椅子に座ろうとした洋子の体がピタッと静止した。「――え? 春二?」
「なに?」
 春二の声だった。
 洋子が春二のことを見遣ると、彼は薄っすらと目を開けて洋子のことを見つめていた。
「喋れるのっ!? い、意識が戻ったの!?」
「ああ、喋れるよ」
 洋子の目に涙が溜まって、またたくまにそれが溢れ出した。次々と流れでる大粒の涙に、洋子は何度も両手で拭い、それでも止まらない涙には追いつかずいくつか滴(しずく)になって病室の床を打った。
「春二……」
「なんだよ」
「本当に、意識が戻ったんだね? 会いたかった。ずっと春二に会いたかったよ」
 3年間。長い時間だった。その年月で積み重なった想い、その蓄積した想いが一瞬で溢れ出した。
 長かった。どんなに気丈に振舞っても、不安があった。春二がもう一生目覚めないかと思うと、怖かった。でも、今まで信じてきて本当によかった――そう洋子は思った。
「な、なんで泣くんだよ!?」
「だって、だってぇ……春二が戻ってきたんだもん…春二ぃぃ」
 何がどうなっているのかわからないといったふうな春二は、困惑しながらも抱きついてきた洋子の頭を撫でた。
 あたりを見回して、どうも自分が病院にいるようだと思うと、自分が事故にあったことを思い出したようで、洋子の泣いている理由がわかったような気がした。
「そっか……俺、あのとき事故にあって、それで」
「うん。もう3年も眠ったままだったんだよ? もう春二の意識が戻らないかと思ってた。お医者様も期待はしない方がいいって言うし…」
「3年も? マジかよ。俺、全然そんな実感ないよ」
「もう春二のばかぁ。わたしを置いて行こうとしないでよ」
「だって俺のせいかぁ? ……でも、そうだな。悪い。3年も心配させちまった。ごめんな。ありがとう」
 そのまま春二と洋子は長い間抱き合っていた。そして何度もくちづけをした。今までの時間を取り戻すかのように、ふたりは互いを求め合った。


 ***


 日曜日。春二と洋子は公園のベンチに座っていた。気持ちのいい陽射しが降り注ぐ。春二はぐっと体と伸ばした。
「あー、気持ちいいなぁ」
それを見て洋子がフフ、と笑った。「そうだね」
「きっとこの子も気持ちいいって言ってるぜー?」
「そうかもね」
 春二が意識を取り戻してから、1年が経っていた。
 長いリハビリのかいもあって、春二はほとんど以前と同じように動けている。脳の受けたダメージの後遺症は見られなかった。
「でも、お母さんに孫を見せられなくて残念ね。せめて赤ちゃんが出来たってだけでも教えてあげたかった」
 洋子のお腹の中には現在2ヵ月になる小さな命が宿っている。それがわかったのはつい1ヵ月ほど前で、それと同じ頃に春二の母親は元来の体の弱さもあって亡くなっていた。それから葬儀なども終え、ふたりはやっと落ち着きを取り戻し始めているところだ。
「結局、兄さんに連絡つかなかったなぁ」
「そうね。お母さんが亡くなったこと、今も知らないでいると思うと可哀想だわ」
「どこに行っちまったんだろうなぁ、兄さん」
「お兄さんが今どこにいるのかわからないけど、きっと元気にやってるわよ」
「そうだな。そうだといいな」
 春二が自分の視界の隅に、見覚えのある姿があるのに気が付いた。
「あ」
「どうしたの?」
「のど渇かない? 俺、何か買ってくるよ」
「ありがとう。だったらオレンジジュース飲みたいなぁ」
「オーケィ」
 腰を上げて、春二はベンチを離れた。
 自動販売機の前で財布から小銭を出していると、後方から声をかかった。「調子はどうだ?」
「久し振り。今のところ問題はないよ。至って健康」
 春二の後ろにいたのは、脂とフケにまみれた長髪を後ろに束ね、死神を思わせるいかにも不健康な顔色をした男だった。
「そうか。体も尋常に機能しているようだし、どうやら成功らしいな」
「おかげさまで。それにしても外にいるお前を初めて見たよ」
「ただのアフターケアだ。でなければこんな陽射しの中、こんなところにまで来ない」
「お前はたまに外に出て、お日様の陽に当たった方がいいよ」
「新しい生活には慣れたか?」
「んー、それなりに。でもたまにやばいときあるけどね」
「たとえば?」
「思い出話するときとか」
「ああ。そんなもの、適当に合わせておけ。それでだめなら忘れたことにすればいい。どうせお前は脳に損傷を受けた身だ。多少の記憶くらいなくなっていても問題ない」
「――そうだな」
 春二はコーヒーとオレンジジュースの缶を持って立ち上がった。
「今でもわからないんだ」
「何をだ?」
「俺のしたことは本当に正しかったのだろうか――って」
「正しいかどうかはわからない。ただ、大きく間違ってはいないだろう」
「そういうこと言うの珍しいな」
「そうだな。でも、どっちにしろ弟の脳は損傷を受け過ぎていた。あれはどうにも出来なかったよ」男はくるっと向きを変えて春二に背を見せた。「今が幸せなら、それでいいんじゃないか?」
「――ありがとう」
 男はそれ以上何も言わず春二の目の前から去っていった。
 春二が飲み物の缶を2つ持ってベンチに戻ると、洋子が訊ねてきた。
「さっき話してた人、知り合い?」
「いや、道を訊かれただけ」
「そっか」
 春二は、ふと心はどこにあるのだろう――? と考えた。脳だろうか?
 もし心が体に宿っているものならば、今も洋子と一緒にいてやっていることになるのだろうか。なあ、春二――お前は今の俺をどう思う?
(――ありがとう。俺も幸せだよ)
 その声は聴こえなかったが、何となくそう言ってくれるような気がした。
 春二は再びぐっと体を伸ばす。空が青かった。
「なあ、子供の名前何にしようか?」


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