MUKURO・煉獄篇-18 (魔の侵攻/Black Knight)
体育館の倉庫に忍び込むと何かの気配がした。雄大が咄嗟に身構える。その後ろに千紘は隠れた。
だが、そこにいたのは先ほどの化け物の仲間ではなく、見知った顔だった。「……隆裕」
佐々木 隆裕は倉庫の片隅で小さくうずくまっていた。天敵から身を隠す小動物のように怯えている様子だった。
「おい、隆裕」
返事はない。
雄大が隆裕に手を伸ばそうとしたそのとき、倉庫の外で轟音が響いた。
おそらくブラックシェルスパイダーが校舎を破壊しながら体育館に侵入してきたのだろう。
3人は息を潜めて、様子を窺った。
ブラックシェルスパイダーの巨体が動くのが、音や振動から伝わってくる。
気配が近付いてきているのがわかった。
ドン。
ブラックシェルスパイダーのゴツゴツとした脚が、倉庫の扉を破壊して中に這入る。――しかし巨大すぎる図体が災いして、ブラックシェルスパイダーはそれ以上は侵入して来られない様子だった。それでもミシミシと壁が悲鳴を上げている。時間の問題かもしれない。
その場の3人それぞれがそのようなことを覚悟していたのだが、予想に反してブラックシェルスパイダーの侵攻は不意に止まった。
「なんだ……?」
雄大が恐るおそる覗き込む。
電池切れでも起こしてしまったかのように、黒い巨体は身動きひとつしていない。
――メキ。
千紘は何かが罅割れているような小さな音を耳にした。最初は気のせいかとも思ったが、確かに聞こえる。
メキメキ、メキメキメキ。
ブラックシェルスパイダーの異変に気付いた雄大はゆっくりと後退していく。甲殻類を思わせる外皮、その腹部らへんに何かが起きていた。
メキメキメキ。
ブラックシェルスパイダーの腹部に亀裂が奔(はし)り、そこから何かが突き出した。
「あれは……」
それは、まさしく産み落とされたといっていいだろう。ブラックシェルスパイダーの腹部の亀裂から黒い塊が産み落とされた。それは丸くうずくまっている状態から、ゆっくりと立ち上がった。シルエットは、まるで人のものだ。――しかし、外皮はブラックシェルスパイダー同様に甲殻類を思わせる黒くゴツゴツとしていて、刺々しい。西洋の甲冑を彷彿させる姿だ。巨大な槍と盾のようなものを手にしていて、さながら騎士の様相である。
そう、異形の黒い騎士が3人の前に現れたのだった。
だが、そこにいたのは先ほどの化け物の仲間ではなく、見知った顔だった。「……隆裕」
佐々木 隆裕は倉庫の片隅で小さくうずくまっていた。天敵から身を隠す小動物のように怯えている様子だった。
「おい、隆裕」
返事はない。
雄大が隆裕に手を伸ばそうとしたそのとき、倉庫の外で轟音が響いた。
おそらくブラックシェルスパイダーが校舎を破壊しながら体育館に侵入してきたのだろう。
3人は息を潜めて、様子を窺った。
ブラックシェルスパイダーの巨体が動くのが、音や振動から伝わってくる。
気配が近付いてきているのがわかった。
ドン。
ブラックシェルスパイダーのゴツゴツとした脚が、倉庫の扉を破壊して中に這入る。――しかし巨大すぎる図体が災いして、ブラックシェルスパイダーはそれ以上は侵入して来られない様子だった。それでもミシミシと壁が悲鳴を上げている。時間の問題かもしれない。
その場の3人それぞれがそのようなことを覚悟していたのだが、予想に反してブラックシェルスパイダーの侵攻は不意に止まった。
「なんだ……?」
雄大が恐るおそる覗き込む。
電池切れでも起こしてしまったかのように、黒い巨体は身動きひとつしていない。
――メキ。
千紘は何かが罅割れているような小さな音を耳にした。最初は気のせいかとも思ったが、確かに聞こえる。
メキメキ、メキメキメキ。
ブラックシェルスパイダーの異変に気付いた雄大はゆっくりと後退していく。甲殻類を思わせる外皮、その腹部らへんに何かが起きていた。
メキメキメキ。
ブラックシェルスパイダーの腹部に亀裂が奔(はし)り、そこから何かが突き出した。
「あれは……」
それは、まさしく産み落とされたといっていいだろう。ブラックシェルスパイダーの腹部の亀裂から黒い塊が産み落とされた。それは丸くうずくまっている状態から、ゆっくりと立ち上がった。シルエットは、まるで人のものだ。――しかし、外皮はブラックシェルスパイダー同様に甲殻類を思わせる黒くゴツゴツとしていて、刺々しい。西洋の甲冑を彷彿させる姿だ。巨大な槍と盾のようなものを手にしていて、さながら騎士の様相である。
そう、異形の黒い騎士が3人の前に現れたのだった。
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